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第10話 返却のループ(前編)
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いくら昼が長いといっても、夏にも夜はやってくる。
仲良く二人で輝と陸が晩御飯の用意をしていたはずだが、いつの間にかリビングのソファーで眠ってしまったらしい。
「あっ。帰ってきたみたい。」
揺れるソファーの動きに眠りから覚めた優羽は、陸の声が向かう先を追いかけるように体を起こした。
「優羽、晶と戒が帰ってきたぞ。」
輝の手が髪を撫でながら通りすぎていく。
「あっ。」
ようやく意識が追い付いた優羽は、自身の恰好も忘れてパタパタと陸と輝の後を追いかける。
玄関の方向から歩いてくる面影には、見覚えがあった。
「お帰りなさい。」
笑顔で出迎えた優羽の姿に、不機嫌そうに顔をしかめていた二人の男が固まった。
後ろでクスクスと笑う輝と陸の姿に理由がわかるものの、目の前の優羽の姿に顔がゆるまずにはいられない。
「うわ、こんなに沢山。重たかったでしょ。持とうか?」
戒の抱える袋をみて手を伸ばした優羽は、渡される荷物の代わりに袋を床に置いた戒に引き寄せられる。
「可愛すぎます。」
「えっ?」
ギュっと強く抱き締められた身体に埋まる戒の感想に優羽は思い出した。
「あっ。」
そうだ。
数時間前の出来事がフラッシュバックのようによみがえってきた。勝手に部屋へ侵入して、勝手に服を拝借して、そこで別の男と愉(タノ)しんだ。自分が晶のコレクションのひとつであるらしい女子高生に扮していたことを思い出して、優羽はおそるおそる晶に顔をむける。
「ごめんなさい。これはっその───」
「よく似合ってるね。」
「───えっ?」
「可愛いよ。」
てっきり怒られると思っていただけに、優羽は戒の腕の中でパチパチとまばたきをする。
使用した経緯を話さなければならなかったらどうしようかと、無駄に早鐘を打っていた心臓が人知れずホッと息をはいた。
「怒ってないの?」
返事の代わりに頭を撫でてくる晶の笑顔になぜか悪寒が走ったが、たぶん気のせいだろう。
抱きついていた戒が、呆れにも似た息を耳元に吹きかける。
「優羽はバカですね。」
「ッ?!」
顔の真横で笑うなんてズルい!
そう叫びたかったが、顔を真っ赤にした優羽は、戒が離れていくのをただじっと見つめることしか出来なかった。
かっこよすぎて、心臓はいくつあっても足りない。
「ねー。ご飯食べよーよ。」
「ッ?!」
今度は背後から抱きついてきた陸に、優羽の肩はビクッと驚く。
「早く食べたい──」
「陸ッ…っ…ちょ」
「───でしょ?」
耳元で男の声に変わった陸の視線は、優羽を越えて晶にケンカを売るように鋭く笑っていた。
「優羽いこっ。」
「え、あ、うん。」
一瞬訪れた無言の沈黙に多少の違和感がわくものの、可愛く笑顔で手を引かれればうなずくしかない。
もちろん断るわけもなく、その場にいた全員が素直にそれに従った。
「飯、もう出来てるから。」
「それは助かります。花火大会だとかで、さすがに疲れました。」
「そんなに人多かったの?」
「この時間だと、もうけっこう渋滞していたよ。」
ぞろぞろとダイニングに入るなり、それぞれが席につくのにあわせて優羽も座る。
その姿を横目にとらえた戒が、嬉しそうに目を細めた。
「優羽は似合いますね。」
「ほんと?ちゃんと女子高生に見えるかな?」
「世界中探しても、これほど高校の制服が似合う女の子はいませんよ。」
それはいくらなんでもおおげさだと思うが悪い気はしない。照れながら戒にお礼を言った優羽は、いただきますと赤い顔で手を合わせる。
「あ。おいしい!」
「だろ。」
「美味しいもの食べると、庭仕事を強制労働させられた身体が癒されるよね。」
陸は相変わらず減らず口が絶えなかったが、それでも今日、太陽が照りつける中で仕事をこなしていたのは事実だ。
顔をひきつらせた輝の代わりに、優羽は苦笑の顔を陸にむけた。
「陸もお疲れ様。」
「優羽ほどじゃないよ。ねっ、輝?」
「だな。」
「うっ。」
ふたりの視線を誤魔化すように顔をそらした優羽は、記憶に残る淫乱な行為を洗い流すようにお茶を飲む。
「それで、大掃除は終わったんですか?」
うまく切り替えてくれた戒の言葉がありがたい。
「窓と玄関と廊下は終わったよ?」
自分の担当していた箇所は今日中に全部終わったと優羽はうなずいた。が、庭は陸、その他は輝が担当だったために全部まではわからない。
優羽の回答を受けて、陸と輝もそろって自分の担当場所の状況を報告する。
「僕も庭はなんとか終わらしたよ。あとは倉庫と駐車場と外壁とプールと───」
「どんだけ残ってんだよ。」
「───ちょっとひどくない?!うちの庭どれだけ広いと思ってんの?!」
「俺は作業場だけだな。」
朝から掃除に徹していただけあって、陸の批判を受け流した輝の仕事の早さには感心する。
その前で庭を掃除していた陸は明日も引き続きだとほほを膨らませていた。
「こんなんじゃ、全然勉強が出来ないじゃん。」
「私がかわるよ?」
さすがに夏休みの宿題を陸に残させるわけにはいかない。
それに熱中症も心配だし、二日続けて炎天下の中を掃除させるのは心苦しいと優羽は名乗りを上げた。
しかし、すぐに否定される。
「それは無理でしょうね。」
「どうして?」
理由も言わずに否定だけを口にした戒に、少しムッとした顔で優羽は答えた。
「大丈夫だよ。私が一番適任だと思うし、みんなは忙しいでしょ?」
「そうだね。」
言葉尻りをかぶせるくらい即答だったことには驚いたが、晶の笑顔に優羽も笑顔が戻る。
「うん、まかせて。」
嬉しそうに食事を再開させる優羽に、なんとも言えない視線が降り注いでいた。
「また安請け合いしちまって、ほんと飽きねぇな。な?」
「そこが可愛いんじゃないですか。」
「僕知らないよ。やらないからね。」
「本人がしたがってるんだから、いいんじゃないですか?」
出来なければ、それはそれでいい。
言い口実ができるだけのこと。
「え?なに?」
ジーっと食事の手を止めて見つめてくる輝と戒と陸の視線に気付いた優羽は、不思議そうに首を傾けた。
掃除を心配されているのかと思ったが、それとは少し違うらしい。けれど、誤魔化すように食事を再開し始めた彼らに、優羽も気のせいだったかと再び箸を動かしはじめる。
「夏も終わりかぁ。」
食事を終えた優羽は、感慨深そうにため息をこぼす。
春と夏。あっという間に通りすぎたふたつめの季節も終わりを迎えていた。
時間が過ぎていくのが名残惜しい。
「あっ、花火大会って───」
「「「「いかない。」」」」
その容姿のせいだろう。
人ごみが"超"の上をいくほど大嫌いな彼らがそろって言葉を合わせたせいで、優羽はおかしそうに噴き出した。
「───言ってみただけ。でも、屋台は行きたかったなぁ。」
「そっちかよ。」
「優羽、まだ食べるの?」
輝と陸の相槌に、今度は優羽に笑い声がかかる。もぉっと、怒ったふりをしながらも優羽は笑っていた。
楽しくて、温かくて、とても懐かしい。
「え?」
違和感を感じて、優羽は辺りを見渡す。誰もおかしなところはない。それもそうかと、胸に手を当てて首をかしげる優羽が再び顔をむけると、ちょうど目の前の晶の視線とぶつかった。
「ん?」
優羽の視線に気づいた晶も同じように首をかしげてきたので、優羽は慌てて首を振りながらなんでもないと付け加えた。
「ごちそうさまでした。」
おなかいっぱいだと手を合わせた優羽にならって、食事を終えたらしい彼らもそろって手を合わせる。
「後片付けはしましょう。」
珍しく戒が率先して席をたった。
「あ、私も手伝っ───」
「輝にちゃんと返したんですか?」
「────う。」
同じお皿へ手を伸ばしたときに近づいた顔が赤く染まる。
聞こえるか聞こえないか位の距離にいる兄弟たちの姿を想像して、優羽は耳元で囁かれた戒のイタズラに言葉をつまらせた。
返せたと言ってもいいのか、一抹の疑問が残るが、手元にはもうない。
「もっもちろん!」
変な裏声で返事をした優羽に視線だけを走らせて戒はゆるく笑った。
「次はその制服を晶に返すんですか?」
「ッ?!」
妬けますね。と、唇の動きだけで伝わる戒の熱に体まで赤く染まる。
結果、優羽は席を立ったまま何もできずに食器を持って立ち去る戒を見送ることしか出来なかった。
その一部始終を眺めていた輝が、テーブルに頬をつきながらクスクスと笑う。
「風呂でも入ってこいよ。」
「え?」
顔を赤くしたまま戒の背中を見つめていた優羽は、その言葉の意味を反芻するように輝へと体をひねる。
「そうそう、片付けなんて僕らに任せて、優羽はお風呂に入っておいでよ。汗かいちゃったでしょ?」
「ッ?!」
追い討ちをかけるように輝の向かいで片目をつぶってみせた陸の言葉に、優羽は素直に従う他なかった。
窓の外を夏の星座が淡い光を放ちながらきらめいている。
お風呂あがりの身体は快適な室内環境に心地よさを感じているが、窓を開けるときっと独特の蒸し暑さが肌にまとわりつくだろう。
歩く廊下の先を見つめながら優羽は、外の黒と内壁の白の間で、灰色の気持ちを吐き出した。
「このまま返したくない。」
はぁっと、廊下に優羽のため息が流れていく。
手にかかえているのは、もちろん制服。
「輝と陸のバカ。」
小さな声で涙ながらに訴える相手は廊下にはいない。
就寝間近なうえに、夜がすべての音を消し去っていた。
「なんか、こわい。」
いくら灯りがともるとはいえ、掃除したばかりのだだっ広い家の中は妙にシンとしていて不気味に感じてしまう。
夏の怪談とまではいかなくても、人気(ヒトケ)のないこの屋敷は無駄に広い造りなために薄暗い部分も少しは存在する。
「洗濯の仕方もわかんないし。」
クリーニングに出したくても理由を上手く伝えることが出来ないし、晶の私物を勝手にクリーニングに出すわけにもいかなかった。
お風呂をあがり、一度は自室に持ち帰ったものの、悩んだ末、とりあえず直接会って返してしまおうと部屋を飛び出して今にいたる。
「どうか寝てますように。」
階段をおりて廊下を歩き、晶の部屋の前にたどり着いた優羽は矛盾する心境を祈る。
心拍が半端じゃなかった。
どうして自分がこんな目にと思いながらも、自分が着てみたかったことも事実だから誰も責められない。
ドアをノックしてみる。
数秒が何倍にも感じ、制服を抱きしめる腕に力がこもった。が、返事はない。
「あれ?」
本当に寝ているのかもしれないと、内心ホッと胸をなでおろしながら確認のために優羽は晶の部屋をそっと覗き込んだ。
「いらっしゃい。」
「ッ!!?」
おそるおそる開けたドアに後悔する。
「勝手に覗くなんていけない子だね。」
悲鳴をあげかけて一歩後ずさった優羽の体は、なぜか上半身裸の晶に引っ張られて部屋へと勢いよく吸い込まれる。
悲しいことに、背後でパタンと出口の扉は音をたてて閉まった。
「………。」
目の前で笑顔のまま無言の晶に何故か悪寒が走る。
その視線を誤魔化すように晶の顔から体へと目線を動かした優羽は、すぐに顔を真っ赤にして狼狽した。
シャワーでも浴びていたのか、かすかに熱を感じる裸体に思わずのどを鳴らしてしまったのはどうにもならない。
「っ。」
色々な心境が折り重なって、慌てて背をむけながら優羽は謝る。
「ごっごごごごめんなさい。」
「なにが?」
「えっ!?」
なにがと聞かれても、いま頭を占めていることの全部が理由に当てはまるためにうまく答えられない。そのほとんどが欲情に支配された淫乱な妄想だったとしても、晶に悟られたくはない。
口から言葉の代わりに心臓が飛び出しそうだった。
「別に初めて見るわけでもないのに。」
自分で開けることも出来るはずの扉に隠れるように突進する優羽の背後で晶はくすりと笑う。
その微笑むような優しい低音に、優羽の耳は誰が見てもわかるほど真っ赤に染まっていた。
「それで、優羽は何をしにきたのかな?」
「あッ!!?」
「おいで。」
背中から近寄ってきた晶の声が、耳を甘噛みして遠ざかっていく。
部屋に足を踏み入れた以上、どうすることも出来ずに優羽はうつむいたまま晶のもとに向かった。極力見ないようにするつもりだったのに、どうやら本当に風呂上がりらしい晶の色気に神経が持っていかれる。
「キャッ────」
晶について歩いていた優羽は、突然グイッと引っ張られてベッドの上に引きずりこまれた。
思わず放してしまった腕の中から、返そうと思っていた制服が散乱する。
「───ッ!?」
有無を言わさず唇を重ねられて、優羽は目を見開いた。
じかに触れる晶のキメ細やかな肌が、身体に妙な気を起こさせていく。
「ん…あっ……あき──痛ッ!?」
流れに身をまかせようとしていた優羽の瞳は、突如走った唇の痛みに驚いてギュッときつく閉じる。それと同時に優羽は晶を強く突き飛ばしていた。
押さえた唇からは赤く血がにじんでいる。
「なにすッ……」
痛みを与えられたことに文句を言おうと顔を上げた所で、優羽は言葉を失った。
「……やッ……」
そんな目で見ないでほしいと思う。
優羽の唇を噛んだ歯を舌でなぞりながら見つめてくる晶に、ぞくぞくと背筋が泡立った。
直視など出来ずに口を押さえたまま顔をそらした優羽の目の前で、晶は口角を上げる。
「どうして噛まれたかわかる?」
どこからそんな声がでてくるのだろうと思うほどに、晶の声は甘く頭をしびれさせてくる。
「みせて。」
「あっ…や…ッ?!」
抵抗の色を見せる顔を強制的に向けさせられて、無理やり舌で唇を割られる。
痛みが快感にかわる手前で、晶の瞳が優羽を深く覗き込んだ。
下唇がジンジンする。
ぴりぴりとした痛みと少しの血の味が神経を敏感にさせる。
「わかる?」
わざとらしく自身が噛んだ場所を吸い上げる晶に、優羽の視界はにじむ。
先程と同じ質問を繰り返し尋ねられても、叱られる恐怖に慣れない身体が小刻みに震え始めただけで、優羽は逃げられないように晶の両手につかまれた顔を悔しそうにゆがめた。
「怒ってないって痛ッ?!」
どこからどう見ても怒っている晶の雰囲気に、夕飯の時に言っていたことと違うと反論しようと思ったのがいけない。
強引に開いた口をまたふさがれた優羽は、いじめるように集中してえぐられた傷跡に今度こそ涙を浮かべて悲鳴をあげる。それでも晶に許してもらえない唇は、形を変えて鉄分を溶かしていった。
「んっ…ッ…~はっ」
逃げられないように固定された視界に、食べるように噛みつく晶の顔が角度を変えて何度も写り混む。
無理矢理犯されているような錯覚にくらくらと目眩がし、酸素を求めてあえぐ口に晶の熱い吐息と舌がねじこまれるせいで、意識が朦朧としてきた。
唇に残る痛みが、より強く身体にキスの快感を伝えてくる。
「素直に謝れない悪い子には、お仕置きが必要かな?」
「ヤッ!」
息を吐き出すと同時に拒否を口にした優羽は、さっき噛んだことでチャラにするべきだと晶をにらむ。
まだジンジンと痛む唇に涙を浮かべながら正論を口にしたはずなのに、何故か晶は無言で小さくため息をこぼした。
あくまで優羽が全部悪いらしい。
反論を否定された優羽は、謝るタイミングを逃したまま晶が離れるのを黙って見つめる。
「……あっ。」
散乱した制服のひとつを手に取った晶に、優羽の顔が青ざめる。
そのスカートには、あきらかな情事のあとが残っていた。
「これの共犯者は、輝かな?陸かな?」
謝ろうとしても、もう遅い。
晶は怒ると笑顔になるのだと、今更ながらに気づいた優羽はゴクリとのどを鳴らした。
「それとも両方かな?」
真っ赤になったまま視線をそらした優羽の姿に、晶の瞳が怪しく光る。
「それじゃあ、俺も優羽にこれを着てもらおうかな?」
「え?」
どこから取り出したのかわからない獣の耳が、優羽の頭に取りつけられた。
自分の頭についたモフモフとした柔らかな感触を確認するように、優羽はそっと頭に手をやる。
「はい、手をグーにして。」
「え?」
言われるままに優羽は頭の上にある耳から晶に手を差し出すと、その手のひらは丸い手袋にすっぽりと包まれた。
ふわふわと柔らかな素材のようにみえて、中は革製なのか手をひろげることが出来ない。
「い…ぬ…?」
なぜか足にも同様のものをとりつけられて、優羽は首をかしげる。
あの大量にあったコスプレの中から"お仕置き用"に選ばれたとしては、案外普通だと思った。が、晶はそんなに甘くない。
「そう。これはね、狼。」
「おおかみ?」
「人間の言葉は喋っちゃダメだよ。」
よしよしと、しつけるように頭をなでる晶がなぜか優しい。
これくらいで晶の機嫌が直るなら安いものだと、優羽はされるがまま大人しくしていた。
「もしも人間の言葉を話したら、痛くするからね。」
晶の笑みにビクッと固まった優羽は、唇に走った痛みを思い出してコクコクとうなずく。
その首がチリンチリンと鈴の音を奏でたことに気づいて、優羽は息をのんだ。
「これッ!?」
「ん?」
誤魔化すように曖昧な笑顔を浮かべた優羽の首には、"あの時"の首輪が付けられていた。
どうして晶が持っているのか尋ねたくても、質問することを禁じられた優羽にその術はない。
「これは、優羽から陸に返すんだよ。」
「えっ!?」
「嫌ならずっとつけといてもいいけど?」
どっちもイヤだと首を振ったが、動かすたびに音を出す首輪のせいで恥ずかしさが募ってきた。
鈴の音は、忘れたくても身体に快楽を思い出させる。ついにはピタリと動かなくなった優羽に、晶は満足そうにほほ笑んだ。
「優羽は本当に可愛いね。」
「……っ……」
「急に大人しくなったけど、どこか具合でも悪くなったかな?」
音をたててベッドがきしむと同時に、優羽は晶の膝の上にうつぶせで引き寄せられていた。これでは晶に飼われるペットのようだと、眼前に見えるシーツを見つめながら思う。
「ヒぁッ!?」
優羽の背中を撫でていた晶の腕が、優羽の下着をパジャマごと引きずり下ろした。
仲良く二人で輝と陸が晩御飯の用意をしていたはずだが、いつの間にかリビングのソファーで眠ってしまったらしい。
「あっ。帰ってきたみたい。」
揺れるソファーの動きに眠りから覚めた優羽は、陸の声が向かう先を追いかけるように体を起こした。
「優羽、晶と戒が帰ってきたぞ。」
輝の手が髪を撫でながら通りすぎていく。
「あっ。」
ようやく意識が追い付いた優羽は、自身の恰好も忘れてパタパタと陸と輝の後を追いかける。
玄関の方向から歩いてくる面影には、見覚えがあった。
「お帰りなさい。」
笑顔で出迎えた優羽の姿に、不機嫌そうに顔をしかめていた二人の男が固まった。
後ろでクスクスと笑う輝と陸の姿に理由がわかるものの、目の前の優羽の姿に顔がゆるまずにはいられない。
「うわ、こんなに沢山。重たかったでしょ。持とうか?」
戒の抱える袋をみて手を伸ばした優羽は、渡される荷物の代わりに袋を床に置いた戒に引き寄せられる。
「可愛すぎます。」
「えっ?」
ギュっと強く抱き締められた身体に埋まる戒の感想に優羽は思い出した。
「あっ。」
そうだ。
数時間前の出来事がフラッシュバックのようによみがえってきた。勝手に部屋へ侵入して、勝手に服を拝借して、そこで別の男と愉(タノ)しんだ。自分が晶のコレクションのひとつであるらしい女子高生に扮していたことを思い出して、優羽はおそるおそる晶に顔をむける。
「ごめんなさい。これはっその───」
「よく似合ってるね。」
「───えっ?」
「可愛いよ。」
てっきり怒られると思っていただけに、優羽は戒の腕の中でパチパチとまばたきをする。
使用した経緯を話さなければならなかったらどうしようかと、無駄に早鐘を打っていた心臓が人知れずホッと息をはいた。
「怒ってないの?」
返事の代わりに頭を撫でてくる晶の笑顔になぜか悪寒が走ったが、たぶん気のせいだろう。
抱きついていた戒が、呆れにも似た息を耳元に吹きかける。
「優羽はバカですね。」
「ッ?!」
顔の真横で笑うなんてズルい!
そう叫びたかったが、顔を真っ赤にした優羽は、戒が離れていくのをただじっと見つめることしか出来なかった。
かっこよすぎて、心臓はいくつあっても足りない。
「ねー。ご飯食べよーよ。」
「ッ?!」
今度は背後から抱きついてきた陸に、優羽の肩はビクッと驚く。
「早く食べたい──」
「陸ッ…っ…ちょ」
「───でしょ?」
耳元で男の声に変わった陸の視線は、優羽を越えて晶にケンカを売るように鋭く笑っていた。
「優羽いこっ。」
「え、あ、うん。」
一瞬訪れた無言の沈黙に多少の違和感がわくものの、可愛く笑顔で手を引かれればうなずくしかない。
もちろん断るわけもなく、その場にいた全員が素直にそれに従った。
「飯、もう出来てるから。」
「それは助かります。花火大会だとかで、さすがに疲れました。」
「そんなに人多かったの?」
「この時間だと、もうけっこう渋滞していたよ。」
ぞろぞろとダイニングに入るなり、それぞれが席につくのにあわせて優羽も座る。
その姿を横目にとらえた戒が、嬉しそうに目を細めた。
「優羽は似合いますね。」
「ほんと?ちゃんと女子高生に見えるかな?」
「世界中探しても、これほど高校の制服が似合う女の子はいませんよ。」
それはいくらなんでもおおげさだと思うが悪い気はしない。照れながら戒にお礼を言った優羽は、いただきますと赤い顔で手を合わせる。
「あ。おいしい!」
「だろ。」
「美味しいもの食べると、庭仕事を強制労働させられた身体が癒されるよね。」
陸は相変わらず減らず口が絶えなかったが、それでも今日、太陽が照りつける中で仕事をこなしていたのは事実だ。
顔をひきつらせた輝の代わりに、優羽は苦笑の顔を陸にむけた。
「陸もお疲れ様。」
「優羽ほどじゃないよ。ねっ、輝?」
「だな。」
「うっ。」
ふたりの視線を誤魔化すように顔をそらした優羽は、記憶に残る淫乱な行為を洗い流すようにお茶を飲む。
「それで、大掃除は終わったんですか?」
うまく切り替えてくれた戒の言葉がありがたい。
「窓と玄関と廊下は終わったよ?」
自分の担当していた箇所は今日中に全部終わったと優羽はうなずいた。が、庭は陸、その他は輝が担当だったために全部まではわからない。
優羽の回答を受けて、陸と輝もそろって自分の担当場所の状況を報告する。
「僕も庭はなんとか終わらしたよ。あとは倉庫と駐車場と外壁とプールと───」
「どんだけ残ってんだよ。」
「───ちょっとひどくない?!うちの庭どれだけ広いと思ってんの?!」
「俺は作業場だけだな。」
朝から掃除に徹していただけあって、陸の批判を受け流した輝の仕事の早さには感心する。
その前で庭を掃除していた陸は明日も引き続きだとほほを膨らませていた。
「こんなんじゃ、全然勉強が出来ないじゃん。」
「私がかわるよ?」
さすがに夏休みの宿題を陸に残させるわけにはいかない。
それに熱中症も心配だし、二日続けて炎天下の中を掃除させるのは心苦しいと優羽は名乗りを上げた。
しかし、すぐに否定される。
「それは無理でしょうね。」
「どうして?」
理由も言わずに否定だけを口にした戒に、少しムッとした顔で優羽は答えた。
「大丈夫だよ。私が一番適任だと思うし、みんなは忙しいでしょ?」
「そうだね。」
言葉尻りをかぶせるくらい即答だったことには驚いたが、晶の笑顔に優羽も笑顔が戻る。
「うん、まかせて。」
嬉しそうに食事を再開させる優羽に、なんとも言えない視線が降り注いでいた。
「また安請け合いしちまって、ほんと飽きねぇな。な?」
「そこが可愛いんじゃないですか。」
「僕知らないよ。やらないからね。」
「本人がしたがってるんだから、いいんじゃないですか?」
出来なければ、それはそれでいい。
言い口実ができるだけのこと。
「え?なに?」
ジーっと食事の手を止めて見つめてくる輝と戒と陸の視線に気付いた優羽は、不思議そうに首を傾けた。
掃除を心配されているのかと思ったが、それとは少し違うらしい。けれど、誤魔化すように食事を再開し始めた彼らに、優羽も気のせいだったかと再び箸を動かしはじめる。
「夏も終わりかぁ。」
食事を終えた優羽は、感慨深そうにため息をこぼす。
春と夏。あっという間に通りすぎたふたつめの季節も終わりを迎えていた。
時間が過ぎていくのが名残惜しい。
「あっ、花火大会って───」
「「「「いかない。」」」」
その容姿のせいだろう。
人ごみが"超"の上をいくほど大嫌いな彼らがそろって言葉を合わせたせいで、優羽はおかしそうに噴き出した。
「───言ってみただけ。でも、屋台は行きたかったなぁ。」
「そっちかよ。」
「優羽、まだ食べるの?」
輝と陸の相槌に、今度は優羽に笑い声がかかる。もぉっと、怒ったふりをしながらも優羽は笑っていた。
楽しくて、温かくて、とても懐かしい。
「え?」
違和感を感じて、優羽は辺りを見渡す。誰もおかしなところはない。それもそうかと、胸に手を当てて首をかしげる優羽が再び顔をむけると、ちょうど目の前の晶の視線とぶつかった。
「ん?」
優羽の視線に気づいた晶も同じように首をかしげてきたので、優羽は慌てて首を振りながらなんでもないと付け加えた。
「ごちそうさまでした。」
おなかいっぱいだと手を合わせた優羽にならって、食事を終えたらしい彼らもそろって手を合わせる。
「後片付けはしましょう。」
珍しく戒が率先して席をたった。
「あ、私も手伝っ───」
「輝にちゃんと返したんですか?」
「────う。」
同じお皿へ手を伸ばしたときに近づいた顔が赤く染まる。
聞こえるか聞こえないか位の距離にいる兄弟たちの姿を想像して、優羽は耳元で囁かれた戒のイタズラに言葉をつまらせた。
返せたと言ってもいいのか、一抹の疑問が残るが、手元にはもうない。
「もっもちろん!」
変な裏声で返事をした優羽に視線だけを走らせて戒はゆるく笑った。
「次はその制服を晶に返すんですか?」
「ッ?!」
妬けますね。と、唇の動きだけで伝わる戒の熱に体まで赤く染まる。
結果、優羽は席を立ったまま何もできずに食器を持って立ち去る戒を見送ることしか出来なかった。
その一部始終を眺めていた輝が、テーブルに頬をつきながらクスクスと笑う。
「風呂でも入ってこいよ。」
「え?」
顔を赤くしたまま戒の背中を見つめていた優羽は、その言葉の意味を反芻するように輝へと体をひねる。
「そうそう、片付けなんて僕らに任せて、優羽はお風呂に入っておいでよ。汗かいちゃったでしょ?」
「ッ?!」
追い討ちをかけるように輝の向かいで片目をつぶってみせた陸の言葉に、優羽は素直に従う他なかった。
窓の外を夏の星座が淡い光を放ちながらきらめいている。
お風呂あがりの身体は快適な室内環境に心地よさを感じているが、窓を開けるときっと独特の蒸し暑さが肌にまとわりつくだろう。
歩く廊下の先を見つめながら優羽は、外の黒と内壁の白の間で、灰色の気持ちを吐き出した。
「このまま返したくない。」
はぁっと、廊下に優羽のため息が流れていく。
手にかかえているのは、もちろん制服。
「輝と陸のバカ。」
小さな声で涙ながらに訴える相手は廊下にはいない。
就寝間近なうえに、夜がすべての音を消し去っていた。
「なんか、こわい。」
いくら灯りがともるとはいえ、掃除したばかりのだだっ広い家の中は妙にシンとしていて不気味に感じてしまう。
夏の怪談とまではいかなくても、人気(ヒトケ)のないこの屋敷は無駄に広い造りなために薄暗い部分も少しは存在する。
「洗濯の仕方もわかんないし。」
クリーニングに出したくても理由を上手く伝えることが出来ないし、晶の私物を勝手にクリーニングに出すわけにもいかなかった。
お風呂をあがり、一度は自室に持ち帰ったものの、悩んだ末、とりあえず直接会って返してしまおうと部屋を飛び出して今にいたる。
「どうか寝てますように。」
階段をおりて廊下を歩き、晶の部屋の前にたどり着いた優羽は矛盾する心境を祈る。
心拍が半端じゃなかった。
どうして自分がこんな目にと思いながらも、自分が着てみたかったことも事実だから誰も責められない。
ドアをノックしてみる。
数秒が何倍にも感じ、制服を抱きしめる腕に力がこもった。が、返事はない。
「あれ?」
本当に寝ているのかもしれないと、内心ホッと胸をなでおろしながら確認のために優羽は晶の部屋をそっと覗き込んだ。
「いらっしゃい。」
「ッ!!?」
おそるおそる開けたドアに後悔する。
「勝手に覗くなんていけない子だね。」
悲鳴をあげかけて一歩後ずさった優羽の体は、なぜか上半身裸の晶に引っ張られて部屋へと勢いよく吸い込まれる。
悲しいことに、背後でパタンと出口の扉は音をたてて閉まった。
「………。」
目の前で笑顔のまま無言の晶に何故か悪寒が走る。
その視線を誤魔化すように晶の顔から体へと目線を動かした優羽は、すぐに顔を真っ赤にして狼狽した。
シャワーでも浴びていたのか、かすかに熱を感じる裸体に思わずのどを鳴らしてしまったのはどうにもならない。
「っ。」
色々な心境が折り重なって、慌てて背をむけながら優羽は謝る。
「ごっごごごごめんなさい。」
「なにが?」
「えっ!?」
なにがと聞かれても、いま頭を占めていることの全部が理由に当てはまるためにうまく答えられない。そのほとんどが欲情に支配された淫乱な妄想だったとしても、晶に悟られたくはない。
口から言葉の代わりに心臓が飛び出しそうだった。
「別に初めて見るわけでもないのに。」
自分で開けることも出来るはずの扉に隠れるように突進する優羽の背後で晶はくすりと笑う。
その微笑むような優しい低音に、優羽の耳は誰が見てもわかるほど真っ赤に染まっていた。
「それで、優羽は何をしにきたのかな?」
「あッ!!?」
「おいで。」
背中から近寄ってきた晶の声が、耳を甘噛みして遠ざかっていく。
部屋に足を踏み入れた以上、どうすることも出来ずに優羽はうつむいたまま晶のもとに向かった。極力見ないようにするつもりだったのに、どうやら本当に風呂上がりらしい晶の色気に神経が持っていかれる。
「キャッ────」
晶について歩いていた優羽は、突然グイッと引っ張られてベッドの上に引きずりこまれた。
思わず放してしまった腕の中から、返そうと思っていた制服が散乱する。
「───ッ!?」
有無を言わさず唇を重ねられて、優羽は目を見開いた。
じかに触れる晶のキメ細やかな肌が、身体に妙な気を起こさせていく。
「ん…あっ……あき──痛ッ!?」
流れに身をまかせようとしていた優羽の瞳は、突如走った唇の痛みに驚いてギュッときつく閉じる。それと同時に優羽は晶を強く突き飛ばしていた。
押さえた唇からは赤く血がにじんでいる。
「なにすッ……」
痛みを与えられたことに文句を言おうと顔を上げた所で、優羽は言葉を失った。
「……やッ……」
そんな目で見ないでほしいと思う。
優羽の唇を噛んだ歯を舌でなぞりながら見つめてくる晶に、ぞくぞくと背筋が泡立った。
直視など出来ずに口を押さえたまま顔をそらした優羽の目の前で、晶は口角を上げる。
「どうして噛まれたかわかる?」
どこからそんな声がでてくるのだろうと思うほどに、晶の声は甘く頭をしびれさせてくる。
「みせて。」
「あっ…や…ッ?!」
抵抗の色を見せる顔を強制的に向けさせられて、無理やり舌で唇を割られる。
痛みが快感にかわる手前で、晶の瞳が優羽を深く覗き込んだ。
下唇がジンジンする。
ぴりぴりとした痛みと少しの血の味が神経を敏感にさせる。
「わかる?」
わざとらしく自身が噛んだ場所を吸い上げる晶に、優羽の視界はにじむ。
先程と同じ質問を繰り返し尋ねられても、叱られる恐怖に慣れない身体が小刻みに震え始めただけで、優羽は逃げられないように晶の両手につかまれた顔を悔しそうにゆがめた。
「怒ってないって痛ッ?!」
どこからどう見ても怒っている晶の雰囲気に、夕飯の時に言っていたことと違うと反論しようと思ったのがいけない。
強引に開いた口をまたふさがれた優羽は、いじめるように集中してえぐられた傷跡に今度こそ涙を浮かべて悲鳴をあげる。それでも晶に許してもらえない唇は、形を変えて鉄分を溶かしていった。
「んっ…ッ…~はっ」
逃げられないように固定された視界に、食べるように噛みつく晶の顔が角度を変えて何度も写り混む。
無理矢理犯されているような錯覚にくらくらと目眩がし、酸素を求めてあえぐ口に晶の熱い吐息と舌がねじこまれるせいで、意識が朦朧としてきた。
唇に残る痛みが、より強く身体にキスの快感を伝えてくる。
「素直に謝れない悪い子には、お仕置きが必要かな?」
「ヤッ!」
息を吐き出すと同時に拒否を口にした優羽は、さっき噛んだことでチャラにするべきだと晶をにらむ。
まだジンジンと痛む唇に涙を浮かべながら正論を口にしたはずなのに、何故か晶は無言で小さくため息をこぼした。
あくまで優羽が全部悪いらしい。
反論を否定された優羽は、謝るタイミングを逃したまま晶が離れるのを黙って見つめる。
「……あっ。」
散乱した制服のひとつを手に取った晶に、優羽の顔が青ざめる。
そのスカートには、あきらかな情事のあとが残っていた。
「これの共犯者は、輝かな?陸かな?」
謝ろうとしても、もう遅い。
晶は怒ると笑顔になるのだと、今更ながらに気づいた優羽はゴクリとのどを鳴らした。
「それとも両方かな?」
真っ赤になったまま視線をそらした優羽の姿に、晶の瞳が怪しく光る。
「それじゃあ、俺も優羽にこれを着てもらおうかな?」
「え?」
どこから取り出したのかわからない獣の耳が、優羽の頭に取りつけられた。
自分の頭についたモフモフとした柔らかな感触を確認するように、優羽はそっと頭に手をやる。
「はい、手をグーにして。」
「え?」
言われるままに優羽は頭の上にある耳から晶に手を差し出すと、その手のひらは丸い手袋にすっぽりと包まれた。
ふわふわと柔らかな素材のようにみえて、中は革製なのか手をひろげることが出来ない。
「い…ぬ…?」
なぜか足にも同様のものをとりつけられて、優羽は首をかしげる。
あの大量にあったコスプレの中から"お仕置き用"に選ばれたとしては、案外普通だと思った。が、晶はそんなに甘くない。
「そう。これはね、狼。」
「おおかみ?」
「人間の言葉は喋っちゃダメだよ。」
よしよしと、しつけるように頭をなでる晶がなぜか優しい。
これくらいで晶の機嫌が直るなら安いものだと、優羽はされるがまま大人しくしていた。
「もしも人間の言葉を話したら、痛くするからね。」
晶の笑みにビクッと固まった優羽は、唇に走った痛みを思い出してコクコクとうなずく。
その首がチリンチリンと鈴の音を奏でたことに気づいて、優羽は息をのんだ。
「これッ!?」
「ん?」
誤魔化すように曖昧な笑顔を浮かべた優羽の首には、"あの時"の首輪が付けられていた。
どうして晶が持っているのか尋ねたくても、質問することを禁じられた優羽にその術はない。
「これは、優羽から陸に返すんだよ。」
「えっ!?」
「嫌ならずっとつけといてもいいけど?」
どっちもイヤだと首を振ったが、動かすたびに音を出す首輪のせいで恥ずかしさが募ってきた。
鈴の音は、忘れたくても身体に快楽を思い出させる。ついにはピタリと動かなくなった優羽に、晶は満足そうにほほ笑んだ。
「優羽は本当に可愛いね。」
「……っ……」
「急に大人しくなったけど、どこか具合でも悪くなったかな?」
音をたててベッドがきしむと同時に、優羽は晶の膝の上にうつぶせで引き寄せられていた。これでは晶に飼われるペットのようだと、眼前に見えるシーツを見つめながら思う。
「ヒぁッ!?」
優羽の背中を撫でていた晶の腕が、優羽の下着をパジャマごと引きずり下ろした。
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