光の国のロピー

夢ノ命

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エピソード2 光の国の危機

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どこもかしこも光り輝き、バラの香りがどこまでも漂う光りの国は、

神さまの世界でも、妖精の世界でも、瞬く間に噂が広がり、

移り住むものたちが後を立ちませんでした。



やがて、月日がたって、ロピーが産まれました。


そんなロピーも今では、立派な青年になりました。……


父からもらった光の弓矢と、母からもらったバラの香りに包まれたマントを羽織り歩くロピーの姿に、

光の国の乙女たちは、感嘆のため息をもらし、あこがれの眼差しを向けました。


ロピーは、そんな自分の国の乙女たちには、見向きもしませんでした。


決して乙女たちが美しくなかったわけではありません。


むしろ、美し過ぎるくらいの乙女たちでした。


今は、そんな乙女たちと言葉を交わせるほど、ロピーには、ゆとりがありませんでした。




光の国の危機がせまっていたのです。



『なんたることだ! 神さまの国に行かれたスターライトゴッドさまも、

妖精の国に行かれたローズさまも、帰ってこない。

もしや、お二人の身に何かがあったのでは?』


白ひげを生やした痩せ身のタムンクスが思いきり机を叩いたので、

光の亀裂が走りました。彼は、第一大臣です。



『まあ、そうカッカしなさんな。事が起こったら、光のソーダ水と、

バラの香りのビスケットでも食べて一息入れることだ。

怒ればますます光の国の繁栄を妬んで、

嫌がらせをする奴らの思うツボだ』


ずんぐりして背の低いフィリック第2大臣が言いました。



『これだけ待っても、王様と王女さまが戻られないということは、

奴らにつかまってしまったのかもしれないよ。

奴らが襲ってくるのも時間の問題さ。

せめてロピー王子だけでも逃がさなきゃ』


第三の大臣は、ローズ王女の信頼の厚い、黒髪が長いヨキという魔女でした。



そんな大臣たちの会議があった翌日のことでした。


奴らが光の国を襲って乗っ取ってしまいました。


幸いに第三の大臣の魔女が、つかまる前に魔法をかけてロピーを逃がしました。



光の国は、この日から、

輝きのない、香りのしない国に、変わり果ててしまいました。



〈続く〉
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