淫の陰陽師—式神と夜の契り—

よしの

文字の大きさ
33 / 38

第三十三話 湯の中の解放

しおりを挟む
 陰陽庁が手配した「宿」は想像を絶するものだった。
 晴人のような一般庶民にはまず縁がないであろう老舗の超高級旅館。さすがは国がバックについているだけはある。というか、鶴原の個人的な趣味も入っているような気もするが。

 巨大な石碑を思わせるその和風建築の中に入ると、女将と名乗る女性が、たくさんの仲居を引き連れて、三つ指をつき、豪奢なロビーで晴人たちを出迎えた。

「どうぞごゆるりとお寛ぎくださいませ」

 ——いやいや、逆に寛げないって…

 しかし、場違いな感覚を味わっている晴人をよそに、他のメンバーは慣れた様子で会釈をし、チェックインを済ませている。慌てて彼らの後を追い、晴人もフロントで部屋の鍵をもらう。

「では、明日9時にこの場所に集合して、今後のスケジュールについて話し合いましょう」

 全員がチェックインを済ませた後、レイの一言で解散となり、第4グループのメンバーは散り散りに各自の部屋へと向かって去っていった。
 晴人も、三毛猫姿の百八を肩に乗せて自分の部屋へと向かう。部屋、といってもそれぞれが離れのような個室になっており、他の客とは顔を合わせないよう、導線が工夫されている。

 ——こんなのどっかの社長が愛人連れて来るようなとこだろ。

 渡り廊下を歩きながらそんなことを考えていると、百八が晴人の耳元で囁いた。

「おい晴人、今夜は二人きりでたっぷり楽しめそうだな」

「たっぷりって…もう俺疲れて寝ちゃいそうだよ」

「またまたそんなこと言って、本当は期待してるくせに」

「なっ…俺が期待?何言って…」

「誓約の力はどんどん強くなるからな。まあやってみれば分かるぜ…勝手に体が反応するだろうから」

「あのなー、そういう下品なこと言ってるとマジで嫌いになるぞ」

 そうこうしているうちに、部屋に到着する。恐る恐る引き戸を開けると、予想以上に気品のある、純和風で統一された内装が晴人たちを出迎えた。一瞬、自分がどういう状況にあるかを忘れ、テンションが上がる。

「うわー…すげー部屋」

 部屋には内風呂がついており、ますます「社長と愛人感」が強まる。荷物を置いて、しばしその場に立ち尽くしていると、背後から、不意に逞しい腕が晴人の体を抱いた。いつの間にか人間の姿に戻った百八が、晴人の首筋に唇を這わせる。

「んっ…百八…こんな、いきなり」

「晴人、俺もう我慢できないんだ。頼むから早く、霊力を補給させてくれ」

 切実な声と濡れた舌が、耳朶を刺激する。まるで、晴人の性感帯を知り尽くしているようなその愛撫に、思わず熱のこもった吐息が漏れる。

「っあ…は…んっ」

「いいぞ、お前は相変わらず可愛い声で鳴くな」

 笑みを含んだ声でそう言うと、百八はあっという間に晴人の服を脱がせ、横向きに抱えたままずかずかと歩き出した。

「お、おい!どこ行くんだよ」

「決まってるだろ?風呂があるんだから、風呂に入るんだ」

 晴人の問いに答えながら、百八が離れと地続きになった透明な戸をガラリと開ける。すると、石造りの浴槽に花びらが浮かんでいるのが見えた。

 ——なんかいきなりラブホに来た気分…

 かぽん、とどこかから「ししおどし」の音が聴こえる。この雰囲気の中だと、そんな何気ない音色でさえ淫靡に響いてくるから不思議だ。

「さあ晴人、湯に浸かるぞ」

 百八はそう言うと、そっと大切なものを扱うように晴人を風呂に入れた。そして、自分も身につけていた白い着物を脱ぎ捨て、浴槽へ体を沈める。気がつくと、晴人は後ろから百八に抱き抱えられる形で、湯船の中に身を横たえていた。

「晴人、今日は俺大活躍だっただろ?だからたっぷり労ってくれよ」

「労うって…ん…っあ」

 百八の指が、晴人の両胸に咲いた蕾を優しく刺激する。思わず甘い声を漏らしてしまう自分が悔しい。

 ——これってマジで誓約の力なのか?それとも…俺本当に感じちゃってるのかな…

 湯の暖かさと、百八の体温が混ざり合い、晴人の体がどんどん熱を帯びていく。そのうちに、百八の手は晴人の最も繊細な部分に伸びていき、上下にゆっくりとそれを扱き始めた。

「ん…んあ…っは…んん!」

「そうだ、もっと感じてくれ、もっと俺に霊力をくれ。そうしたら、俺今よりずっと強くなってお前を守れるから」

 ——そ、そうだ、そう言えばこいつに聞かなきゃいけないことが…でも今は…なんか気持ちよすぎて…

 しばらくその快楽に身を委ねていると、百八がくるりと晴人の体を回転させた。自然と向き合って抱き合う姿勢になる。はっきり言ってかなり恥ずかしい体勢だ。

 ——これじゃまるで、マジで恋人同士みたいじゃんか…

 百八が、赤面している晴人の顔をじっと見つめながら、口づけをしてくる。唾液が混ざり合い、舌が絡み合う。その間も、百八の手は晴人の敏感な部分を刺激し続けている。

「ん…ふ…っん」

 快楽に意識が遠のいていくのを感じながら、晴人は必死に自制心を保とうと努める。

「びゃ…百八…俺…んっ…お前に聞きたいことが…あ…」

「ん?何だ?言ってみろよ」

「っ…あ…あの、この前…もっとレベルアップする方法が…あるって」

「ああ、あれか。そうだな、そろそろお前に教えても良いかもしれないな」

 百八はそう言ってニヤリと笑うと、不意に晴人から体を離し、湯船の中に立ち上がった。立ち上る湯煙に紛れて、その逞しい肉体が浮かび上がる。

「晴人、誓約の力をさらに強めるには、俺にかけられた呪縛を解く必要がある」

「呪縛を…解く?」

「ああ、そうだ。俺の体にはカグラの野郎にかけられた呪縛が何重にもかかってる。それを解放できるのは、晴人——宿り主であるお前だけなんだ」

「どう、すれば良いんだ」

 晴人がそう尋ねると、百八は口元に笑みを浮かべ、晴人に向かって言った。

「俺たちの精気を混ぜ合わせるんだ——」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

処理中です...