日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝

坐久靈二

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外伝『恥辱の中で媚笑んで』

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 昼間のおれたかつがい家の地下室にもっている。
 そこには雌になるために必要な、様々なものがそろえられている。
 男に雌をアピールし、発情を促すためわいな衣装。
 よりく雌のかおを作り上げるためのメイク道具。
 己の体を開発し、または奉仕を練習し、弱い被虐こう者の敏感で貧弱なアイデンティティを作るための玩具おもちや

 それらを駆使し、自らより深く雌ヘとちていくのがおれの日課だ。

 別に監禁されているわけではない。
 だが、行く当てのないおれにはこうして生きる他無かった。
 いつの世も、弱者に選択権など無い。

 昼の間に作り上げた雌の自分を、夜になったら売りに行く。
 そして月に二度、たかつがい様に売上を納める。

 かつては己がこんな惨めな生き方をするなんて想像もできなかった。
 正妻だったゆう様も元はといえばおれの方が、貧弱雑魚ざこマゾ幼馴染彼氏からたくましい肉体と財力に物を言わせて寝取ってやったのに……。
 今ではおれ自身があいつと同じ、いやそれ以下の女々しい負け犬になってしまった。
 こんなことは認めたくないのに、たかつがい様にわからされた体がうずき、現実を思い知らされる。

 おれたかつがい様とゆう様の寝室のドアをノックした。

「入れ」

 たかつがい様の太い許可の声に促され、恐る恐る部屋に入ると、二人は既に絡み合っていた。
 ゆう様はその豊かな乳房と尻をなまめかしくくねらせながら、たかつがい様の鍛え上げられた胸筋に身を寄せて甘えている。
 嘗ては己が好きにもてあそんだ女のこの上なくエロティックな肉体に、今はもう触れられない。

わたし達の情事を見ながら、お前も体をいじれ。お前がどれだけ雌化したか、その有様を持ってわたしに報告しろ」
「はい……」

 この強者の威厳に満ちたたかつがい様の声を聞くと、それだけでもう逆らえない。
 体が疼き、全身が彼に犯される準備を始めてしまう。

「ンっ……ああぁっ、はぁん……♡」

 自らの乳首を慰める手付きが普段より貪欲に快楽を与えるいやらしいものになってしまう。
 たかつがい様はそんなおれを見て特に興奮するでもなくゆう様の体を弄ぶ。
 ただ支配欲を満たす愉悦に浮かべた冷酷な笑みが彼の端正な顔にたたえられている。

 そんな彼の腕に抱かれるゆう様もまた、彼のあいよろこびのきようせいを漏らしている。
 その声におれの様な情けない弱々しさは皆無で、本物の女の勝ち誇るような悦びを朗々と歌い上げていた。
 選ばれて抱かれる女と、お情けで犯していただける雌の残酷な対比がそこにはあった。

 ビクリ、と彼女とおれの体が同時に震える。
 同じタイミングでの絶頂でも、二人の間の距離は天地ほどの開きがあった。

 ぐったりとうなれるゆう様の頭を優しくでるたかつがい様は、彼女をひとしきり落ち着かせた後、おもむろに口を開いた。

「で?」

 冷たく言い放たれたあまりにも短い言葉は、ゆう様と比較したおれの扱いのぞんざいさを端的に示していた。
 しかし、の格差ゆえにおれはこのたった一文字に込められた意図、要求を最大限におもんぱかり、そんたくしなければならない。

「今月上半期分です。お納めください……」

 おれは膝を突き、頭を垂れて体を売って得た金を高々と掲げた。
 それをたかつがい様がぶっきらぼうに手に取り、わざと大きな音で紙幣をさすりながら数えるのを、ひたすらに地に伏して待ち続けた。

「毎日体を売って十万も行かんとはな。それに千円札が多い」

 あきてたような溜息交じりの言葉が背中に突き刺さる。
 更に、それを聞いてゆう様が噴き出す声まで聞こえてきた。
 おれは悔しさと情けなさでいっぱいになる。

「申し訳ございません。今後精進致しますのでどうかお許しください」
「いいや、わたしはお前の売り上げが悪かろうと、それは全く構わない。お前が売れないことは、わたしにとってどうでもいいことだ」

 言葉とは裏腹に、たかつがい様はおれの頭をぐりぐりと踏みつける。
 そして、その雄々しい声をさらに低く荒らげ、おれを詰る。

「しかしだ、先日、我がたかつがい家に脅迫の手紙が届いた。藤の家紋をこしらえただんしようつたない性技で体を売っているとな。果たして注意事項の説明を怠ったか、聞く耳持たぬほど客を怒らせたか、どちらなのかな?」
「あああ申し訳ございません! 申し訳ございません!」

 おれは必死に許しを請う。
 たかつがい様に恥をかかせた弁解をどうにか紡ぎだす。

「締まりのない穴でごめんなさい! たかつがい様のたけだけしい男根オチンポ様の為に拡張しすぎてしまいました!」
「勘違いするなよ、うじむしが!」

 言い訳の言葉がげきりんに触れてしまった。
 おれは恐ろしさに心の底から震え上がった。

「お前の穴はわたし専用だとでも言えば機嫌を取れるとでも思ったか! 身の程をわきまえろずうずうしい! わたしにとってお前の価値などごみ同然なのだ!」

 たかつがい様の太く逞しい脚に力が入る。

「無礼にも妻に横恋慕するお前に情などあるはずがないだろう。それにもかかわらず何故なぜ飼ってやっていたと思う? 手に入らぬ妻への未練に雌に堕ちてまですがくお前の姿が惨めで滑稽で、それを眺めるのが愉快だったからだ。何故抱いてやっていたと思う? 弱く情けないお前がわたしの力に屈服し、男として終わっていく様を確かめるのが愉悦だったからだ」

 そうだ、当然だ。
 おれがいくらびたところで、たかつがい様の情がおれに移るわけがない。
 もちろん、ゆう様を譲ってくれるなど天地が引っ繰り返ろうとあり得ない。
 そんな当たり前のことを当たり前に突き付けられただけなのに、おれの目からは涙があふれだした。

 たかつがい様の足がおれの頭からそっと離れた。
 それは温情などではなく、単に冷めただけなのだということは明白だった。

「だが、もういい。それも飽きた。お前のことは捨てる。売り上げはくれてやるから何処どこへなりと行くがいい」

 突然の、あまりにも冷酷な宣告。
 おれの頭は真っ白になった。
 捨てられる? おれは捨てられるのか?

たかつがい様、お待ちください! お待ちください!」
「くどい。さっさと出ていけ」
「お許しを! なにとぞお許しを!」

 必死にたかつがい様の足に縋り付き、考え直してもらえる様に訴える様はどれほどざまに見えるだろう。
 だがおれなりかまっていられない。
 たかつがい様に捨てられたら、おれに行く当てなど無いのだから。
 ここで必死にたかつがい様の愉悦の為になぶものにされ、雌に堕ちていく玩具としてほほんで生きていくしかないのだから。

「ダッサ……」

 不意に、体を起こしたゆう様がおれの醜態を見て吐き捨てた。
 その一言は、たかつがい様のどんな言葉よりもおれの胸に深く突き刺さった。

「そんな、ひどい……! あんまりだ! 一度は愛し合った仲なのに……!」

 泣き叫ぶおれに向けられた彼女の視線は今までに向けられた誰のものよりも軽蔑と侮蔑に満ちていた。
 そして溜息をつくと、冷たく言い放った。

「そんな愛し合った二人を引き裂いて、女を自分のものにする。あんたも散々やってきたことじゃん。あんたが夜朗様に何か一つでも勝てるところあるの?」

 瞬間、おれの中にあふしたのはゆう様を寝取った時の嘗ての記憶だった。
 軟弱な優男だったゆう様の幼馴染・のりあきから、まだ男をあまり知らず純朴だった彼女を寝取った時、のりあきに向けた言葉がブーメランになって帰ってきた。

『ざーんねんでした。ゆうちゃんはもうおれの女だから。お前なんかがおれに何か一つでも勝てるのかよ、ギャハハハハ!』

 おれは屈辱感のあまり絶叫した。
 床に伏しておんおんと恥も外聞もなく泣き叫んだ。

 だがそんなおれの様子を見てか、たかつがい様は手をたたいた。

「そうだ。ならば一つお前に希望をやろう。最後にお前のことを抱いてやるから、おれがイくまでイくのを耐えられたら考え直してやる」
「えー夜朗様、それは無理だと思いますけど……」

 実際、これはほとんど望みのない勝負だ。
 何故ならおれは今まで散々たかつがい様の男根オチンポ様には負け癖を付けられ、今では十数秒でイかされる体に仕込まれてしまっているからだ。

 だが、奇跡に賭けるしかないおれは、たかつがい様に尻を差し出すしかなかった。
 
「お願いします……」

 たかつがい様の猛々しい男根オチンポ様が、おれの雌尻穴に挿入された。
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