【完結】農民オメガ、領主の跡取りアルファに見初められるけど畑の方が心配

鳥羽ミワ

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7 まぐわい※

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 薄暗い部屋でキスをしていた。
 俺の身体はふかふかの寝台に横たえられている。からだは熱くて、だけどお腹の上にはもっと熱くて、大きなからだが覆いかぶさっていた。ベッドボードに頭がぶつからないように、大きな掌が、俺の頭をおさえてくれている。

「あ……ああ……」

 お腹の中には熱くて大きくて硬いものが入っている。俺が身じろぎをするたびに、それはどくどくと脈打った。
 蜂蜜酒の甘ったるくて、鼻の奥がつんとする香りが、全身を包んでいる。

「るい、さま」

 俺のうわごとに、彼は応えてくれた。お腹の奥をえぐるみたいに突き上げて、「アンジュ」と俺を呼ぶ。

「かわいいな」

 とろけるようだった。俺の頭の中にいろんな感情が氾濫して、抑えが効かなくて、涙が出てきた。
 きもちいい、きもちいい、と泣き喚く。子種をもらいたくて仕方ない。俺の濡れたお腹の中を耕すみたいに、ルイ様は腰をぶつけてきた。ぬちぬちと聞いたこともないような水音が立って、それはぜんぶ俺の穴から出た汁のねばついた音だ。
 恥ずかしい。だけど、やめるなんてもってのほか。
 俺はいっしょうけんめいお腹の中を締めて、ルイ様に子種のおねだりをした。ルイ様はずっと、かわいいだとか、今はだめだとか、いろんなことを話しかけてきた。何を言っているかはよく分からないけれど、俺はどんどん気持ちよくなっていく。

「あ、あぁ、あっあっ」

 口も尻もばかになって、間抜けにぽかんと開いている。ルイ様は俺の舌を吸って、くすぐって、また俺を気持ちよくした。
 身体に生ぬるい何かが滴って、肌の上をすべっていく。ルイ様の身体はじっとりと湿っていて、手に吸い付くようで、触り心地がよかった。腰を打つたびに背中の筋肉が震えて、おもしろい。

「んふ、ふ」
「ごきげんか?」

 ルイ様が優しく聞いてくれる。俺はなにも分からないけど、もっと気持ちよくなりたくて、ナカを締めて返事にした。
 目の前の太い喉が、ぐるぐる鳴る。そういえば俺は発情期だ。それで今どこにいるのかも分からなくて、シーツはところどころサラサラで、天井が高くて布が周りをおおっていて、見たことのないきんぴかの家具が隙間から見えて。

「よそ見をするな」

 身体を築き上げられて、悲鳴みたいな歓声をあげた。この際なんでもいいから、俺のお腹を埋めてほしい。気持ちよくなりたい。お願いだから抜かないでほしい。

「もっと」

 俺の股間はとっくに限界なのか、がくがくと震えていた。腰もぴたぴた跳ねる。びしょ濡れのちんこは柔らかいままで、揺れているだけだ。
 俺のお腹は熱くて、重苦しくて、だからナカをもっとぐちゃぐちゃにかき混ぜてほしい。ルイ様に目の焦点を合わせると、汗で貼りついた前髪をかきあげるところだった。

「言われなくても、満足させてやる」

 そしてまた、激しく俺を揺さぶった。男のものを受け入れるなんて初めてだけど、こんなに気持ちいいのか。情けなくあんあん喘ぐのなんて、たいしたことないくらい、気持ちいい。
 だけどそれは、ルイ様が相手だからかもしれない。
 こんなにいい匂いは嗅いだことがない。吸い込むだけで腹の奥が開いて、腰がずんと重たくなる。

「はふ、はぁ、は、は……」

 俺の浅い呼吸を食べるみたいに、ルイ様がキスをした。食べられそうになりながら、必死でこちらもルイ様に食らいつく。

「だし、て……だして……」

 おねだりを繰り返しながら、もう一個思い出したことがあった。うなじがぴりぴりしている。ここを噛まれたらきっと、すごく気持ちいい。
 咄嗟に掌でそこを撫でると、分厚い布か何かで覆われていた。

「そんにゃ」

 思わず涙目になって、ルイ様を見上げる。ルイ様はわらいながら、俺を突き上げた。

「安心しろ。まだ、番には、ならない」

 なんだそれ。話がちがう。
 俺は散々文句を言いたくなった。だけど口から出てくるのは情けない喘ぎ声ばかりだ。
 目の前がだんだん暗くなる。途切れ途切れになる。瞬きのせいだろうか。
 ルイ様のものが、お腹から抜けていく。さみしくて「あん」と声が漏れた。栓を抜くみたいな酷い音を立てて、身体が離れる。

「もう、ピークは過ぎたようだな」

 ルイ様の声が遠い。ピークってなんのピークだ。首元の布が邪魔で、引っ掻くけど、取れそうにない。

「う~……」

 唸る俺の頭を、ルイ様が撫でた。するとすこんと俺の頭は重たくなって、目の前も真っ暗になった。

「おやすみ」

 蜂蜜酒の香りが、くらりと俺の心臓を揺らした。
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