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子供時代
No.9 教えてほしいだけなのに
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かゆい、体がかゆい。どうしようもなくかゆかった。
起きたばかりなのに、ついてない。取り敢えずベッドから起き上がって、ゴッダードさんのもとへ向かう。
「ゴッダードさん、身体がかゆいんだけど……」
「真っ赤じゃないか、取り敢えず朝ごはんでも食べろ、指で引っ搔いたら余計酷くなるから、掻くなよ」
ゴッダードさんは難しいことを言う。かゆいんだから、かきたくなるのは当たり前なのに。
「かゆいのは、どうして?」
「昨日外に出ただろ?日差しが強かったから、そのせいで肌がやられたんだ」
外に出ると、こんなに肌がかゆくなるだなんて、知らなかった。
「でも、この前外に出た後は、かゆくならなかったよ?」
「当たり前だろ、お前は今まで薬も塗って、厚い服を着ていたんだから」
薬やかぶりものに、そんな効果があるなんて知らなかった。
かゆさを忘れてボーっとする僕を見て、ゴッダードさんはニタニタと笑う。
「なんだ?知らなかったのか、あの厚い布を着る理由がないはずが無いだろ」
僕はとてもショックを受けているのに、ゴッダードさんは背を向けながらケラケラと笑って、気分が悪かった。
「でも、ゴッダードさん、大丈夫だって言ったから僕、かぶりものを着ないで外に出たのに、大丈夫じゃない」
こんなにかゆくなるなら、着けないといけないのに、ゴッダードさんの事、信じたのに。
なんでゴッダードさんが大丈夫って言ったのかが、全く分からなかった。
「かぶりものを着ないで、楽しかっただろ?どうせ夏になれば厚布や薬を塗ったところで誤魔化せなくなるんだし、かゆくなる事ぐらい、すぐに慣れる」
こんなにかゆくなるなら、かぶりものを着けた方がよかった。
「教えてくれたら良かったのに、教えてくれたら、かぶりものを着たし、こんなにかゆくなることも無かったのに」
僕は怒ってるのに、ゴッダードさんは本に向かって顔を向けていて、僕の方になんか見向きもしない。
「何度も言うが、昨日、楽しかっただろ?体が痒いことぐらい、良いじゃないか」
確かに楽しかった。だけど嫌な思いはしたくない。
「楽しかったけど、かゆいのは嫌だな」
「痒いのはもう仕方ない。慣れろ」
そう言われても、僕は納得出来なかった。ゴッダードさんが教えてくれたら、かゆくならなくて済んだのだから。
「教えてくれたら良かったのに」
そう言うと、空気が凍ったような気がした。
「何度も何度も聞くな、俺は聞かれたこと以外は教える必要があると思った事しか教えない。」
そんな事を言われて、僕は何も言えなかった。
ゴッダードさんを怒らしたと思うだけでも怖かった。
「わがまま言ってごめんなさい」
かゆい肌をポリポリと掻きながら、かぶりものを着て、外に出る。肌が日差しに照らされて、とてもヒリヒリしたけれど、雪に押し付けるとましになった。
そのまま走って遊ぼうとしたけれど、上を向いたときにみえる太陽が僕を襲うように感じて、不安になる。
気にしないで遊ぶようにしたけど、気にせずにはいられなかった。
僕は太陽に背を向けて、家の方へ戻る。
「もう帰って来たのか、速いな」
「うん」
帰ってきたのは良いものの、何もすることがなくって、とてもひまだ。
「何を読んでるの?」
ゴッダードさんはさっきからずっと同じ本を読んでいて、何を読んでいるのか、僕は気になった。
「ん、本だ。見るか?」
僕はゴッダードさんのそばに行って、覗き見る。まじまじと眺めてみるけれど、なにを書いているのか、まったくわからなかった。
「そういえば、文字の読み書きはできるのか?」
「ううん、いつもお母さんに読んでもらってたから、知らない」
するとゴッダードさんは驚いたみたいだった。
「何もか?この本を見て、わかる文字はないか?」
「ないよ」
僕は断言できた。ゴッダードさんの手の中にある本には、僕が見たこともない形が並んでいる。
「じゃあ、教えてやる。将来のためにも、多少は知っていた方がいい」
そういってゴッダードさんは机の中から、紙を出した。
紙を出して、机に広げる。先が尖っている棒を黒い液体につけて、紙に何かを書いた。
「座れ」
一通り書いた後、ゴッダードさんは僕を座らせた。
「文字にはこれだけの種類がある。これを一つ一つ組み合わせて俺たちの知ってる言葉になるんだ」
ゴッダードさんは紙に書いている文字を並べる。
「お前の名前を書くと、こういう風になる」
「僕の名前?」
フランクリン、それが僕の名前。文字で書いたら、どうなるんだろう。
「F、r、a、n、k、l、i、n、これで、フランクリンというんだ。」
僕の名前。ただ、変な形が並べられただけなのに、とても輝いて見えた。
起きたばかりなのに、ついてない。取り敢えずベッドから起き上がって、ゴッダードさんのもとへ向かう。
「ゴッダードさん、身体がかゆいんだけど……」
「真っ赤じゃないか、取り敢えず朝ごはんでも食べろ、指で引っ搔いたら余計酷くなるから、掻くなよ」
ゴッダードさんは難しいことを言う。かゆいんだから、かきたくなるのは当たり前なのに。
「かゆいのは、どうして?」
「昨日外に出ただろ?日差しが強かったから、そのせいで肌がやられたんだ」
外に出ると、こんなに肌がかゆくなるだなんて、知らなかった。
「でも、この前外に出た後は、かゆくならなかったよ?」
「当たり前だろ、お前は今まで薬も塗って、厚い服を着ていたんだから」
薬やかぶりものに、そんな効果があるなんて知らなかった。
かゆさを忘れてボーっとする僕を見て、ゴッダードさんはニタニタと笑う。
「なんだ?知らなかったのか、あの厚い布を着る理由がないはずが無いだろ」
僕はとてもショックを受けているのに、ゴッダードさんは背を向けながらケラケラと笑って、気分が悪かった。
「でも、ゴッダードさん、大丈夫だって言ったから僕、かぶりものを着ないで外に出たのに、大丈夫じゃない」
こんなにかゆくなるなら、着けないといけないのに、ゴッダードさんの事、信じたのに。
なんでゴッダードさんが大丈夫って言ったのかが、全く分からなかった。
「かぶりものを着ないで、楽しかっただろ?どうせ夏になれば厚布や薬を塗ったところで誤魔化せなくなるんだし、かゆくなる事ぐらい、すぐに慣れる」
こんなにかゆくなるなら、かぶりものを着けた方がよかった。
「教えてくれたら良かったのに、教えてくれたら、かぶりものを着たし、こんなにかゆくなることも無かったのに」
僕は怒ってるのに、ゴッダードさんは本に向かって顔を向けていて、僕の方になんか見向きもしない。
「何度も言うが、昨日、楽しかっただろ?体が痒いことぐらい、良いじゃないか」
確かに楽しかった。だけど嫌な思いはしたくない。
「楽しかったけど、かゆいのは嫌だな」
「痒いのはもう仕方ない。慣れろ」
そう言われても、僕は納得出来なかった。ゴッダードさんが教えてくれたら、かゆくならなくて済んだのだから。
「教えてくれたら良かったのに」
そう言うと、空気が凍ったような気がした。
「何度も何度も聞くな、俺は聞かれたこと以外は教える必要があると思った事しか教えない。」
そんな事を言われて、僕は何も言えなかった。
ゴッダードさんを怒らしたと思うだけでも怖かった。
「わがまま言ってごめんなさい」
かゆい肌をポリポリと掻きながら、かぶりものを着て、外に出る。肌が日差しに照らされて、とてもヒリヒリしたけれど、雪に押し付けるとましになった。
そのまま走って遊ぼうとしたけれど、上を向いたときにみえる太陽が僕を襲うように感じて、不安になる。
気にしないで遊ぶようにしたけど、気にせずにはいられなかった。
僕は太陽に背を向けて、家の方へ戻る。
「もう帰って来たのか、速いな」
「うん」
帰ってきたのは良いものの、何もすることがなくって、とてもひまだ。
「何を読んでるの?」
ゴッダードさんはさっきからずっと同じ本を読んでいて、何を読んでいるのか、僕は気になった。
「ん、本だ。見るか?」
僕はゴッダードさんのそばに行って、覗き見る。まじまじと眺めてみるけれど、なにを書いているのか、まったくわからなかった。
「そういえば、文字の読み書きはできるのか?」
「ううん、いつもお母さんに読んでもらってたから、知らない」
するとゴッダードさんは驚いたみたいだった。
「何もか?この本を見て、わかる文字はないか?」
「ないよ」
僕は断言できた。ゴッダードさんの手の中にある本には、僕が見たこともない形が並んでいる。
「じゃあ、教えてやる。将来のためにも、多少は知っていた方がいい」
そういってゴッダードさんは机の中から、紙を出した。
紙を出して、机に広げる。先が尖っている棒を黒い液体につけて、紙に何かを書いた。
「座れ」
一通り書いた後、ゴッダードさんは僕を座らせた。
「文字にはこれだけの種類がある。これを一つ一つ組み合わせて俺たちの知ってる言葉になるんだ」
ゴッダードさんは紙に書いている文字を並べる。
「お前の名前を書くと、こういう風になる」
「僕の名前?」
フランクリン、それが僕の名前。文字で書いたら、どうなるんだろう。
「F、r、a、n、k、l、i、n、これで、フランクリンというんだ。」
僕の名前。ただ、変な形が並べられただけなのに、とても輝いて見えた。
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