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最終章 真実編
そんな51話「妬み」
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「───はぁっ、はぁっ…!」
どうして。
せっかくバートフの記憶が戻ったのに…。
突然の絶望的な別れに、涙で顔がぐしゃぐしゃ。
視界はぼやけ、鼻も詰まって息が苦しい。
きっと今の私は人に見せられない顔をしてるんだと思う。
でも、そんな事は考えられないほど頭の中は、バートフでいっぱいだった。
逃げろと言われた。
扉を閉められ、拒絶された。
悲しくて、悔しくて、寂しくて、恋しくて、やっぱり悲しくて…。
どこを走っているかも全くわからない。
ふと気が付いた時には、湖面に映る泣きはらした顔が現実に引き戻した。
私は、なぜこんなことをしているんだろう…。
よくよく考えれば、どうとでも出来た。
バートフを救い、一緒に帰る事だってできた。
そうしなかったのは、なぜ…?
「………」
風もなく、穏やかな湖畔。
春には一面の緑を湛える湖畔の草原も、今では冬の訪れを感じさせる寂し気な気配。
そんな草原にかすかに混じる、異物。いや、異音。
靴が大地を踏みしめる音だ。
気配を消しているつもりなのだろう。
でも、多くの達人に囲まれてきた私には、はっきりと聞こえる。
気配に向かって強く視線を送り、誰何すると、気配の主は質問には答えないが、もはや隠す気もなくズカズカと歩を進める。
中心の一人とその後ろを歩く二人。
合計三人の女性。
「リプリシス=マキアート…」
中心の人物が、大きな宝石のついた杖を振り上げ、声を漏らした。
着ている服が風を切って、ふわりと存在感をアピールする。
見た目からすると神官か、魔導士か…。
「あれほどの目に遭いながらも、まだクライヴ様を諦めないの?」
杖の先に見える金髪縦ロールの髪が胸の辺りまで伸ばされていることが見えた。
色素の薄い髪色を見て、魔力に苦労していそうだと思った。
相手は私を知っている。
でも…。
「…なんのことだかわからないけど、私に何か用があるのかしら?」
そう口に出せば、互いの間に剣呑な雰囲気が漂う。
もちろん覚悟の上だ。
魔王の根城にわざわざやってくる人間なんて、大体怪しい人物なのだから。
「覚えていないですって…!?」
金髪縦ロールの左後ろに控えていた赤髪のショートカットの女性が怒りを露にする。
彼女は剣士風の旅装をしている。
「仕方ないわ。あの呪いの指輪をつけていたんだもの。そうですよね?お嬢様」
今度は金髪縦ロールの右後ろに控えていた青髪の女性が媚びるように声を出す。
こちらも剣士風の旅装だが、特に武器らしいものは見当たらない。
「その通りよ。…なぜか指輪は外れているらしいけど」
再び金髪縦ロール。
こういう三人組は、どこかで見た事があるような気がするけれど、やはり覚えていない。
「リプリシス=マキアート。クライヴ様に近づくのをやめなさい。そうすれば見逃してあげるわ」
「見逃して…? ごめんなさい、ちょっとよくわからないわ。
あと、クライヴが欲しいなら、ご自由に…アピールすればいいと思うのですけれど?」
「く、くぅっ…!」
なぜか金髪縦ロールは悔しそうに歯ぎしりしている。
「それで…あなた方はどなたですか?
ここは魔王の本拠地。すぐにお帰りいただいた方がよろしいと存じますわ」
エグザスに言われて強制した"魔王っぽい言葉遣い"が、まだしっかりと身につかない。
というか、私の格好は余所行きの男装である。
もう魔王の威厳とか、ないのでは…?
「そんなこと、関係ないのよっ!」
「!?」
「クライヴ様を初めてお見掛けした時から、わたくしはずっと、ずっとお慕い続けてきたのよ!
それを、魔力が高いだけのあなたなんかに…!」
突然まくしたてる金髪縦ロールの迫力に、思わず閉口してしまう。
「勝負よ、リプリシス=マキアート!
わたくしはリヴェーラ=カプチーノ! あなたに一対一の勝負を申し込むわ!」
「………」
「わたくしが勝てば、あなたはクライヴ様から手を引きなさい!
あなたが勝てば…、勝てば、見逃してあげるわ!」
この勝負、私に何のメリットが…。
でも、勝負と聞いてやらないつもりはない。
魔王は全ての勇者を退ける必要があるのだ。
「お受けしますわ、リヴェーラさん。
"魔王"の力……しかと味わってお帰りくださいまし」
どうして。
せっかくバートフの記憶が戻ったのに…。
突然の絶望的な別れに、涙で顔がぐしゃぐしゃ。
視界はぼやけ、鼻も詰まって息が苦しい。
きっと今の私は人に見せられない顔をしてるんだと思う。
でも、そんな事は考えられないほど頭の中は、バートフでいっぱいだった。
逃げろと言われた。
扉を閉められ、拒絶された。
悲しくて、悔しくて、寂しくて、恋しくて、やっぱり悲しくて…。
どこを走っているかも全くわからない。
ふと気が付いた時には、湖面に映る泣きはらした顔が現実に引き戻した。
私は、なぜこんなことをしているんだろう…。
よくよく考えれば、どうとでも出来た。
バートフを救い、一緒に帰る事だってできた。
そうしなかったのは、なぜ…?
「………」
風もなく、穏やかな湖畔。
春には一面の緑を湛える湖畔の草原も、今では冬の訪れを感じさせる寂し気な気配。
そんな草原にかすかに混じる、異物。いや、異音。
靴が大地を踏みしめる音だ。
気配を消しているつもりなのだろう。
でも、多くの達人に囲まれてきた私には、はっきりと聞こえる。
気配に向かって強く視線を送り、誰何すると、気配の主は質問には答えないが、もはや隠す気もなくズカズカと歩を進める。
中心の一人とその後ろを歩く二人。
合計三人の女性。
「リプリシス=マキアート…」
中心の人物が、大きな宝石のついた杖を振り上げ、声を漏らした。
着ている服が風を切って、ふわりと存在感をアピールする。
見た目からすると神官か、魔導士か…。
「あれほどの目に遭いながらも、まだクライヴ様を諦めないの?」
杖の先に見える金髪縦ロールの髪が胸の辺りまで伸ばされていることが見えた。
色素の薄い髪色を見て、魔力に苦労していそうだと思った。
相手は私を知っている。
でも…。
「…なんのことだかわからないけど、私に何か用があるのかしら?」
そう口に出せば、互いの間に剣呑な雰囲気が漂う。
もちろん覚悟の上だ。
魔王の根城にわざわざやってくる人間なんて、大体怪しい人物なのだから。
「覚えていないですって…!?」
金髪縦ロールの左後ろに控えていた赤髪のショートカットの女性が怒りを露にする。
彼女は剣士風の旅装をしている。
「仕方ないわ。あの呪いの指輪をつけていたんだもの。そうですよね?お嬢様」
今度は金髪縦ロールの右後ろに控えていた青髪の女性が媚びるように声を出す。
こちらも剣士風の旅装だが、特に武器らしいものは見当たらない。
「その通りよ。…なぜか指輪は外れているらしいけど」
再び金髪縦ロール。
こういう三人組は、どこかで見た事があるような気がするけれど、やはり覚えていない。
「リプリシス=マキアート。クライヴ様に近づくのをやめなさい。そうすれば見逃してあげるわ」
「見逃して…? ごめんなさい、ちょっとよくわからないわ。
あと、クライヴが欲しいなら、ご自由に…アピールすればいいと思うのですけれど?」
「く、くぅっ…!」
なぜか金髪縦ロールは悔しそうに歯ぎしりしている。
「それで…あなた方はどなたですか?
ここは魔王の本拠地。すぐにお帰りいただいた方がよろしいと存じますわ」
エグザスに言われて強制した"魔王っぽい言葉遣い"が、まだしっかりと身につかない。
というか、私の格好は余所行きの男装である。
もう魔王の威厳とか、ないのでは…?
「そんなこと、関係ないのよっ!」
「!?」
「クライヴ様を初めてお見掛けした時から、わたくしはずっと、ずっとお慕い続けてきたのよ!
それを、魔力が高いだけのあなたなんかに…!」
突然まくしたてる金髪縦ロールの迫力に、思わず閉口してしまう。
「勝負よ、リプリシス=マキアート!
わたくしはリヴェーラ=カプチーノ! あなたに一対一の勝負を申し込むわ!」
「………」
「わたくしが勝てば、あなたはクライヴ様から手を引きなさい!
あなたが勝てば…、勝てば、見逃してあげるわ!」
この勝負、私に何のメリットが…。
でも、勝負と聞いてやらないつもりはない。
魔王は全ての勇者を退ける必要があるのだ。
「お受けしますわ、リヴェーラさん。
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