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しおりを挟むこんな私に婚約の申し込みをしたいと言って下さったガブリエル殿下。私もとても会いたくて会いたくてたまらなかった。
この気持ちは知っている、恋だ。かなり重症の。
私にはこの国での社交は無理だ、お役には立てない。散々つけられた “ 無能 “ のレッテルは中々外れないだろう。でも今まで努力して来た事は身に付いているし開眼したギフトはチート級だと思う、かなり優れたギフトだ。商会を通してこれからは沢山の繋がりも出来るはず。
この国よりも他国の方からの問い合わせや、注文の方が多く感触としても良い。民度が高いとでも言おうか・・・移住も考えたけれどこの国の王族は父の兄であり私の事もずっと陰ながら支えてくれていた。
ダメス様との婚約を見守って下さり無理せず婚約解消の道もある、解消後も心配するな、と声を掛けてくれながらも私の気持ちを優先してくれていた。本当にありがたい
それと帝国は大きな国なので国力的にはあちらの方がかなり上だが、うちは公爵家、王弟の娘である事はきちんとした後ろ盾になるだろう。
それでも図々しいとは思うが彼の手を取りたい、そんな考えが瞬時に駆け巡った。そんな私を見ていたガブリエル殿下が
「私の事、嫌いでなければこの手を取ってはくれまいか?」と瞳を揺らしながらそう告げられ
「私もお会いしたかったです。ずっと、貴方の事ばかり考えていました。こんな私でも許されるならば・・・お願い致します。貴方の事をお慕いしております。」
つかえながらも何とか伝えられた。震える手を殿下の手に載せる。私の手を握った殿下は立ち上がりそのまま引き寄せ抱きしめた。
「ああ、良かった。貴女に拒絶されたらと思うと、怖かった。こんな気持ちになったのは初めてなんだ、貴女を失いたく無い。私達が初めて会った日、婚約破棄されたとリチャード殿下は言っていたね?
君が、誰かのものでは無くて良かった。私の大切な女性。」
「___はい・・・」様々な気持ちが溢れ言葉が詰まり一言しか返せなかった
こんなことを言われたのは前世通して初めてだった。始まりは好きでいてくれたのだろうけれどこんなに想いを告げられた事は無く、捨てられた記憶しか無かったしこんな風に抱きしめられた事も無かった。それに、自分が抱きしめられてすっぽりと腕の中に収まるなんて想像した事も無かった。
だって、前世から大きめのボディだったから・・・
しっかりと抱きしめられるって、こんなに安心するんだな・・・幸せ
暫くそうしていた私たちはもう一度満月に抱かれながらダンスを踊った。胸の隅々まで月の美しい光に満たされている。
「今宵は、舞踏会場でも踊って頂けますか?」
とのガブリエル殿下の言葉にホールに戻って踊る事になった。庭でのダンスも安定感があったのだがホールでのダンスは更に踊りやすくいつまでも踊っていられそうな程で身を預ける腕が逞しいと背が高いからとか気にする必要も無いのだと感じた。
1曲踊り終わってホールドを解き壁に寄ると、周りから色々と声が聞こえる
「あの素敵な殿方はどなたかしら?」 「嘘でしょ?アンリ様が踊っていらっしゃったわ!!」 「私も、踊って頂きたいわ!」
すると懲りもせずにまたしてもダメスとひっつき虫令嬢達が側へやって来る___うんざりなんですけどーー
「アンリ、君踊れたのかい?」とダメス様
「本当ね。アンリ様と言えば “ 壁のし・・ “ いえ ” 壁の花 “ ですもの、リチャード殿下ばかりかこんな素敵な方にまでご面倒おかけするなんて悪いと思わないのかしら。」
挨拶よりパンチを先に繰り出すなんて非常識にも程があるでしょうに。国外の貴賓だと分からないのかしら?
「ダーナス伯爵令息、こちら帝国のお客様で___」
「まぁ、素敵! 帝国からお見えになられたんですのね? 私、ダーナス伯爵家が娘セーラと申しますの。
そんな、 “ 無能 “ なんて放っておいて私達とご一緒致しましょう?そんな不細工な大女なんて貴方様には似合いませんわ!
「初めまして、私、この国のドータス公爵家が長女ユレイアと申しますの。」」
と私を突き飛ばし気味に押し退けるとガブリエル殿下の腕をとった・・・無礼者めーーー
ふらつき転びそうになっていたら、支えてくれる人がいる・・・リチャード殿下だ
「良い加減にしたまえ___」 「離したまえ___」と底冷えのする声がした
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