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エメラルドの森
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お母さんが遺してくれた宝石エメラルド。
それがわたしの宝物だ。
指でつまんでながめていると、まるで深緑の森にまよい込んだかのようなさっかくにおちいる。
ひょっとしたらこの深い緑の森のどこかにお母さんがいるのかもしれない。
それを期待して探すけれど、森は折り重なり入り組んで、その内面をさらそうとはしなかった。
エメラルドはわたしのお守りでもあるから、外出するときも、もちろん学校に行くときも持ち歩いている。
しかしそれがいけなかった。
ある日学校から帰って来たら、ポケットに入れていたはずのエメラルドがない。
ランドセルやお道具袋もひっくり返したけれど、どこにも見あたらなかった。
わたしはぼうぜんとする。
お母さんからもらった大切な宝物。
それをなくすなんて、わたしはどうしたらいいの?
その夜はただただ泣き明かすことしかできず、気がつけば奇妙な鳴き声が聞こえて来た。
カーテンをすかして緑色の光が射し込んでいる。
どうやら朝のようだけど、この鳴き声はスズメではない。
わたしは立ち上がり、カーテンを開けてみる。
するとどうだろう。
マンションの十階の窓から見える景色が緑色にかがやいているではないか。
そう、あちらこちらからエメラルドの木が生え、見なれた街は森にうずもれていたのだ。
エメラルドの木々に反射した朝日によって、空も緑色になっている。
どうしてこんなことになったのだろう。
もしかしたらわたしが落とした宝石がタネとなり、一晩で森へと成長したのかもしれない。
そう思うといてもたってもいられなくなる。
だって空想でしかなかったエメラルドの森が目の前に広がっているのだから。
ひょっとしたら本当にお母さんがいるかもしれない。
わたしはパジャマのままマンションを飛び出すと、お母さんを探してかけ回った。
ときおり緑色にかがやく鳥を見かける以外に人影はない。
そればかりかいっこうにお母さんも姿を見せなかった。
必死になって探し回って、とうとう息が切れへたり込む。
やっぱりお母さんはもうこの世のどこにもいないのだろうか。
そう思うとかなしくなってなみだがあふれて来る。
お母さんに会いたい……会いたいよぉ……。
お母さん!
思わず大声をあげてお母さんを呼ぶ。
するとキシリキシリと音がした。
その音はじょじょに大きくなってゆき、なんなのと周囲を見わたせば、エメラルドの木に細かなヒビが走っていた。
そして――、カシャーン!
街をおおっていたエメラルドの森がいっせいに砕け散ってしまった。
細かな破片が朝日にキラキラとかがやいて舞っている。
そしてその向こうに、今朝になってはじめて人影を見た。
あ、ああ……。
見開いた目に映ったのは、まぎれもなくお母さんだった。
お母さんはなごやかにほほえんでいる。
わたしがかけ出すと、白い手をふり、何ごとかささやく。
けれどたどりついたころにはもう消えていた。
周囲を見わたしても影も形もない。
ふと、お母さんがたたずんでいた場所をもう一度見やると、地面にエメラルドの宝石が落ちていた。
エメラルドの森が実をむすんだのか。
ひろい上げると、奇妙な鳥の鳴き声と、お母さんの「いつもあなたとともに」という声が聞こえた。
それがわたしの宝物だ。
指でつまんでながめていると、まるで深緑の森にまよい込んだかのようなさっかくにおちいる。
ひょっとしたらこの深い緑の森のどこかにお母さんがいるのかもしれない。
それを期待して探すけれど、森は折り重なり入り組んで、その内面をさらそうとはしなかった。
エメラルドはわたしのお守りでもあるから、外出するときも、もちろん学校に行くときも持ち歩いている。
しかしそれがいけなかった。
ある日学校から帰って来たら、ポケットに入れていたはずのエメラルドがない。
ランドセルやお道具袋もひっくり返したけれど、どこにも見あたらなかった。
わたしはぼうぜんとする。
お母さんからもらった大切な宝物。
それをなくすなんて、わたしはどうしたらいいの?
その夜はただただ泣き明かすことしかできず、気がつけば奇妙な鳴き声が聞こえて来た。
カーテンをすかして緑色の光が射し込んでいる。
どうやら朝のようだけど、この鳴き声はスズメではない。
わたしは立ち上がり、カーテンを開けてみる。
するとどうだろう。
マンションの十階の窓から見える景色が緑色にかがやいているではないか。
そう、あちらこちらからエメラルドの木が生え、見なれた街は森にうずもれていたのだ。
エメラルドの木々に反射した朝日によって、空も緑色になっている。
どうしてこんなことになったのだろう。
もしかしたらわたしが落とした宝石がタネとなり、一晩で森へと成長したのかもしれない。
そう思うといてもたってもいられなくなる。
だって空想でしかなかったエメラルドの森が目の前に広がっているのだから。
ひょっとしたら本当にお母さんがいるかもしれない。
わたしはパジャマのままマンションを飛び出すと、お母さんを探してかけ回った。
ときおり緑色にかがやく鳥を見かける以外に人影はない。
そればかりかいっこうにお母さんも姿を見せなかった。
必死になって探し回って、とうとう息が切れへたり込む。
やっぱりお母さんはもうこの世のどこにもいないのだろうか。
そう思うとかなしくなってなみだがあふれて来る。
お母さんに会いたい……会いたいよぉ……。
お母さん!
思わず大声をあげてお母さんを呼ぶ。
するとキシリキシリと音がした。
その音はじょじょに大きくなってゆき、なんなのと周囲を見わたせば、エメラルドの木に細かなヒビが走っていた。
そして――、カシャーン!
街をおおっていたエメラルドの森がいっせいに砕け散ってしまった。
細かな破片が朝日にキラキラとかがやいて舞っている。
そしてその向こうに、今朝になってはじめて人影を見た。
あ、ああ……。
見開いた目に映ったのは、まぎれもなくお母さんだった。
お母さんはなごやかにほほえんでいる。
わたしがかけ出すと、白い手をふり、何ごとかささやく。
けれどたどりついたころにはもう消えていた。
周囲を見わたしても影も形もない。
ふと、お母さんがたたずんでいた場所をもう一度見やると、地面にエメラルドの宝石が落ちていた。
エメラルドの森が実をむすんだのか。
ひろい上げると、奇妙な鳥の鳴き声と、お母さんの「いつもあなたとともに」という声が聞こえた。
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