【本編完結済】悪役令息に転生したので死なないよう立ち回り始めたが何故か攻略対象達に執着されるように

なつさ

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これこそが愛 ※ユーゴ視点

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部活から帰ってきた時、普段なら共有スペースにいないヴィリエがいて少し驚いた。同時に不快感。
すぐ部屋に入ろうとした時、あいつの様子がおかしいことに気づいた。
虫が出たと大騒ぎするヴィリエ。虫如きでと呆れたが如何にもお坊ちゃま育ちなあいつは、確かにこういう事自分でしないのだろう。
これ以上騒がれるのも面倒だしと外へ放り投げる。
要は済んだと部屋に戻ろうとした時、ものすごい勢いで俺の前に割り込んだヴィリエ。
おい何すんだ!と怒れば俺以上に怒ったヴィリエが怒鳴る。

俺の部屋が汚すぎると。
確かに俺の部屋は綺麗とは言えないだろう。いつも部活で疲弊し、帰ってきたぽいぽいと物を放り投げそのままにしていた。けれどそんなに言うほどか?
というか俺の部屋が汚なかろうがお前には関係ないだろ。

しかしヴィリエは虫が出るのはお前のせいだといい俺に詰寄る。いつも済ました表情でお高く止まったようなイメージだったヴィリエが、感情を剥き出しにして怒る姿が珍しくて、何となく言い返せず従ってしまった。
掃除なんて使用人に任せ切りにしてそうなのに、手際よく俺の部屋を片付けていくヴィリエ。
数時間後、俺の部屋は驚く程に綺麗になった。

ヴィリエは腹が鳴った俺に飯を作ってくれた。
ほんの数時間前ならヴィリエの作った料理など食べれるわけが無いと思っていただろう。
だが、了承したのはあのエヴァ・ヴィリエが料理をするのかと思ってしまったからだ。
慣れた手つきで調理器具を扱うヴィリエに、そういえば時々キッチンを使用している形跡があることを思い出す。てっきりヴィリエの部屋に出入りする取り巻きが使っているものだと思っていたが、今思えばあれはヴィリエが使っていたのだろう。

振る舞われたオムライスは絶品だった。

「そ、良かった」

静かに嬉しそうな表情をしながらオムライスを食べ始めるヴィリエに、少しだけ胸が暖かくなった気がした。俺の中のエヴァ・ヴィリエという人物像が変わり始めたのはこれがきっかけだ。







幼少期から人を第一印象で決めてはいけないと思っていたはずなのに、それを思い出させてくれたのもヴィリエだった。
エマを傷つけられたからと、理性を無くしヴィリエを憎んでいたからいつもの接し方が出来ていなかったのだろう。
ヴィリエが、実は犬を飼っていると打ち明けてきた時も驚いた。そして、その犬と遊んでいる時の笑顔が、俺の中のヴィリエのイメージとかけ離れすぎていて、本当にエマに嫌がらせをした人物なのかと疑ってしまう程だった。

俺がエリックの世話をすれば、ヴィリエは喜び感謝の気持ちとして俺に弁当を作ってくれる。
いつもなら食堂で適当に済ませるのに、ヴィリエの作った弁当があるというだけで昼休みが待ち遠しい。

「お前が弁当とか珍しくね?」
「ああ、ちょっとな」
「なんだよ恋人か~?」

茶化されながら蓋を開けた弁当は彩りもよく、栄養面をしっかり考えて作られていることが一目見てわかる。ヴィリエが俺のことを考えて作ってくれたと言うだけで嬉しかった。


日々過ごしていくうちにヴィリエへの気持ちが変わっていく。
ヴィリエはツンケンしているし、見た目からお高く止まっていると思われてしまうのだろう。
けれど、一緒に過ごして行くうちに、柔らかい表情だったり、本当に愛しているものには凄く優しい所だったり、感情を出すのが上手くないだけで本当は心優青年だという事がわかってきた。

だからこそあんな制裁なんて事をしないでほしい。
きっと、エヴァは会長の事を愛しすぎるあまりあんな非人道的な事をしてしまったのだ。本当は心優しくい青年なのに。正しい恋愛の仕方が分からなくて。純粋で心優しいエヴァはこの学園に染まっておかしくなってしまっただけなのだと。
俺はそう考え始めていた。



部活の大会をにヴィリエを誘った。
俺の活躍するところを、頑張っている姿を見て欲しくて。そして、かっこいいと思って欲しかったんだ。ヴィリエの事は遠目でもすぐにわかった。
エリックと一緒に見に来てくれたヴィリエ。
ヴィリエを想って走って俺は見事に1位を取った。

どうだ!俺を見ててくれたか!?
俺1位を取ったんだ!お前が応援してくれたおかげだって!すぐさまヴィリエの元に走っていけば俺よりも興奮したヴィリエが凄い凄いと褒めてくれる。
嬉しくて、照れくさくて、顔が熱くなるのが自分でもわかった。
俺、本当にどうしたんだろうな。
この間までお前のこと嫌ってたのに。今じゃこんなにも愛おしいんだ。お前が俺のこと考えて、見てくれてるってだけで舞い上がっちまう。

その後駆けつけてくれたエマと合流し、3人で昼食をとることになった。
相変わらずヴィリエの弁当は美味しくて箸が進む。
だが、そんな和やかな空気が一変したのは、俺が席を外して戻ってきた時だった。



エマ‪が泣いている。
あの時の光景を思い出す。
散らばった弁当、それを泣きながら拾うエマ。
ヴィリエの気持ちを考え無かったからと、謝罪するエマ。
状況を理解しようとしたが、俺が何かを言う前にヴィリエが走り去ってしまった。

「エマっ・・・何があったんだよ」
「ひっく・・・うっ・・・ヴィリエさんが・・・僕に、ユーゴに近づくなって・・・!僕が、ユーゴと仲良いから・・・誤解させちゃったのかもしれない・・・。ごめんユーゴ、僕・・・」

またヴィリエがエマを傷つけた。
エマが一生懸命作った弁当を台無しにして。
俺は泣いているエマを慰めるため抱き寄せた。エマは変わらず泣き続けている。
俺は
俺は怒らなきゃいけないのに
どうして俺は


こんなにも喜んでいるんだ?





エマは、俺と仲がいいことにヴィリエが嫉妬したと言っていた。俺を好きってこと?
俺を好きだから、エマとの仲に嫉妬してこんな酷いことをしたのか?
一番最初に、エマが傷つけられた時はあんなにも怒りが湧いたのに。ヴィリエがそんな行為を働いた原因が俺という事実に、俺は心の底から喜んでいる。
曲がった事が嫌いだったはずなのに。
ああ、分かった。これって何よりも真っ直ぐな愛なんだ。
だって、理性をなくして人を傷つけるほどの愛って、真っ直ぐ以外の何物でもないじゃん。

俺は泣くエマを、これがヴィリエだったらと考えて搔きだくように引き寄せる。ひっそりと口元を抑えた。だってどうしようもなく笑みが零れて仕方ないから。







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