SKM ~そんな求婚お断りっ! 魔王にされた少女

モノリノヒト

文字の大きさ
51 / 56
最終章 真実編

そんな51話「妬み」

しおりを挟む
「───はぁっ、はぁっ…!」

 どうして。
せっかくバートフの記憶が戻ったのに…。

 突然の絶望的な別れに、涙で顔がぐしゃぐしゃ。
 視界はぼやけ、鼻も詰まって息が苦しい。

 きっと今の私は人に見せられない顔をしてるんだと思う。
 でも、そんな事は考えられないほど頭の中は、バートフでいっぱいだった。

 逃げろと言われた。
 扉を閉められ、拒絶された。

 悲しくて、悔しくて、寂しくて、恋しくて、やっぱり悲しくて…。

 どこを走っているかも全くわからない。

 ふと気が付いた時には、湖面に映る泣きはらした顔が現実に引き戻した。

 私は、なぜこんなことをしているんだろう…。
 よくよく考えれば、どうとでも出来た。
バートフを救い、一緒に帰る事だってできた。

 そうしなかったのは、なぜ…?

「………」

 風もなく、穏やかな湖畔。
 春には一面の緑を湛える湖畔の草原も、今では冬の訪れを感じさせる寂し気な気配。
そんな草原にかすかに混じる、異物。いや、異音。

 靴が大地を踏みしめる音だ。

 気配を消しているつもりなのだろう。
 でも、多くの達人に囲まれてきた私には、はっきりと聞こえる。

 気配に向かって強く視線を送り、誰何すいかすると、気配の主は質問には答えないが、もはや隠す気もなくズカズカと歩を進める。

 中心の一人とその後ろを歩く二人。
 合計三人の女性。

「リプリシス=マキアート…」

 中心の人物が、大きな宝石のついた杖を振り上げ、声を漏らした。
 着ている服が風を切って、ふわりと存在感をアピールする。

 見た目からすると神官か、魔導士か…。

「あれほどの目に遭いながらも、まだクライヴ様を諦めないの?」

 杖の先に見える金髪縦ロールの髪が胸の辺りまで伸ばされていることが見えた。
 色素の薄い髪色を見て、魔力に苦労していそうだと思った。

 相手は私を知っている。
 でも…。

「…なんのことだかわからないけど、私に何か用があるのかしら?」

 そう口に出せば、互いの間に剣呑な雰囲気が漂う。
 もちろん覚悟の上だ。

 魔王の根城にわざわざやってくる人間なんて、大体怪しい人物なのだから。

「覚えていないですって…!?」

 金髪縦ロールの左後ろに控えていた赤髪のショートカットの女性が怒りを露にする。
 彼女は剣士風の旅装をしている。

「仕方ないわ。あの呪いの指輪をつけていたんだもの。そうですよね?お嬢様」

 今度は金髪縦ロールの右後ろに控えていた青髪の女性が媚びるように声を出す。
 こちらも剣士風の旅装だが、特に武器らしいものは見当たらない。

「その通りよ。…なぜか指輪は外れているらしいけど」

 再び金髪縦ロール。

 こういう三人組は、どこかで見た事があるような気がするけれど、やはり覚えていない。

「リプリシス=マキアート。クライヴ様に近づくのをやめなさい。そうすれば見逃してあげるわ」
「見逃して…? ごめんなさい、ちょっとよくわからないわ。
 あと、クライヴが欲しいなら、ご自由に…アピールすればいいと思うのですけれど?」
「く、くぅっ…!」

 なぜか金髪縦ロールは悔しそうに歯ぎしりしている。

「それで…あなた方はどなたですか?
ここは魔王の本拠地。すぐにお帰りいただいた方がよろしいと存じますわ」

 エグザスに言われて強制した"魔王っぽい言葉遣い"が、まだしっかりと身につかない。
 というか、私の格好は余所行きの男装である。
 もう魔王の威厳とか、ないのでは…?

「そんなこと、関係ないのよっ!」
「!?」
「クライヴ様を初めてお見掛けした時から、わたくしはずっと、ずっとお慕い続けてきたのよ!
 それを、魔力が高いだけのあなたなんかに…!」

 突然まくしたてる金髪縦ロールの迫力に、思わず閉口してしまう。

「勝負よ、リプリシス=マキアート!
 わたくしはリヴェーラ=カプチーノ! あなたに一対一の勝負を申し込むわ!」
「………」
「わたくしが勝てば、あなたはクライヴ様から手を引きなさい!
 あなたが勝てば…、勝てば、見逃してあげるわ!」

 この勝負、私に何のメリットが…。
 でも、勝負と聞いてやらないつもりはない。
 魔王は全ての勇者を退ける必要があるのだ。

「お受けしますわ、リヴェーラさん。
 "魔王"の力……しかと味わってお帰りくださいまし」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...