縹の魔法

BONJIN

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プロローグ

進路選択

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その日進藤類しんどうるいは困ってしまった。



「類、お前は俺の本当の孫ではない」

そう、祖父、いや、祖父だと思っていた人物に告げられた。



「え?僕はじいじの孫じゃない・・・の?じゃ、じゃあ僕の血のつながった家族は?捨てられた?僕は養子として引き取られたってこと?」



「・・・いや、違う。お前は、川で、拾ったんだ」



「は?川?桃太郎かよ!今大事な話なのに冗談はやめてよ!」



「本当なんだ・・・。俺が釣りをしに行ったときにお前は船の上で意識を失って流されていた。俺はとっさにお前を家に連れて帰って手当をしたんだ。そうしたらお前が目覚めた。だけど記憶がなかった。だから俺はとっさにうそをついたんだ。『お前の名前は進藤類。俺の孫だ』と」



「っ・・・」



僕は訳が分からなくなってその場を離れ、部屋にこもった。

じいじは悲しい眼をしていたことだけが頭から離れない。



僕の記憶をめぐってみると小学生のころの記憶やそれ以前の記憶が全くない。

僕はこの違和感にうすうす気づいていた。

それでもじいじとは血がつながった家族だと思っていた。



僕は少しの絶望感とともに眠りに落ちた。



そして次の日を迎えた。

憎たらしいほどに雲一つない快晴で真夏の日差しが僕の住んでいるこの古い家の中に入り込みじわじわと汗をかいた。

僕の家の朝食はいつもじいじが作っている。

今日も当然のようにじいじが作った朝食が用意されていた。

けど、食欲が全くわかなかった。

「ごめん」

僕はじいじにそう言い残し家を出た。

そしていつものように大嫌いな中学校を目指して歩いた。



「あ、類だ!おはよう。今日も相変わらず箒を使わないのね。」

そういって幼馴染の梶原志保かじわらしほはくすくすと笑う。

僕は志保を睨みつけた。



「何度も言っているだろ?俺は魔法が嫌いなんだよ。できるだけ魔法に頼りたくないし使いたくない。」

僕は魔法が嫌い。

正確には、魔法が嫌いなふりをしろとじいじに言われ続けてきた。

じいじは僕に何か隠してることでもあるのかな。



「・・・。類、じゃ、遅刻するから私の後ろに!ほら早く!」

僕は志保に引っ張られ無理やり箒に乗る形となった。



僕だって自由に魔法を使いたい。

でも魔法を勉強したり、職業に生かそうと思わない。



そんな考えだから、僕の進路は決まっていた。



「進藤君、本当に普通の高校でいいの?魔法学校とか国立魔法学園とか目指さないの?だって、あなた、魔法学すごく成績いいし、魔法の実技もずば抜けてセンスを感じたわ。」



「いいんです。僕、魔法嫌いなので。」



この国には高校から魔法を専門的に学ぶ「魔法学校」がある。その中でも特に倍率が高く、全国から人が来る「国立魔法学園」というものがある。

国立魔法学園は学園を卒業した暁には国家魔導士になることができる。

その狭き門を目指し、僕の学校からも何人かが国立魔法学園を目指す。

国立魔法学園に入るには二つの方法がある。

一つは、魔法の実技と魔法学のテストを受け、高得点を収めること。

もう一つは・・・、



「じゃあ、今配布している『魔法適性検査』についての紙は絶対に無くさないようにー。事前診断書は当日までに必ず書くこと。」



「ついにこの時期になったか!俺は特殊属性に選ばれるだろう!」



「いや、お前は火属性だろ。・・・だって特殊属性なんて100万人に1人くらいの確立だぜ?この学校にはいないだろ」



「いいじゃん希望を持つくらい!だって特殊属性だったら国立魔法学園の試験受けずに済むし、入ってからも少しは優遇されるんだろ?」



そう、この魔法適性検査で特殊属性だった場合、テストを受けずに簡単に入ることができる。その代わり・・・



「まあ、でも、特殊属性だったら、進藤みたいに魔法嫌いな奴でも強制的に国立魔法学園に入らなきゃいけないってところがかわいそうだよな。なぁ、進藤は自分の属性なんだと思う?」



「うーん、俺は水だと思うなー。水が一番魔法で扱いやすいし。」



そう、強制的に入学することになる。



しかし、特殊属性といってもめったにいるわけではない。

特殊属性は、攻撃魔法の基盤となる魔法の属性が、火、水、風、光、闇、等以外であるときのことを指す。



それが分かる適性検査が今日の午後にある。







「類ー、私なんと光属性だった!」



先に検査を受け終わった志保が近づいてきた。

志保は学年の中でも目立つ存在である。

だからこそ、



「よお、魔法嫌いの進藤君。俺も梶原さんと同じ光属性だったぜ。お前はどうせよくある水属性とかだろ。がははっ」



いや、聞いてねえよ。



そんなことを考えたがこういう輩の戯言はだいたい無視をする。

相手にするだけ時間の無駄だ。



「はっ、無視かよ。結果が楽しみだなぁ。」



光属性は5つの属性の中で最も珍しい。

だから何?って感じだけどな。



僕の番がやってきた。



「じゃあこの魔法人に手をかざしてください。」



僕は言われたとおりに手をかざした。

そして読み取られたデータがパソコンに送信され、コンピュータの中で属性を判断する。



「・・・火、でも水でもない。風でもない。闇・・・でもない。光?でもない・・・?」

検査員がぶつぶつとつぶやいている。

なんて言ってるんだろう。



「特殊だ。特殊がきた」



へ?



「機関に急いで連絡してください。特殊がきました、と」



検査員たちがあわただしくなる。

そして僕は帰してもらえない。



そして、検査員が大声で言い放った。

「進藤類、特殊!!」



一瞬で周りはざわつき、僕はどうしよう、じいじになんて言おう。

そんなことばかりを考えるしかなかった。



「では、進藤さん。今から国立魔法学園の入学手続き、および本校についての説明をしますので待機をお願いします。」

そういわれ僕はしばらく帰してもらえなかった。







「ではまず、入学手続きについてですが、こちらで手配しますので進藤さんが何かをする必要はございません。ので、国立魔法学園についてご説明いたします。国立魔法学園では3年間うちで国家魔導士になるべく勉強及び実技を学んでいただきます。また、進藤さんのように特殊属性の場合ですと、1年目のうちから仕事にとりかかっていただく形になります。また、全寮制でありますので寮に住んでいただく形になります。また、学費についてですが、特殊属性の場合ですと全額無料で尚且つ給与が与えられるようになります。ざっとこんな形になります。よろしいですか?」



「はい」



僕は少し面倒くさくなって元気のない返事をした。

僕が特殊属性だったという通知はすぐにじいじに知らされてしまう。

今日は微妙な空気で家を出たからじいじの反応が心配だな・・・。



ぼくは魔法適性検査の後すぐにその場を離れた。

すでに僕が特殊だったということで話が持ちきり状態だった。



「進藤くん困ったことがあったら言ってね」

生徒だけでなく先生までもが目の色を変え俺の顔色をうかがう。



特殊属性の人間は魔導士に最短ルートでなることができる。

この国では魔導士は重宝されているうえ、魔導士の数自体も全国合わせて100人にも満たない。その選ばれし魔導士以外は臨時魔法士と呼ばれる。

臨時魔法士は魔導士とは待遇に差が出る。だから人々は魔導士を志す。

僕は地位も名誉も興味ない。
ただ、僕に魔法をとくことには興味がある。

僕の記憶がないのは誰かが強力な魔法をかけたから。
そう断言できる。それをかけたのはじいじでもそこら辺にいる同士でも何でもない。強力な何かである。

「はぁ・・・」
そんなことより今はじいじになんて言うかのほうが大事だ。

「じいじ・・・」
「類」

じいじは一枚のカードを渡してきた。
「今まで隠していた。お前の記憶は・・・、ある魔導士がかけたんだ」

じいじが渡してきたカードを見た。
「じいじ、魔導士だったの?」
「あぁ。もう引退したがな」
「じゃあ、なんで、僕に魔法とかかわらせないようにしてきたの?」
「・・・お前が魔法にかかわると、・・・お前を失ってしまうような気がしたんだよ」
じいじは僕を手招きした。
台所にある床下の収納だと思っていた場所は地下室であった。
その地下室には誰かの写真があった。
「お前とどういうかかわりがあったのかわからないが、こいつが、俺の息子がお前のことを託して死んだんだ」
「!・・・僕のせいで、」
「違う!俺の息子が死んでまでお前のことを守りたかっただけだ!お前が気にすることはない!」
「・・・僕、魔導士になる」
「知っている。だからここに連れてきた」
「知りたいんだ。過去のこと。僕の、たまに使えるのこと」
「お前が生きたいように生きなさい。ただし俺より先に死んだら許さない」
「じいじ、いや、進藤保しんどうたもつさん。僕、進藤類は本日をもって国立魔法学園に入学いたします」

じいじは一筋の涙を流して僕の手を握った。
僕はせっせと荷造りをした。
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