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入学編2
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3年前、突如として『ドラゴン』と呼ばれた超生物は龍門を通して現れた。
最初は侵略目的の悪意ある連中が現れ、続いて共存目的の善意ある連中が来た。その善意ある連中の尽力によって人類にとっての最強の対抗兵器として『DAIS』が開発された。それでも、悲しいことにそれが束になったところで上級クラスのドラゴンに敵うことはなかった。
唯一対抗できたのは、今は亡くなった天才科学者が開発したオリジナルと分類されたDAISは使い手の能力次第で単独での上級クラスの撃破に成功している。それが12機あった。
それも3年前の戦いで半数近くは持ち主諸とも破壊され、現存するのは5機のみで世間では彼らを『五英雄』などと取り扱っている。
四人までは実名やら公表したが、一人だけ公表しなかった奴がいる。それが織部ヒロだった。
何もせずひたすら惰眠を貪ってグータラしてたけど、榎本とかいう姉の元婚約者の頼みで教員免許も無いのに教師をやることになった。臨時講師という立場である。
ヒロが勤める事となった東奥学園は、国が予算を出して設けたDAISの操縦士を育成するための高等教育の場だ。当然、高校生らしい勉学をやる傍らに戦闘訓練が行われる。
ひたすら実戦あるのみで戦闘の教導なんてされてこなかったから、教えれるかと聞かれれば無理だろうな。
そんなことを思いながら迎えた入学式。
今年度から開校したので、1年生のみ総勢100人が座っている。
生徒会長の挨拶は、当然いないので無し。教員は通常授業を教えれる教師と戦闘を教えれる本物の軍人がいる。正直、場違い感が否めない。
壇上では、ちょうど新入生代表の女子生徒が挨拶を述べようとしていた。
『新入生代表、沢渡神楽』
美少女と形容するに相応しい両サイドが癖っ毛で跳ねている黒髪ロングの生徒にヒロは、何となく誰かに似ているような気がした。
似てるも何も名字からおおよそ判明できる。『夜叉姫』なんて仰々しく呼ばれてる沢渡禊の妹だろう。なんで姉妹別々なのかは知らないけど、とりあえず今のところは放っておく。
無難な挨拶が終わったところで、それまで保ってた意識が急に落ちてくる。端的に眠い。
「終わったら、起こしてください」
「我慢してください。貴方、教師の風上にも置けませんね」
ちょっと眠ろうとしただけで、キツく怒る人は酷いと思う。これは人が世界を救うために戦い抜いているのに、それを露知らず全く考慮しないで頭ごなしに叱った挙げ句に暴力事件を起こしてると勘違いしやがって退学にまでした当時の高校の校長含む教師連中にそっくりだ。
しかし、ヒロは反発しない。
「すみません。どうにも眠かったもので」
「いいですか? こういう場で居眠りは慎んでください。教師がやると、真似をする生徒がいるんですから」
「はぁ、わかりました」
教師がやってもやらなくても居眠りする生徒はいる。現に一人か二人くらいは目をつむっている。
後で怒られるのはその生徒だが、同じ穴の狢としてヒロは見逃すことにした。
入学式が終わり、会場撤収は臨時で雇われた作業員が行い、生徒は解散。教師は顔合わせも兼ねて職員室に集められた。
改めてヒロは思った。
この中で最も歳が若いのは自分であると。今年二十歳となり、お酒もタバコもいけるとは言え、歳上ばかりでコミュニケーションは取れるのだろうか。
助けてくれそうな榎本はいない。たった一人の戦場だった。
一人一人自己紹介していく最中、ついにヒロの出番になった。
「織部ヒロです。よろしくお願いします」
無難に面白味のない挨拶をしてしまった。
「えー、彼は少々事情がありまして。政府からの直々の達しで余計な詮索は本人の望まぬところではしないようにお願いします」
教頭の注釈がつき、一層の疑惑を持たれたのは仕方ないだろう。
「貴方って何歳なの?」
隣にいたスーツの似合うバリバリのキャリアウーマンみたいな女性、篠森美代子が訊いてくる。ちなみにこの人は2番目に若くて24歳。
「二十歳です」
「若っ!? もしかして大学とか飛び級してきたの?」
「高校中退ですよ。俺、DAISの戦闘に詳しいからここで教導することになっているんです」
「高校中退って……免許は?」
「当然持ってません」
よくよく考えてみると、ヒロの経歴は小中校は大病を患って殆ど寝たきり。高校は中退。五英雄であることは公表していないから、世間の評価は死んだ両親の遺産と国連から出た報償金みたいなもので自堕落な日々を送る引きニートだ。
世界とか国のために力を振るうことなく、むしろその力を誰にも渡さず自分で持ったままでいる。こんなのが英雄? 絶対に信じたくない。
「正直に言うと、こんな特殊な学校でなかったら採用されてないわ」
「篠森さんは保険医でしたっけ?」
「ええ。一応も柔道も嗜んでいるので1度寝技受けてみます?」
「いや、遠慮しておきます」
「あら、残念」
含んだ笑みを浮かべる美代子に空恐ろしいものをヒロは感じ、内心ビクビクした。
今日はそれで終わり、解散となった。
そそくさと帰ろうとしたヒロを美代子が呼び止める。
「今夜予定あるかしら?」
「特にありませんよ?」
「じゃあ、飲みに行きましょう! 良い店があるの!」
「あ、はい」
睨まれるような視線を感じたが、何のことか理解不能だったのでヒロは無視した。
そもそも、飲みとは何を飲むのだろうか。
最初は侵略目的の悪意ある連中が現れ、続いて共存目的の善意ある連中が来た。その善意ある連中の尽力によって人類にとっての最強の対抗兵器として『DAIS』が開発された。それでも、悲しいことにそれが束になったところで上級クラスのドラゴンに敵うことはなかった。
唯一対抗できたのは、今は亡くなった天才科学者が開発したオリジナルと分類されたDAISは使い手の能力次第で単独での上級クラスの撃破に成功している。それが12機あった。
それも3年前の戦いで半数近くは持ち主諸とも破壊され、現存するのは5機のみで世間では彼らを『五英雄』などと取り扱っている。
四人までは実名やら公表したが、一人だけ公表しなかった奴がいる。それが織部ヒロだった。
何もせずひたすら惰眠を貪ってグータラしてたけど、榎本とかいう姉の元婚約者の頼みで教員免許も無いのに教師をやることになった。臨時講師という立場である。
ヒロが勤める事となった東奥学園は、国が予算を出して設けたDAISの操縦士を育成するための高等教育の場だ。当然、高校生らしい勉学をやる傍らに戦闘訓練が行われる。
ひたすら実戦あるのみで戦闘の教導なんてされてこなかったから、教えれるかと聞かれれば無理だろうな。
そんなことを思いながら迎えた入学式。
今年度から開校したので、1年生のみ総勢100人が座っている。
生徒会長の挨拶は、当然いないので無し。教員は通常授業を教えれる教師と戦闘を教えれる本物の軍人がいる。正直、場違い感が否めない。
壇上では、ちょうど新入生代表の女子生徒が挨拶を述べようとしていた。
『新入生代表、沢渡神楽』
美少女と形容するに相応しい両サイドが癖っ毛で跳ねている黒髪ロングの生徒にヒロは、何となく誰かに似ているような気がした。
似てるも何も名字からおおよそ判明できる。『夜叉姫』なんて仰々しく呼ばれてる沢渡禊の妹だろう。なんで姉妹別々なのかは知らないけど、とりあえず今のところは放っておく。
無難な挨拶が終わったところで、それまで保ってた意識が急に落ちてくる。端的に眠い。
「終わったら、起こしてください」
「我慢してください。貴方、教師の風上にも置けませんね」
ちょっと眠ろうとしただけで、キツく怒る人は酷いと思う。これは人が世界を救うために戦い抜いているのに、それを露知らず全く考慮しないで頭ごなしに叱った挙げ句に暴力事件を起こしてると勘違いしやがって退学にまでした当時の高校の校長含む教師連中にそっくりだ。
しかし、ヒロは反発しない。
「すみません。どうにも眠かったもので」
「いいですか? こういう場で居眠りは慎んでください。教師がやると、真似をする生徒がいるんですから」
「はぁ、わかりました」
教師がやってもやらなくても居眠りする生徒はいる。現に一人か二人くらいは目をつむっている。
後で怒られるのはその生徒だが、同じ穴の狢としてヒロは見逃すことにした。
入学式が終わり、会場撤収は臨時で雇われた作業員が行い、生徒は解散。教師は顔合わせも兼ねて職員室に集められた。
改めてヒロは思った。
この中で最も歳が若いのは自分であると。今年二十歳となり、お酒もタバコもいけるとは言え、歳上ばかりでコミュニケーションは取れるのだろうか。
助けてくれそうな榎本はいない。たった一人の戦場だった。
一人一人自己紹介していく最中、ついにヒロの出番になった。
「織部ヒロです。よろしくお願いします」
無難に面白味のない挨拶をしてしまった。
「えー、彼は少々事情がありまして。政府からの直々の達しで余計な詮索は本人の望まぬところではしないようにお願いします」
教頭の注釈がつき、一層の疑惑を持たれたのは仕方ないだろう。
「貴方って何歳なの?」
隣にいたスーツの似合うバリバリのキャリアウーマンみたいな女性、篠森美代子が訊いてくる。ちなみにこの人は2番目に若くて24歳。
「二十歳です」
「若っ!? もしかして大学とか飛び級してきたの?」
「高校中退ですよ。俺、DAISの戦闘に詳しいからここで教導することになっているんです」
「高校中退って……免許は?」
「当然持ってません」
よくよく考えてみると、ヒロの経歴は小中校は大病を患って殆ど寝たきり。高校は中退。五英雄であることは公表していないから、世間の評価は死んだ両親の遺産と国連から出た報償金みたいなもので自堕落な日々を送る引きニートだ。
世界とか国のために力を振るうことなく、むしろその力を誰にも渡さず自分で持ったままでいる。こんなのが英雄? 絶対に信じたくない。
「正直に言うと、こんな特殊な学校でなかったら採用されてないわ」
「篠森さんは保険医でしたっけ?」
「ええ。一応も柔道も嗜んでいるので1度寝技受けてみます?」
「いや、遠慮しておきます」
「あら、残念」
含んだ笑みを浮かべる美代子に空恐ろしいものをヒロは感じ、内心ビクビクした。
今日はそれで終わり、解散となった。
そそくさと帰ろうとしたヒロを美代子が呼び止める。
「今夜予定あるかしら?」
「特にありませんよ?」
「じゃあ、飲みに行きましょう! 良い店があるの!」
「あ、はい」
睨まれるような視線を感じたが、何のことか理解不能だったのでヒロは無視した。
そもそも、飲みとは何を飲むのだろうか。
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