何度目かの恋もサヨウナラ、ざまぁは致しません。自分の幸せを探します

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足が、遅すぎる

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明らかに自分に近づいて来る他国の家紋の入った馬車。今は、暗くなり貴族街とは言え乗せられたらお終いだ!怖い!!
必死に走っているつもりだけど、前世の若い頃の様に身軽には走れない。
ドレスを着て、ダンスを踊るのは慣れていても走ったりはしないから。

馬車が停まり誰か降りて来た!!嫌だ、怖い!プチパニックになりながらも頑張って走る!それにしても、遅っ。 身体に重しを付けている感覚。

「待って!」
と言いながら追いかけて来る!待ってたまるかーー、逃げるに決まってる!
しかし、悔しいけれど無理かも。遅すぎるよ・・・。雨も降っており足がもつれて転んでしまった。護衛なのか?軽い身のこなしの男性が走り寄って来た。

イヤーーー、売られるー!

その後ろから・・・
「大丈夫?!!」問いかけられた。少年の声の様だ。歳が近そうだ。
寒さと、恐怖で震えて上手く声が出ない。

「そんなに震えて・・」
「売らないで下さい。安くしか、売れません。底値です!」ハアハアと、荒い息を吐きながら変な答えを返してしまった。

「・・・・・そんな心配してたの。」

「お願いです・・・売らないで下さい。王宮にも帰りたくありません。本当に、何もしていないのです」

ガタガタと寒さに震えながらお願いした。 私の素敵な異世界生活をお願い奪わないで・・・

「大丈夫、貴女を売ったりしないよ。それに、傷つけることもしない。安心して
私達は、アリアーナ様、貴女の味方だ。」

やはり、私の事を知っていた様だ。王太子や、公爵の手の者でなければ王城に連れ戻される事は無いだろうけれど、不安がなくなるわけでは無い。

「本当に?私を売らない?奴隷商人にも、娼館にも売らない?王城に連れ戻さない?」
バカな事を言っているとは思うけれど、悪役令嬢には悲しい末路しか無くて疲れて寒さに震える私にはそればかりが去来した。

「本当に、貴女が嫌がる事はしないよ。約束する。どうか信じて。暖かな部屋に行こう。」

いつの間にか他の護衛だろう人が少年達に傘を差し掛けていた。私にも・・冷えてすっかり疲れ切った私には、とても魅力的な提案だった。 何ヶ月も、張り詰めて頑張って来たのが無駄になるのでは・・考えると不安だったけれど私は、彼らの手を取った。 だって、何れにせよもう、逃げる事は出来ないのだから。


こうして、他国の、私が知らない家紋の馬車に乗せられ貴族街から出た。まだ、この辺りは貴族御用達の店や宿が集まっている。その中のあまり大きくは無いが、落ち着いた暖かな雰囲気の宿に馬車は入って行った。

既に湯浴みの準備がされており、兎に角寒かった私は遠慮なく入らせて貰った。
あー、温かい。ずっと張り詰めていた上に冷たい雨に打たれ身も心も冷え切っていた私はその心地良さにウトウトしてしまった。イケナイ!寝てはダメだ。
何とか、眠気を振り払いバスルームを出る。

どうやら、私を助けようとしてくれているだろう少年も湯浴みをして来た様だ。

「さあ、座って。乾いた服持っていたんだね。しかも、町娘仕様。」

「はい。あの、湯浴みまでさせて頂きありがとうございます・・・

ただ、どうして助けて頂いたのか。教えて頂けたらと思いまして。あなた様とは初対面と、認識しております故。」
私は、彼の美しいが、何処か懐かしさを感じる顔を見ながら聞いてみた。


「そうだね。君が疑問に思うのは、当然だよね。

確かに、私達は初対面だ。どうして助けたのかとの問いには、アリアーナ様が昔の私の知り合いにとても似ているから、かな。」


「・・・?それだけで私を助けようとなさったのですか?
自分で言うのも何ですが、私は王太子殿下に先程追放されました。それに、実家である公爵家も私を助けてはくれません。援助の手を差し伸べることもしないでしょう。寧ろ、反対の反応を返すかと・・・

せっかくここまでして頂いたのですがご迷惑をおかけしてしまいます。早々に、私の事は追い出すべきかと思います。」
言っていて、改めて自分の置かれた状況を再認識し、言葉にすると悲しいものがあった。

「そんな事は気にしなくて良いよ。安心して・・・僕は、こんな冷たい雨の降る夜に寒空の下貴女を放り出したりしないよ。」
と、優しく微笑む。

その言葉を聞いたら、何だか涙がこぼれてしまった。しかも、止めることが出来ない自分でも咄嗟に出て来てしまったそれに戸惑いを覚えた。前世の時から、男性の前で泣かないと決めていたから。

それでも、冷たい雨の降る寒空の下毎回私は追い出されて来た。捨てられて来た。愛する者によって。
先程も、冤罪までかけられて部屋どころか国外追放までされた。

解放されて嬉しかったけれど、やっぱり哀しかった。お前は要らない子だと全てに拒否されたみたいで、愛されずにいつも捨てられるんだって、哀しかった。
血の繋がった父である公爵でさえ私の事は要らないと利用し、捨てたのだから。

ずっと、ずっと寂しかったのだ。公爵にも王太子殿下にも、本当は愛されたかった。
抱きしめて欲しかった。
愛していると、言って欲しかった。
叶う事は無いと、心に蓋をして来た。愛されたいと思ってしまえば、辛くて耐えられ無いと解っていたから。

初めて会った、この少年は父にも歴代?の婚約者にも捨てられ続けた私を、捨てないと・・まあ、と言う事だとしても。放り出さないと言ってくれた。
色々な事で、いっぱいいっぱいだった私の心が、決壊した。

溢れ出したモノは止められなくて、堪えても堪えきれず溢れて来る。そんな私に


「我慢しなくて良いんだよ。沢山泣けば良いよ。全部吐き出せば良いんだよ。」と、優しく背中をトントンと叩き、時に撫でて胸を貸してくれた。

「ごめ、ごめんなさい、初めてお会いしたのに。こんな事して・・・」

「そんな事は気にしないで良いよ。」

と、彼の何処か懐かしい感じと、その優しさに今だけと甘えてしまいいつの間にか眠ってしまっていた。






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