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裏切りの聖女という濡れ衣を着せられて
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その日、ヴェルカシア王国は喜びに包まれていた。神に選ばれし、八人の勇者が魔王の討伐に成功したのである。
魔王討伐を終えた勇者達を称えるため、王宮の大広間には多数の貴族が集まっていた。
魔王討伐の中心となった王子であり勇者でもあるベルナルド。
彼を守る壁となった盾使いアルフ。
道中、道を警戒し、敵の弱点を探り出し、戦いでは敵のかく乱に回った盗賊ヴィクルンド。
多彩な魔術で、敵を攻撃し続けた攻撃魔術師イェルド。
パーティーの守りの要、回復魔術の使い手マルセリナ。
そして、ベルナルドと共に最前線に立った王子ライムントと、攻撃でも回復でも仲間達を援護し続けた聖女レミリア。
国王の前に八名がずらりと並ぶ。
だが、そのうち二人は、魔力を封じる首輪をつけられ、手首に枷をつけられて拘束されていた。
「ライムント――そなた、裏切ったな」
王から与えられたのは、ねぎらいの言葉ではなく糾弾の言葉。何を言っても無駄だとレミリアは唇を噛みしめる。
「父上、俺は、そんなことは!」
「嘘をつくな! これだけ被害が大きくなったのは、そなたとそこのレミリアが魔族と通じていたからだと証言があったぞ」
王の目が、レミリアに向けられる。それは、レミリアの知る彼のものとは完全に異なっていた。
(……私は、こうなることを心のどこかで予見していたのかもしれない)
予見はしていた。でも、現実にならなければいいと思っていた。ベルナルドがライムントを疎ましく思っていたのを知っている。
女神の加護を受けたレミリアの聖女としての力を必要としながらも、レミリアを下層階級の出身だと蔑んでいた。
「裏切り者を処刑せよ!」
「ライムント様!」
ライムントは、それ以上申し開きしなかった。
ただ、彼の名を呼ぶレミリアの前で、ベルナルドの剣が光を反射して輝く。そして、ライムントの胸に吸い込まれていった。
声もなくライムントは倒れ、赤い血が床に広がっていく。レミリアは、その光景を呆然と見ていた。
まるで、どこか遠い国の出来事を見ているかのようだった。
自分に迫っている運命がわかっていても、逃げ出すことはできない。
ベルナルドはその剣を、次にレミリアに向けた。
ライムントの血にまみれた切っ先に、レミリアは正面から対峙する。目をそらすことなく、剣先を見つめていた。
(……この戦いが終わったら結婚しようって、ライムント様は言ってくれた)
平和な時代だったら、出会うはずのなかった二人。
でも――それでも。
出会ってしまった。気持ちを通わせてしまった。
「魔王に魅入られし、裏切りの聖女レミリア――お前を、この場で処刑する」
「あははははは!」
自らの正当性を喧伝するかのように大声で言い放ったベルナルドに剣を向けられたレミリアは、大きく背をそらして高々と笑い声を響かせた。
その場の空気を引き裂くけたたましいほどの声に、集まっていた一同、ぎょっとしたようにこちらに目を向ける。
魔王討伐を終えた勇者達を称えるため、王宮の大広間には多数の貴族が集まっていた。
魔王討伐の中心となった王子であり勇者でもあるベルナルド。
彼を守る壁となった盾使いアルフ。
道中、道を警戒し、敵の弱点を探り出し、戦いでは敵のかく乱に回った盗賊ヴィクルンド。
多彩な魔術で、敵を攻撃し続けた攻撃魔術師イェルド。
パーティーの守りの要、回復魔術の使い手マルセリナ。
そして、ベルナルドと共に最前線に立った王子ライムントと、攻撃でも回復でも仲間達を援護し続けた聖女レミリア。
国王の前に八名がずらりと並ぶ。
だが、そのうち二人は、魔力を封じる首輪をつけられ、手首に枷をつけられて拘束されていた。
「ライムント――そなた、裏切ったな」
王から与えられたのは、ねぎらいの言葉ではなく糾弾の言葉。何を言っても無駄だとレミリアは唇を噛みしめる。
「父上、俺は、そんなことは!」
「嘘をつくな! これだけ被害が大きくなったのは、そなたとそこのレミリアが魔族と通じていたからだと証言があったぞ」
王の目が、レミリアに向けられる。それは、レミリアの知る彼のものとは完全に異なっていた。
(……私は、こうなることを心のどこかで予見していたのかもしれない)
予見はしていた。でも、現実にならなければいいと思っていた。ベルナルドがライムントを疎ましく思っていたのを知っている。
女神の加護を受けたレミリアの聖女としての力を必要としながらも、レミリアを下層階級の出身だと蔑んでいた。
「裏切り者を処刑せよ!」
「ライムント様!」
ライムントは、それ以上申し開きしなかった。
ただ、彼の名を呼ぶレミリアの前で、ベルナルドの剣が光を反射して輝く。そして、ライムントの胸に吸い込まれていった。
声もなくライムントは倒れ、赤い血が床に広がっていく。レミリアは、その光景を呆然と見ていた。
まるで、どこか遠い国の出来事を見ているかのようだった。
自分に迫っている運命がわかっていても、逃げ出すことはできない。
ベルナルドはその剣を、次にレミリアに向けた。
ライムントの血にまみれた切っ先に、レミリアは正面から対峙する。目をそらすことなく、剣先を見つめていた。
(……この戦いが終わったら結婚しようって、ライムント様は言ってくれた)
平和な時代だったら、出会うはずのなかった二人。
でも――それでも。
出会ってしまった。気持ちを通わせてしまった。
「魔王に魅入られし、裏切りの聖女レミリア――お前を、この場で処刑する」
「あははははは!」
自らの正当性を喧伝するかのように大声で言い放ったベルナルドに剣を向けられたレミリアは、大きく背をそらして高々と笑い声を響かせた。
その場の空気を引き裂くけたたましいほどの声に、集まっていた一同、ぎょっとしたようにこちらに目を向ける。
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