【R18】タブーレプリカ

皐月うしこ

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第4章:魔女とデファイ

【幕間】白塔に隠す業

顔が異形頭でなければ、もっとわかりやすかっただろう。


「ああいう人種は孕ませる数が多いのだったか?」

「美味しい女の子をたくさん作ってくれるなら文句はないよ」

「メスよりオスだろ。?みごたえは大事だ」

「どちらにせよ。不要ならまた森に放つでしょう」

「そうじ、たいへん」


五人がぶつくさと吐き出すのを横目に、ダイスは空中で広げていた駒を盤上ごと黒いもやで消す。
進境は予想通り動いているのだから、わざわざ見比べるまでもない。


「砂は流れ、賽は転がり始めた。駒の行く先は決まっている」


焼けた村は黒煙をくゆらせる。
焦げた匂いは塵を方々に散らし、虐殺と弾圧の痕を残すだけ。そうして、焦土から生まれる瘴気は、自然発生するものよりも濃厚で濃密で、どろりとして、毒性が強い。
まともに呼吸することさえも難しい。
クレドコンパスの中心へ向かうほど、それは当然のことなのだが、これは人工的なもの。
近年、獰猛で凶悪なデファイが増えているのは、自分たちの罪に対する罰であることを人間は理解しているのか。
ともあれ、火を放ってしまったものは仕方がない。風に乗り、瘴気は範囲を広げていく。


「本当に愚かな生き物ですね」


宣言したダイスの言葉をランタンは鼻で笑う。
その言葉が何を意味するのか。
六賢人の瞳には何が映っているのか。
森を焼く人間にはわからない。
森を焼かせた人間が、わかるはずもない。
高みの見物を決めこんで、望みを得ようとする上位階級の人間たちは、六賢人に観察されていることすら知りはしないだろう。
実際、彼らは別のことで忙しい。


「………っ…ぁ」


黒いローブの群れに囲まれた全裸の少女。無惨に開かれた股には大人のオスが深々と突き刺さり、何度も激しく出入りしている。
これは初めての夜ではない。
入れ替わり、立ち代り、腐敗した組織の者たちは大義名分を口にして自らの欲望を満たすだけ。


「これは乙女の救済。デファイの手に堕ちないように、デファイの誘惑に負けないように、デファイに喰われて魔女とならないようにするための崇高な儀式なのだ」

「ッ、ぅ……ぁ……ァッ、あ」

「美しい娘ほどデファイは好む。六賢人に見染められて王を孕む器となりたくなければ、聖なる者の力をその身で受け止めよ」


これは魔女の烙印を押されたものに施される拷問ではない。
彼女、いや、彼女たちは聖女アヴァルを信仰する善良な信徒であり、テンバス協会の管理する修道院で育った少女たちである。
激しく打ち付けられていた腰の動きが止まって、押しつぶされた少女の体内にそれは最後の一滴まで注がれる。最初こそ抵抗していた少女たちも、回数を増すごとに大人しくなり、従順に受け入れるようになる。


「こらこら、逃げてどうする。デファイに食われたいのか?」

「そうだ、腰を落としなさい」

「そちらはまだイキがいいな。こちらは収穫状態に落ちたぞ。あと二日ほどしか楽しめん身体だと思うと名残惜しい」

「毎度のことだ。次のアヴァルネルトスは期待できるか?」

「ええ。次のリンゴも上々の出来ですよ」

「それは楽しみだ」

「聖女に捧げる神聖な儀式のためとはいえ、六年育てたリンゴの収穫には骨が折れる」

「また育てればいい。腐り落ちては意味がないぞ」


苦悶で喘ぐ娘たちを眺めながら、各々に腰を振るう。玩具を埋め込まれた身体、縄で吊るされた身体、複数の肉体に挟まれた身体はどれも、乙女として生きていた面影をなくし、与えられる律動に浸っている。
時折、悲鳴ともいえる声が聞こえてくるが、それを気にとめるものはひとりもいない。
どうせ、すぐにそれも変わる。
六年毎に入れ替わるリンゴを味わう特権を持つものは、いましか堪能できない限定を搾取するだけ。


「プラントシードは実にいい制度だ。種を植える頃に目をつけて、花が咲いたころに摘むのは興奮する。寄付をすればどの協会も協力を惜しまない」

「今回のアヴァルネルトスも十国から入荷される」

「先日ホドから来たリンゴがいたな。ジャムにするか、パイにするか。想像だけでも、っ、く出る、ぞ」


デファイと天秤にかけるものがテンバス協会であれば、人々は迷わずテンバス協会を選ぶ。信徒であれば、デファイに食われるより、協会の人間の言いなりになるのは当然のこと。
ただ、協会の人間だけならまだしも、よく見れば王侯貴族の顔ぶれも目立つ。


「ホドの娘は何代か前にも側室にされてましたな。あそこは貴族の出身者も多い」

「姉をクレドコンパスに送った償いに妹を迎え入れた。姉妹揃って楽しませてくれたと聞いたことがある」

「実にうらやましい」

「自分の娘を貴殿に預けるのはイヤですね。貴公の息子であれば、良縁を築けそうですが」

「よせよせ、ここで素性を語るのは無粋だ」


十国が隠し、限られたものだけに開かれる遊戯の宴。片手ほどの娘の数で両手足以上の複数を相手にする宴は昼夜問わず続いている。


「表立って若い娘を得るには立場や都合が悪い我々には丁度いい。収穫前に孕んだところでデファイの烙印を押し、魔女にしてしまえばいいのだからな」

「しかしわたしは、この娘を気に入っているぞ。六年も手を掛けて馴染ませてきたのに、ああ、実に残念だ」

「その娘は聖女に選ばれたのだったか」

「気を落とさずとも今年も粒揃いだとか。六年後には、この娘たちのように食われることを悦ぶ」


複数の笑い声は黒いローブを身にまとい、仮面で顔を覆い、出身を隠している。
隠していても誰かわかるほどには狭い世界なのだが、世界中から不定期に訪れる重役の顔ぶれは点々としており、集まる人数はいつも一部屋で事足りる。


「しかし、十二年前のあの娘は惜しかった」

「協王様が随分とご執心で、鉢植えを入れ替えてまで早々に摘もうとしたあの娘か」

「わたしも覚えている。マルクトメレク出身の娘だったか。両親は熱心な信者だと聞いた」

「ああ、表向きはそうなっている。ここだけの話、捨て子を養女にして修道院に入れたんだよ。なんでもクレドコンパスから騎士団が見つけて連れ帰ったとか」

「いまは六賢人に見染められて魔女を名乗っていると聞きますね」

「協王様はご立腹さ。金のリンゴがまさかデファイの王を名乗る六賢人に奪われたのだからな」


目の前の少女を犯しながら、彼らの話題は魔女の話に飛躍していく。
クレドコンパスに拠点を構える魔女は多い。大義名分を掲げてルナティックメシア=魔女狩りを行う一方で、魔女として狩られる側に訪れる末路は変わらない。
しかし、彼らはそんな女に興味はない。


「協王様はまだあの娘を諦めきれないという噂もある。あの娘の噂を耳にするたび、複数の村を焼き払っているそうじゃないか」

「騎士団の訓練にも一役買っているし、定期的な掃除は必要だろう」

「しかし、十二年もたつ。さすがに生きているとは思えないが」

「なぜそこまで執着するのでしょう。それほど美しいならぼくも興味があります」

「逃がした魚は大きいのさ。確かに美しい娘だったからな。とはいえ、ここにいる娘も選りすぐりだ。手に入らない魔女を求めるより効率的だし、な」


わざわざ魔女を狩らなくても、手に入る少女は一級品の乙女ばかり。
リンゴは六年ごとに十国から補充される。
孕めば魔女の烙印を押して森へ捨てればいい。クレドコンパスはデファイの宝庫。運が良ければ魔女として生きられる。その魔女も、都合が悪ければルナティックメシアで消せばいい。
合理的な回路だと、国の重鎮たちはテンバス協会の黒い一面を評価する。
一方で、自分たちが好む娘は聖女候補として味わい続ける。それでも六年。六年たてば、入れ替えるのが暗黙の掟であり、聖女としてテンバス協会に差し出すのが公約となっている。
テンバス協会に差し出した娘の末路はほとんどが知らない。知りようもない。むしろ、彼らにとってはどうでもいいことだろう。
清廉潔白を象徴する建物の地下深く、石の台座が並ぶ、ほの暗い場所。ろうそくに灯された石壁にはもつれあう影が躍り、それは延々と続いていた。
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