【本編完結済】悪役令息に転生したので死なないよう立ち回り始めたが何故か攻略対象達に執着されるように

なつさ

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⑶罪悪感

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「えっエヴァ様!?どこに行かれるんですか!?」
「風呂だ。一緒に入るぞ」
「えっ!?」

驚き慌てふためきながらもエヴァの言うことには逆らえないのだろう。大人しく連れていかれるユリスを浴室まで連れていった。
それにしてもこの屋敷は本当に無駄に広くて豪華だな。装飾の多い服に四苦八苦しながらも乱雑に脱ぐ。振り向けば立ち尽くしたままのユリスがエヴァをじっと見ていたが慌てて視線を逸らされた。
何だ貧相な体で悪かったな。
一向に服を脱がないユリスに焦れてボタンに手をかければ焦ったように止められる。

「エヴァ様!自分で脱ぎますっ・・・!」
「じゃあ早く脱げよ・・・」
「はっはい・・・!」

するすると取られたシャツから覗いた肌にギョッとする。至る所に痣やむち打ちの後が見られたのだ。

「こ・・・これ、どうしたんだよ」

まさかエヴァがやったのか・・・?ドキドキしながらそっと触れればユリスは俺の手の上に手を重ねた。

「ここに来る前奴隷として働いてた店でつけられた傷です。エヴァ様にお見苦しいものを見せて申し訳ありません」
「なっそんなの別にいい!それより風呂上がったら手当しないとっ・・・早く入ろうぜ」
「・・・・・・」

何故か黙りこくってしまったユリス。再び手を掴み浴槽へと一緒に入った。浴槽と言ってもかなり広いジャグジーのようだ。熱いお湯は精神的疲労を癒してくれる。無意識に息を吐き湯に体を任せた。
俺は悪役令息だがゲーム内のエヴァのように鞭打ちだとか食事を抜くだとかもっと恐ろしい残虐非道な事は俺には出来ない。エヴァの体の年齢は7歳くらいだが俺の精神年齢はとっくのとうに成熟しているのだ。
目の前の少年、ユリスは俺にとって弟のように感じる。どうせ物語が進むのは学園に入学してからなのだ。それまでは弟として可愛がっても問題ないだろう。まずはユリスにエヴァがした仕打ちを謝罪したい。

「ユリス」
「・・・?何でしょうか」
「今までごめんな」
「は・・・・・」
「今更何だって思うかもしれないけど俺、お前に酷いことした。ただでさえ辛い環境で生活してきたのにここに来てからも辛く当たって酷い事して沢山傷つけたよな」
「そ・・・そんな、僕なんて・・・」
「本当にごめん。俺の事今更信用出来ないと思うけどこれからは仲良くして欲しい」

少しでもユリスの傷ついた心を癒せたらとその細い肩を引き寄せ抱擁する。耳元で息を飲む音がした。
ぎゅっと強く抱けば困惑するようにさ迷っていたユリスの手も恐る恐る俺の背中に回った。
俺はこのエヴァという役柄から逃げる事を決意した。



クローゼットを開け手早く服を集めスーツケースに詰め込む。背後のベッドではユリスが寝息を立てていた。久しぶりに風呂に入り温まった事で安心したのかぐっすり寝入っている。
何故俺の部屋で寝ているかと言うとエヴァがユリスの部屋にベッドを用意していなかったからだ。というか部屋とも言い難い物置のような場所を与えていたようで俺は急いでユリスを自分のベッドに押し込んだのだ。部屋を用意するまで俺のベッドで寝るよう言いつけこくこくと頷くユリスを寝かせた。
そして俺は・・・この屋敷を出ていく準備を進めていた。
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