日本と皇國の幻争正統記・好色秘伝

坐久靈二

文字の大きさ
3 / 17
外伝『恥辱の中で媚笑んで』

しおりを挟む
 じゅぽじゅぽと、わいな水音が響いている。
 いや、響かせていると言った方が正しいか。

「んっ♡(じゅぽっ♡)……んっ♡(じゅぽっ♡)……」

 口内を消毒したおれは、お客様の期待する「肉棒オチンポ様が大好きな淫売」を精一杯演じる。
 そうに、有難そうに、そればかりかしゃぶっているだけで全身にじわじわと快感がまっていくような、男受けするびっ媚びのフェラチオが部屋を卑猥な音で一杯にする。

 おれはこんなこと、心では望んでいない。
 あくまで男に戻してもらうつかためにこんな倒錯に興じている、そのはずだ。
 だがおれはこの肉棒オチンポ様をしゃぶる直前、確かに唾液が口内に充満するのを感じた。
 ベタな言い方だが、心とは裏腹に体は求めてしまっているのだ。

 おれは怖くなってくる。
 男の肉棒オチンポ様に抵抗が無くなるのは、今の状況に適応する為に悪いことではない。
 体がうずいてしまうのも、鎮める術を覚えてきた。
 だが、その変化だ。
 その肉棒オチンポ様に抵抗が無くなる適応変化、体の疼きを鎮める習慣化が、心すらも創り変えてしまうようで恐ろしいのだ。

 おれおれでなくなっていく。
 決して望んでいない性的指向を刷り込まれ、変えられていくことへの抵抗が薄れていく。

 そしてその恐怖を忘れる為、おれは目の前の倒錯にのめり込む。
 おれは自分に言い聞かせる。

しい♡ 美味しい♡ 肉棒オチンポ様、大好き♡)

 只管ひたすらに、只管にそう念じながら、わざとらしいいんさを演出し続けるのだ。

 口の中に唾液とは別の粘液が広がる。
 鈴口から汁があふれてくるのが分かる。
 舌の上から喉へ、そしてこうへと雄の臭いが充満していく。

 しかし、この時までおれは気付いていなかった。
 お客様の吐息から、先程までのような興奮を抑えられないといった異常なたかぶりが消えている。

めてきている……?)

 おれは一抹の不安を覚えた。
 と、その時だった。

「むごぉッ!?」

 突如、お客様はおれの頭をつかみ、強引に喉奥まで肉棒オチンポ様を突っ込んできた。

「おゴッ! ングぇッ!?」
「駄目だよそれじゃあ。オジサン、一回出しちゃってるんだからもっと必死でご奉仕しなきゃあ」

 息が、息が出来ない……!
 おれはつい、呼吸を確保すべく歯を立てそうになってしまう。
 喉奥に異物を当てられると反射的に口を閉じそうになる。
 だが幸か不幸か、おれたかつがい様から散々とその反応を堪える訓練を積まされているので、この突然の凶行に何とか耐えることが出来てしまう。

「ホラッ! ホラッ! ホラぁッ!」
「ーッッ!?」

 どんどん口雌穴クチマンコへのピストンは激しさを増していく。
 この男、乱暴にするのが好きなタイプか。
 男が相手なら女よりも頑丈だからと遠慮が無くなるタイプか。

 こんなことを続けられては、下手をすれば死んでしまう。
 おれは無我夢中で、全身全霊を込めて男の手をがし、地獄のイラマチオから抜け出した。

 瞬間、後悔と恐怖が全身を包み込む。
 男の冷たい視線が上から背中に突き刺さる。
 そして髪を掴まれて顔を上げさせられたおれに映ったのは予想通り、男の無慈悲な表情だった。

 バチン、と無言でほおを打たれる。
 強い打撃――今のおれには失われてしまった男の腕力を嫌でも感じさせられる。
 バチン!――ただその打音が響く。
 冷酷におれの粗相を責める。

 おれおびえながら、再び男の肉棒オチンポ様をくわえ込んだ。
 かさず、おれの意思と安全を完全無視した激しいイラマチオが再開される。

 あるいは風俗なら、こんなことをされれば終わりに出来るかも知れない。
 嬢の安全を脅かすプレイを店のスタッフが止めてくれるかも知れない。
 だが、おれたかつがい様にとって何の価値も無い人間である。
 壊されても特に問題の無い、寝取られ元妻への未練に支配されたやつ隷に過ぎない。
 この男はそれが分かっていて、風俗嬢相手に出来ない乱暴を行使する為におれを買ったのだ。

 嗚呼ああおれの雌化したひ弱な体ではどうすることも出来ない。
 先程のように死力を尽くして逃れても、また力尽くで同じようにさせられる。
 弱者は強者のされるがままになるしかない。
 負け犬の生殺与奪権は勝者が握るのだ。
 前の世界でアルファだったおれが、この世界ではベータですらない。

 おれは意識を失った。



    ⦿⦿⦿



 おれを現実に引き戻したのは、前立腺を激しく擦る刺激だった。
 気絶している間におれは寝バック状態で尻穴アナル肉棒オチンポ様を挿入され、突かれていたのだ。

「ひぃっ!?」
「起きた? じゃあ早く尻穴アナル締めなきゃ。ガッバガバで全然気持ち良くないよ、君」

 身勝手で乱暴な男の声には既にいらちが混じっていた。
 おれは必死に括約筋に力を込めるも、本物の男という奴にわからされ続けたおれの貧弱な力ではまるでピストンにあらがえない。

「ねえ、やる気ある? もっと気合い入れなよ!」
「すみませんすみません! ヒィっッ! ひいぃぃン!」

 ユルユルな分、前立腺への刺激はかえって勢いがすさまじい。
 それが却って、おれの体に強い快感を焼き付ける。
 おれは泣き声を抑えられなかった。
 だがそんなおれとは逆に、男は不満だらけの様子だ。

 バチン!――尻が乱雑に打たれる。

「ああッ! 許して! 許してぇッ!」
「許さねえよ何の為の穴だ締めろ! オラ締めろォッ!」

 バチン!
 バチン!
 段々と打撃が強くなる。

「ヒイィィッ! あひいいいいぃぃッ! 痛い! 激しい!」
「そうかいそうかい! こっちは全然だよオラッ!」
「あああああ! ああああアッ!」

 自分の体が雌として開発され切ってしまったということ、そして雌としてすら役に立たないということを乱暴に突き付けられる屈辱。
 それはおれを惨めな絶頂へと押し上げていく。

「駄目へぇっ! イッちゃうぅッ! んオッ、ああああアァッッ!!」
「はあ!?」

 ざま、無様。
 役立たずの自分勝手なオルガスム。
 それは負け犬のあかし、白旗代わりのトコロテン。
 貞操帯の中で縮こまった極小陰茎クリチンポからの、情けなく絞り出すような敗北射精。
 そしてぞわぞわと、全身にむしいずりまわる様なおじを伴う弱者の絶頂がおれを包み込んでいた。

「オイオイもう終わり? ふざけんじゃねえぞ! 自分だけイキやがって……」
「申し訳……御座いません……。ちゃんとイクまでご奉仕しますので、どうかお許しを……」
「はあ……、もう良いよ。全然駄目じゃないか君。最初はクッソ艶漏エロかったから期待したのに、こんなもんかよ……」

 男はそう不満を垂れると、ぐったりと力無くうなれているおれの頭上に一枚、紙幣を落とした。

「この為体ていたらくじゃ万札一枚で充分だろ。それ持って帰れ」

 おれは恥辱に心を埋め尽くされ、何も言えなかった。

「おい、挨拶は無いのか?」

 男はキレ気味に舌打ちし、おれを頭上から詰った。

「本日は……ありがとうございました……」

 こんな扱いを受けてなおおれは男へ必死に媚びた作り笑いを向けた。
 部屋には惨めな雌男と、たった一枚の一万円札が残されていた。

 紙幣に印刷された若き皇太子のしい顔がおれあざわらっているかの様だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

処理中です...