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第三十三話 湯の中の解放
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陰陽庁が手配した「宿」は想像を絶するものだった。
晴人のような一般庶民にはまず縁がないであろう老舗の超高級旅館。さすがは国がバックについているだけはある。というか、鶴原の個人的な趣味も入っているような気もするが。
巨大な石碑を思わせるその和風建築の中に入ると、女将と名乗る女性が、たくさんの仲居を引き連れて、三つ指をつき、豪奢なロビーで晴人たちを出迎えた。
「どうぞごゆるりとお寛ぎくださいませ」
——いやいや、逆に寛げないって…
しかし、場違いな感覚を味わっている晴人をよそに、他のメンバーは慣れた様子で会釈をし、チェックインを済ませている。慌てて彼らの後を追い、晴人もフロントで部屋の鍵をもらう。
「では、明日9時にこの場所に集合して、今後のスケジュールについて話し合いましょう」
全員がチェックインを済ませた後、レイの一言で解散となり、第4グループのメンバーは散り散りに各自の部屋へと向かって去っていった。
晴人も、三毛猫姿の百八を肩に乗せて自分の部屋へと向かう。部屋、といってもそれぞれが離れのような個室になっており、他の客とは顔を合わせないよう、導線が工夫されている。
——こんなのどっかの社長が愛人連れて来るようなとこだろ。
渡り廊下を歩きながらそんなことを考えていると、百八が晴人の耳元で囁いた。
「おい晴人、今夜は二人きりでたっぷり楽しめそうだな」
「たっぷりって…もう俺疲れて寝ちゃいそうだよ」
「またまたそんなこと言って、本当は期待してるくせに」
「なっ…俺が期待?何言って…」
「誓約の力はどんどん強くなるからな。まあやってみれば分かるぜ…勝手に体が反応するだろうから」
「あのなー、そういう下品なこと言ってるとマジで嫌いになるぞ」
そうこうしているうちに、部屋に到着する。恐る恐る引き戸を開けると、予想以上に気品のある、純和風で統一された内装が晴人たちを出迎えた。一瞬、自分がどういう状況にあるかを忘れ、テンションが上がる。
「うわー…すげー部屋」
部屋には内風呂がついており、ますます「社長と愛人感」が強まる。荷物を置いて、しばしその場に立ち尽くしていると、背後から、不意に逞しい腕が晴人の体を抱いた。いつの間にか人間の姿に戻った百八が、晴人の首筋に唇を這わせる。
「んっ…百八…こんな、いきなり」
「晴人、俺もう我慢できないんだ。頼むから早く、霊力を補給させてくれ」
切実な声と濡れた舌が、耳朶を刺激する。まるで、晴人の性感帯を知り尽くしているようなその愛撫に、思わず熱のこもった吐息が漏れる。
「っあ…は…んっ」
「いいぞ、お前は相変わらず可愛い声で鳴くな」
笑みを含んだ声でそう言うと、百八はあっという間に晴人の服を脱がせ、横向きに抱えたままずかずかと歩き出した。
「お、おい!どこ行くんだよ」
「決まってるだろ?風呂があるんだから、風呂に入るんだ」
晴人の問いに答えながら、百八が離れと地続きになった透明な戸をガラリと開ける。すると、石造りの浴槽に花びらが浮かんでいるのが見えた。
——なんかいきなりラブホに来た気分…
かぽん、とどこかから「ししおどし」の音が聴こえる。この雰囲気の中だと、そんな何気ない音色でさえ淫靡に響いてくるから不思議だ。
「さあ晴人、湯に浸かるぞ」
百八はそう言うと、そっと大切なものを扱うように晴人を風呂に入れた。そして、自分も身につけていた白い着物を脱ぎ捨て、浴槽へ体を沈める。気がつくと、晴人は後ろから百八に抱き抱えられる形で、湯船の中に身を横たえていた。
「晴人、今日は俺大活躍だっただろ?だからたっぷり労ってくれよ」
「労うって…ん…っあ」
百八の指が、晴人の両胸に咲いた蕾を優しく刺激する。思わず甘い声を漏らしてしまう自分が悔しい。
——これってマジで誓約の力なのか?それとも…俺本当に感じちゃってるのかな…
湯の暖かさと、百八の体温が混ざり合い、晴人の体がどんどん熱を帯びていく。そのうちに、百八の手は晴人の最も繊細な部分に伸びていき、上下にゆっくりとそれを扱き始めた。
「ん…んあ…っは…んん!」
「そうだ、もっと感じてくれ、もっと俺に霊力をくれ。そうしたら、俺今よりずっと強くなってお前を守れるから」
——そ、そうだ、そう言えばこいつに聞かなきゃいけないことが…でも今は…なんか気持ちよすぎて…
しばらくその快楽に身を委ねていると、百八がくるりと晴人の体を回転させた。自然と向き合って抱き合う姿勢になる。はっきり言ってかなり恥ずかしい体勢だ。
——これじゃまるで、マジで恋人同士みたいじゃんか…
百八が、赤面している晴人の顔をじっと見つめながら、口づけをしてくる。唾液が混ざり合い、舌が絡み合う。その間も、百八の手は晴人の敏感な部分を刺激し続けている。
「ん…ふ…っん」
快楽に意識が遠のいていくのを感じながら、晴人は必死に自制心を保とうと努める。
「びゃ…百八…俺…んっ…お前に聞きたいことが…あ…」
「ん?何だ?言ってみろよ」
「っ…あ…あの、この前…もっとレベルアップする方法が…あるって」
「ああ、あれか。そうだな、そろそろお前に教えても良いかもしれないな」
百八はそう言ってニヤリと笑うと、不意に晴人から体を離し、湯船の中に立ち上がった。立ち上る湯煙に紛れて、その逞しい肉体が浮かび上がる。
「晴人、誓約の力をさらに強めるには、俺にかけられた呪縛を解く必要がある」
「呪縛を…解く?」
「ああ、そうだ。俺の体にはカグラの野郎にかけられた呪縛が何重にもかかってる。それを解放できるのは、晴人——宿り主であるお前だけなんだ」
「どう、すれば良いんだ」
晴人がそう尋ねると、百八は口元に笑みを浮かべ、晴人に向かって言った。
「俺たちの精気を混ぜ合わせるんだ——」
晴人のような一般庶民にはまず縁がないであろう老舗の超高級旅館。さすがは国がバックについているだけはある。というか、鶴原の個人的な趣味も入っているような気もするが。
巨大な石碑を思わせるその和風建築の中に入ると、女将と名乗る女性が、たくさんの仲居を引き連れて、三つ指をつき、豪奢なロビーで晴人たちを出迎えた。
「どうぞごゆるりとお寛ぎくださいませ」
——いやいや、逆に寛げないって…
しかし、場違いな感覚を味わっている晴人をよそに、他のメンバーは慣れた様子で会釈をし、チェックインを済ませている。慌てて彼らの後を追い、晴人もフロントで部屋の鍵をもらう。
「では、明日9時にこの場所に集合して、今後のスケジュールについて話し合いましょう」
全員がチェックインを済ませた後、レイの一言で解散となり、第4グループのメンバーは散り散りに各自の部屋へと向かって去っていった。
晴人も、三毛猫姿の百八を肩に乗せて自分の部屋へと向かう。部屋、といってもそれぞれが離れのような個室になっており、他の客とは顔を合わせないよう、導線が工夫されている。
——こんなのどっかの社長が愛人連れて来るようなとこだろ。
渡り廊下を歩きながらそんなことを考えていると、百八が晴人の耳元で囁いた。
「おい晴人、今夜は二人きりでたっぷり楽しめそうだな」
「たっぷりって…もう俺疲れて寝ちゃいそうだよ」
「またまたそんなこと言って、本当は期待してるくせに」
「なっ…俺が期待?何言って…」
「誓約の力はどんどん強くなるからな。まあやってみれば分かるぜ…勝手に体が反応するだろうから」
「あのなー、そういう下品なこと言ってるとマジで嫌いになるぞ」
そうこうしているうちに、部屋に到着する。恐る恐る引き戸を開けると、予想以上に気品のある、純和風で統一された内装が晴人たちを出迎えた。一瞬、自分がどういう状況にあるかを忘れ、テンションが上がる。
「うわー…すげー部屋」
部屋には内風呂がついており、ますます「社長と愛人感」が強まる。荷物を置いて、しばしその場に立ち尽くしていると、背後から、不意に逞しい腕が晴人の体を抱いた。いつの間にか人間の姿に戻った百八が、晴人の首筋に唇を這わせる。
「んっ…百八…こんな、いきなり」
「晴人、俺もう我慢できないんだ。頼むから早く、霊力を補給させてくれ」
切実な声と濡れた舌が、耳朶を刺激する。まるで、晴人の性感帯を知り尽くしているようなその愛撫に、思わず熱のこもった吐息が漏れる。
「っあ…は…んっ」
「いいぞ、お前は相変わらず可愛い声で鳴くな」
笑みを含んだ声でそう言うと、百八はあっという間に晴人の服を脱がせ、横向きに抱えたままずかずかと歩き出した。
「お、おい!どこ行くんだよ」
「決まってるだろ?風呂があるんだから、風呂に入るんだ」
晴人の問いに答えながら、百八が離れと地続きになった透明な戸をガラリと開ける。すると、石造りの浴槽に花びらが浮かんでいるのが見えた。
——なんかいきなりラブホに来た気分…
かぽん、とどこかから「ししおどし」の音が聴こえる。この雰囲気の中だと、そんな何気ない音色でさえ淫靡に響いてくるから不思議だ。
「さあ晴人、湯に浸かるぞ」
百八はそう言うと、そっと大切なものを扱うように晴人を風呂に入れた。そして、自分も身につけていた白い着物を脱ぎ捨て、浴槽へ体を沈める。気がつくと、晴人は後ろから百八に抱き抱えられる形で、湯船の中に身を横たえていた。
「晴人、今日は俺大活躍だっただろ?だからたっぷり労ってくれよ」
「労うって…ん…っあ」
百八の指が、晴人の両胸に咲いた蕾を優しく刺激する。思わず甘い声を漏らしてしまう自分が悔しい。
——これってマジで誓約の力なのか?それとも…俺本当に感じちゃってるのかな…
湯の暖かさと、百八の体温が混ざり合い、晴人の体がどんどん熱を帯びていく。そのうちに、百八の手は晴人の最も繊細な部分に伸びていき、上下にゆっくりとそれを扱き始めた。
「ん…んあ…っは…んん!」
「そうだ、もっと感じてくれ、もっと俺に霊力をくれ。そうしたら、俺今よりずっと強くなってお前を守れるから」
——そ、そうだ、そう言えばこいつに聞かなきゃいけないことが…でも今は…なんか気持ちよすぎて…
しばらくその快楽に身を委ねていると、百八がくるりと晴人の体を回転させた。自然と向き合って抱き合う姿勢になる。はっきり言ってかなり恥ずかしい体勢だ。
——これじゃまるで、マジで恋人同士みたいじゃんか…
百八が、赤面している晴人の顔をじっと見つめながら、口づけをしてくる。唾液が混ざり合い、舌が絡み合う。その間も、百八の手は晴人の敏感な部分を刺激し続けている。
「ん…ふ…っん」
快楽に意識が遠のいていくのを感じながら、晴人は必死に自制心を保とうと努める。
「びゃ…百八…俺…んっ…お前に聞きたいことが…あ…」
「ん?何だ?言ってみろよ」
「っ…あ…あの、この前…もっとレベルアップする方法が…あるって」
「ああ、あれか。そうだな、そろそろお前に教えても良いかもしれないな」
百八はそう言ってニヤリと笑うと、不意に晴人から体を離し、湯船の中に立ち上がった。立ち上る湯煙に紛れて、その逞しい肉体が浮かび上がる。
「晴人、誓約の力をさらに強めるには、俺にかけられた呪縛を解く必要がある」
「呪縛を…解く?」
「ああ、そうだ。俺の体にはカグラの野郎にかけられた呪縛が何重にもかかってる。それを解放できるのは、晴人——宿り主であるお前だけなんだ」
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晴人がそう尋ねると、百八は口元に笑みを浮かべ、晴人に向かって言った。
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