犬と猫の宇宙戦争に巻き込まれてしまいました

たかみたか

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第一話 ワンニャン宇宙大戦争

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 果てしなく広がる宇宙、そこには数多くの銀河が存在する。
その銀河の中のひとつに天の川銀河と呼ばれる銀河がある。
我々人類は天の川銀河の中にある太陽系の中の地球という惑星に暮らしている。
この広大な宇宙には当然ながら我々人類以外の生命体も存在している。
太陽系が所属する天の川銀河の中にも様々な惑星があり、色々な人々……人類が宇宙人と呼ぶ人々も大勢暮らしている。
その天の川銀河の宇宙人たちは、天の川銀河連合という宇宙機関を作り争いが起きないよう努めていた。

 太陽系から遠く離れたところに少し変わった巨大な岩石がある。
岩石にはきれいに方形に整備された出入口が数多く作られており、明らかに自然な物とは異なる。
そしてその出入口からは数多くの宇宙船が出入りをしている。
この岩石は天の川銀河連合によって整備されたものである。
この岩石には基地の機能も備わっており、この基地の名前をオテという。
オテ内部には巨大な空間があり都市が整備されている。
都市には様々な惑星の人々が住んでいるが、その住民は天の川銀河連合に関係している人々が多い。
オテにある建物の中で最も大きなものは天の川銀河連合本部ビルである。
現在その天の川銀河連合本部ビルでは天の川銀河連合安全保障理事会が開かれていた。
今二隻の宇宙船がちょうどオテに到着したところである。

 会議場のU字型のテーブル席には様々な動物の顔をしたヒト型宇宙人が座っている。
彼らは動物の顔をしているが体は人類と変わらない。
二足歩行を行い両手を自由に使う。
U字型のテーブル席の真ん中に議長席があり、その議長席にはゴリラの顔をしたヒト型猿が座っている。
彼は落ち着いた雰囲気のおじいさんである。
この男性はウホホニ世といい惑星サールの代表である。
「まだ惑星ワンコ代表と惑星ニャンコ代表は会場に来ていないのかね」
ウホホ二世が会議場の職員に尋ねる。
「はい、この二つの惑星の宇宙船がただいま天の川銀河連合本部ビルに今到着したようです」
「そうかね」
ウホホ二世はそう言うと会議場の人々をなだめる。
「会議場の代表の皆様、どうやら惑星ワンコと惑星ニャンコの代表がこのビルに到着した模様です、もうしばらくお待ちください」
「やっと到着かね」
苛立った様子でチュー三世が不満を漏らす。
彼はネズミの顔をしたヒト型ネズミである。

 まるでマフィアのような黒スーツの集団が理事会会議場へ入ろうとしていた。
その黒スーツ集団を率いているのは葉巻をくわえたマッチョな中年男性である。
ブルドッグ顔のその男は惑星ワンコ代表のワン三世である。
「すみません、会議場へは代表の方のみでお願いします、それ以外の方は二階の見学席へお願いします……それに会議場でのタバコ類は禁止されていますので……」
職員の言葉にワン三世はジロリと職員をにらみつける。
職員は震え上がる。
「フン」と言うとワン三世は仕方なく葉巻をお付きの者に渡し会議場へ入っていく。
そして次に白いスーツのオシャレな集団が会議場へ入ろうとする。
「会議場へは私だけだそうです、みなさんは二階で待っていてください」
そう言ったのは惑星ニャンコ代表のニャン三世である。
ニャン三世はお付きの者にそう言うと「ですよね」と紳士的な態度で職員に微笑む。
「ありがとうございます、どうぞ会議場へ」
職員は嬉しそうにニャン三世を案内した。

 全ての参加者が着席した会議場、議長であるウホホ二世の声が響く。
「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。ただ今より天の川銀河連合安全保障理事会を開始したいと思います」
会議場には次の参加者がいる。
U字型のテーブルの最も右の席にブルドッグ顔のヒト型犬が座っている。
彼は中年男性であるがマッチョな体型のため若々しく見え、マフィアのような身なりのため威圧感がある。
この男性はワン三世といい彼は惑星ワンコの代表である。
その左にはネズミの顔をしたヒト型ネズミが座っている。
彼は小柄な中年男性ではあるが童顔のため幼く見える。
彼はワン三世とニャン三世の遅れに不満を漏らしていたように少し神経質である。
この男性はチュー三世といい彼は惑星ネズミーの代表である。
その左には馬の顔をしたヒト型馬が座っている。
彼は巨漢の中年男性ではあるが威圧感はない、雰囲気は穏やかである。
この男性はヒヒーン三世といい彼は惑星ウーマの代表である。
議長席のウホホニ世を挟みその左にはフクロウの顔をしたヒト型鳥が座っている。
小柄な彼は丸眼鏡をかけた可愛らしいおじいさんである。
この男性はホーホー二世といい彼は惑星トーリの代表である。
その左には羊の顔をしたヒト型羊が座っている。
彼はおっとりとした中年男性である。
この男性はメー三世といい彼は惑星モフモフの代表である。
その左には猫の顔をしたヒト型猫が座っている。
彼はスラリとした洒落な中年の紳士である。
この男性はニャン三世といい彼は惑星ニャンコ代表である。

 静まりかえった会議場に議長であるウホホ二世の声が響く。
「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。ただ今より天の川銀河連合安全保障理事会を開始したいと思います。議題は『ワンニャン宇宙大戦争』です。様々な惑星で問題になっているようなので、まず最初に、当事者である惑星ワンコ代表ワン三世と、惑星ニャンコ代表ニャン三世に説明をしていただこうと思います。それではまずワン三世から説明をお願いいたします」
議長に発言をうながされたワン三世は穏やかな口調、穏やかな表情で挨拶を始める。
「皆様よろしくお願いいたします」
そして一呼吸置き迷惑そうな顔で少し語気を荒げる。
「心外である! いったい何なのだこのくだらない議題『ワンニャン宇宙大戦争』とは、そもそも我々惑星ワンコは戦争などしていない!」
「その通りです、惑星ニャンコも戦争はしていませんよ」
余裕の表情のニャン三世もすぐに同調する。
二人の言葉を聞いた議長はチュー三世に視線を移す。
「それでは議題の提案者であるチュー三世、説明をお願いします」
議長の言葉に「ハイ」と返事をしてチュー三世が説明を始める。
「確かにお二人がおっしゃっているように惑星ワンコと惑星ニャンコは直接的な武力戦争はしていません、それは事実です。しかし実際にはこの二つの惑星の間には極めて戦争に近い緊張が存在します、要するに冷戦です。そのため両惑星は国力を高めるため様々な惑星と同盟関係を結び勢力を拡大しています。同盟を結ぶこと自体は問題はないのですが、問題はその同盟の内容です。この二つの惑星は私どものような弱小惑星と同盟を結ぶ場合、軍事力を背景にした二カ国間の安全保障条約を結びます。安全保障条約と言っても中身は不平等条約です。一種の植民地のような関係を強要してきます。この冷戦で数多くの弱小惑星が不平等条約に苦しんでいます。これを無くすため私は提案します。惑星ワンコと惑星ニャンコからの不平等条約を禁止する条約、『 ワンニャン不平等条約禁止条約』を」
するとパチパチパチと徐々に拍手が広がっていく。
最終的にはワン三世とニャン三世以外の代表が全員拍手をした。
その拍手を見たワン三世の表情がみるみるうちに不機嫌なものに変わっていく。
ニャン三世の表情は特に変わることはなく涼しげなままだった。
「それではチュー三世提案の『ワンニャン不平等条約禁止条約』の採決をとりたいと思います。賛成の方は挙手をお願いいたします」
議長の言葉のあと次々に手が挙がる。
結果的にはワン三世とニャン三世以外の惑星代表が手を挙げた。
「賛成多数、よってこの議案は採択されました」
議長がそう発言するとワン三世は苦虫をかみつぶしたような顔になる。
ニャン三世は特に表情を変えることはなかった。
会議が終わるとワン三世とニャン三世以外の惑星の代表たちが笑顔で握手をし喜びを共有していた。
それとは対照的にワン三世とニャン三世は会議が終わるとすぐに席を立つ。
ワン三世は通路に向かいながらニヤリと笑う。
「まだやり方はある」
ワン三世がつぶやくとニャン三世も続く。
「確かにそうですね」
側を通るニャン三世も意味ありげに微笑みながら同調する。
この二つの惑星はこの時すでに新たな勢力拡大の方策を考えていた。
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