SKM ~そんな求婚お断りっ! 魔王にされた少女

モノリノヒト

文字の大きさ
22 / 56
第2章 受難編

そんな22話 「捜索」

しおりを挟む
 よう。
 元気か、神様。
 俺だよ、レオニードだよ。

 俺は元気じゃねえよ。
 こんな夜更けに、どこ行ったかわからねえ嬢ちゃんを探さねえといけねえ。

 おまけに、どこの誰がやったのか知らねえが、嬢ちゃんの痕跡こんせきも全部消し飛ばしちまいやがった。
 いや、まったく、どこのドラゴンキラー様だろうね。

 っつうわけでな、俺のない知恵しぼって推理してみようってわけだ。

 Q.嬢ちゃんは、どうやってここから離れたか。

 1.嬢ちゃんは自分の足で歩いてる

 これなら竜王山に行く事はねえ。
 嬢ちゃんは"なぜか"行きたくなさそうだからな。
 呪いは解けなかった、とウソをついてハルシオン家に戻る可能性はあるだろう。
 だが、馬車で四日分の距離を、荷物もなしに歩いて帰るのは無理がある。
 ちっと考えにくい。

 2.嬢ちゃんは捕まってる

 俺達を襲撃したのは"盗賊団"だ。
 まさか全員で襲撃してきたって事はねえだろう。
 金品や食料といった戦利品を回収する係がいるはずだ。
 俺はこっちの案を推したいね。

 よし、嬢ちゃんは捕まってる。
 となれば、次は盗賊団の戦利品についてだが。

 Q.盗賊団の戦利品(嬢ちゃん・食料)はどこだ。

 1.戦利品の一時回収ポイントがある

 昔、山賊に雇われていた時にゃあ、こういうポイントが各所にあったもんよ。
 ただ、あの時と違って、ここはほとんど草原。
 たまに窪地があるぐらいだな。
 しばらく馬を飛ばせば竜王山ふもとの森に着くが、そこまで行くもんかね。

 2.アジトに戻った

 おう、もうこれしかねえな。決まりだ。
 あんま考えるのは得意じゃねえんだよ。

 だけどなぁ…。
 アジトはどこだ?って問題が出てきちまった。
 すぐにでも動きてえんだが、出発前に目的地を決めるのは大切だって、御者が言ってたしな。

 Q.アジトはどこにあるか。

 1.竜王山の洞窟

 これはねえな。
 100人以上を囲う広さは十分だが、ドラゴンに襲われる可能性が高い。
 やつらはドラゴンに対応できるような強さじゃなかった。
 メイド兵以外は、即ドラゴンのエサだ。
 もしかしたら頭目が、すげえ強かったりしてな。
 ドラゴンキラーは俺だけの称号じゃねえし。

 2.竜王山ふもとの森

 襲ってきたのが馬賊だけなら可能性はあったんだが、徒歩のやつらが大半を占めてた。
 徒歩って事は、根城が近いって事だろ。
 どっちにしろ森までは行く予定だったんだから、襲うなら明日の方が良かったはずだ。
 ってことで、竜王山シリーズはどっちもボツだ。

 3.開拓村跡地

 これだろ。
 これ以外だと、ノーヒントの"盗賊団・秘密の集合場所"を探さないといけなくなる。

 そんじゃま、開拓村跡地に行ってみますか。

 * * *

 ほどなくして、明かりが見えてきた。
 火が焚いてあるようで、数件の家屋が照らされていた。

 おう、大正解だな。
 全滅したはずの開拓村跡地が、今でもバリバリ開拓してましたってか?
 ありえねえ。

 俺は愛剣を構え、明かりに近づく。
 敵は全て叩き斬る。
 そんな覚悟を決めて。

 広場が見えてきた。
 火の周囲に人はいないようだ。
 家屋に入っているのか。

 近場の家屋を覗いてみれば、酒を飲んでどんちゃん騒ぎしている一団。

 ──あっ、野郎、ありゃあ俺が準備した火酒じゃねえか。飲む為に持ってきたんじゃねえよ。

 火酒はドラゴンにとって"おいしい水"だ。
 万が一襲われても、火酒を置いていけば高確率で逃げられる。
 普通に飲むのも好きだけどな。

 すぐにでも飛び掛かって返してもらいてえが、目的は嬢ちゃんを探す事だ。
 ここで騒ぎを起こして嬢ちゃんを連れていかれたら、今度こそノーヒントになっちまう。

 音を立てず、気配を消して、少し離れた次の家屋を覗き見る。

 暗い。
 人の気配はない。
 ただの空き家か。

 次の家屋に移動しようとしたところ、広場に人影が現れた。

 火の番か。

 人影は、火に薪を追加すると、足早に去っていく。
 騒いでるやつらとは違う方向に向かっているようだ。
 追ってみるか。

 しばらく後をつけると、人影は一件の家屋に入って行った。
 家屋の隣には、木で出来た簡易倉庫のような建物が見える。

 …くっせえ場所だな。
 何かありますって臭いがプンプンしてやがる。
 一応家屋を覗いてみるか。

 人数は二人。
 どっちも男のようだ。
 場合によっては、斬る事になるかもな。

 で、倉庫は…っと。

 倉庫の戸は、引き戸になっている。
 立て付けが悪いのか、なかなか開かない。静かに開けるのは難しそうだった。
 出来るだけ静かに開いてみるが、ガタガタと音が鳴ってしまう。

 …気付かれてはなさそうだな。

 倉庫内には大量の薪が積んであった。
 その薪の下に倒れている人影。

 短髪の黒髪に、猿ぐつわ。
 手足は縛られており、その左手薬指にはドクロの指輪。
 お姫様の救出だ。

 片手で拾い上げ、簡易倉庫を離れる。

 馬賊がいたってことは、馬屋があるはずだが…。
 お、あったあった。
 とんとん拍子だねえ。

 出来るだけ気付かれないように離脱して、帰りも利用させてもらいたいね。

 大人しそうな馬を一頭奪い、静かに開拓村を離れる。

 …よし、誰も追いかけてきていない。
 これぐらい離れればいいだろう。

 馬の横っ腹を軽く蹴り、走らせる。

 空は静かに白み始めていた。

 * * *

 五日目。

 まったく、昨日はエラい目に遭ったぜ。
 捕らわれのお姫様を救出したのはいいが、今日からが大変だってのによ。

 そのお姫様は目覚めちゃいるが、逃げられちゃかなわねえってんで、猿ぐつわから手足の拘束まで昨日のままだ。
 ちっと恨みがましい目で見てきたが、暴れると馬から落ちちまうぜ?と注意を促しといたら大人しくなってくれた。
 命が惜しいって言ってたのは本当みたいだな。

 馬がこの調子で走ってくれるなら、昼には竜王山ふもとの森に到着するだろう。
 山に入る前に、ちっとは休みたいんだが、嬢ちゃんに逃げられちゃかなわねえし、きちんと説得するしかねえか。

 …

 竜王山ふもとの森に入った。
 当初は幌馬車の予定だったんで、ここは歩くつもりだったんだが、今は馬が一頭だけだ。
 馬なりで走らせて森を突っ切るとしよう。

 それにしても慌てて出て来たもんだから、食料を奪還するのを忘れていた。
 火酒もなくなっちまったし、厄介事ばっかりだ。

 …ちょっと前は、何か起これって思ってただろって?
 忘れたなぁ、んなこたぁよ。
 ワッハッハ。

 森を抜ける頃には、日が傾きはじめている頃だった。
 馬だと、さすがに早いな。

 二人分の重さを運んで歩き続けるなんて、パワーのある馬だぜ。
 森の出口付近の木に手綱を結び、土魔法で器を作る。
 器の中に水魔法で水を入れ、馬に与えておく。

 メシはその辺の草でも食っててくれや。

 それにしても水や土魔法は便利なんだが、どうも苦手だ。
 がっつりと魔力を使っちまう。
 嬢ちゃんは魔力が使えないらしいし、こりゃ今日は休むしかねえな。

「今日はちっと早いが、ここで野宿する」

 嬢ちゃんの猿ぐつわを外し、両手足を縛ってあるロープを外す。

「みんなは、みんなはどうなったの?」

 みんな?
 ああ、旅してた連中か。
 嬢ちゃんの情報、古すぎねえか。

「嬢ちゃんがどのぐらい気絶してたのかは知らねえが、全滅したよ」
「ぜん、めつ…?」
「御者含め、守兵共は全滅。近衛メイド兵は盗賊団と絡んでやがった。
 その盗賊団は一部を残して、俺が全滅させた。
 全部、昨日の夜の出来事だ」

 嬢ちゃんの顔が、明らかに暗くなる。
 おっと、言わなくていい事まで言っちまったかな。

「そう心配すんな。嬢ちゃんだけは守るからよ」
「…みんなを救う事は、出来なかったんですか」
「生きてりゃ救えたかもな。俺が襲われた時には、もう遅かったよ」

 そう…ですか、と俯く嬢ちゃん。
 参ったな、気の利いたセリフひとつ出てきやしねえ。

「まあ、仕方ねえさ。
 嬢ちゃん、あんまり疲れてねえかもしれねえが、しっかり休んどけよ。
 明日から山登りだからな」

 嬢ちゃんは反応しない。

「あー、その、なんだ。
 この辺はドラゴンが寄ってくるかもしれねえ。
 命が惜しけりゃ、あんま遠くに行くなよ」

 嬢ちゃんがピクリと反応する。

 あっちゃー、これじゃ脅しじゃねえか。
 そうじゃねえ、そういうことが言いてえんじゃねえんだけどな。
 …苦手なんだよ、こういうのは。

 あー、もういい、寝ちまおう。
 明日は嬢ちゃんを守りながら山登りしなきゃならねえ。

 そんな大変な明日がやってくるというのに、嬢ちゃんといまいち信頼関係が築けてねえ。
 こんなんでドラゴン相手に守れっかね…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...