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愛しい君 ※アルベール視点
しおりを挟む一目惚れだった。
父からお前に婚約者が出来たと事後報告で知らされた時は冗談じゃないと。それに相手は評判の悪いヴィリエ家の子息だと言うじゃないか。一人息子として我儘に育てられたエヴァ・ヴィリエはとても性格が悪いと聞く。使用人に対する態度は最悪で高価な宝石や服を好んで父親のかねで贅沢をしてるだとか。叩けば何かしらホコリは出るはず。ケチをつけて婚約破棄してやろうと思ったのに。
エヴァを一目見てそんな考えはすぐに無くなった。
エヴァは・・・本当に、本当に愛らしく美しかったのだ。
シミひとつないミルク色の肌、手入れされていると分かる繊細で美しい髪に薔薇の花びらのように赤い唇は男を魅了して殺してしまう毒のようで。
エヴァに関する悪い噂は沢山聞いていたがそんな事全て許してしまえると思ってしまうほどにエヴァに魅了されてしまった。エヴァにならどれだけ我儘を言われても許してしまうかもしれない。こんなに美しいのであれば安物ではなく高価な宝石や服を身につけるのは当然なのかもしれない。
君が僕の伴侶になってくれるのなら何不自由ない贅沢な生活をさせてあげたい。
父親に促され微笑みながら挨拶をするエヴァから目が離せずらしくもなく緊張して言葉が出なかった。
なんと言おう。
君のような愛らしい人が僕の婚約者になってくれて嬉しい。
僕と君ならきっと良い国を作っていける。
僕が君を幸せにしてあげる。
しかし僕の口から出た言葉は最悪なものだった。
緊張するあまり思ってもないことをペラペラと喋ってしまう。照れ隠しもあったのかもしれない。
王都に会いにこないでなんて嘘だ。本当は毎日だって会いに来て欲しい、手紙だって毎日交したい。
分かりましたと大人しく受け入れるエヴァに自分で言っておきながらショックを受ける。
最悪だ。悲しさのあまり早々に部屋を出てしまった。
エヴァに・・・嫌われてしまっただろうか・・・。
「ロナルド、エヴァから手紙は届いているか」
「陛下恐れながら、本日も手紙は届いておりません」
「・・・分かった」
あれから数ヶ月、エヴァは僕に会いに来ることは愚か手紙の1つも寄越さない。当然だ僕がそれをするなと言ったのだから。何度もエヴァに会いに行こうとした。けれどエヴァが僕に良い印象を抱いてないのは確実でもし婚約破棄したいなんて言われたらとてもじゃないが正気でいられる自信がない。別れを切り出されるのが怖くて会いに行けなかった。
だがあれから数ヶ月、このままエヴァに会えないなんて耐えられない。
謝ろう。エヴァにあれは本心じゃなかったと。本当は君の事が好きで好きで仕方がないんだと。
そうして決心した僕はエヴァの屋敷へと向かった。
だがそこで目にしたのは僕を絶望に叩き落とすものだった。
「浮気してたんだ・・・」
随分と親しそうな様子だった。相手の男は完全にエヴァに惚れているような表情でエヴァもそんな男が馴れ馴れしく触れることを許容している。
謝ろうなんて考えは散り散りになって脳内が真っ赤にような怒りに襲われる。
(それは僕の伴侶だッ・・・!お前も何でそんな奴に触れられることを許してる・・・!?)
2人を睨んでいるとふとエヴァがこちらに気づく。
エヴァは相手の男に何か言ったのか先に帰らせ僕の元へと走りよってきた。
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