不思議なお話・亡き友からのメッセージ

安藤 菊次郎

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不思議なお話NO4

こんなのありかよ! 不思議な出会い

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 人との出会いによって運命を狂わせるということが時として起こります。小説「無明のささやき」は、そうした特異な人物を陰の主役にした物語です。もちろん僕が実際に遭遇した人物ではなく映画や小説の中の登場人物を参考にさせていただいた訳です。
  また、人との出会いによって、性格に影響を受けるということもあります。僕の場合、そうした人物が少なくとも5人います。そのなかの一人、今回取り上げる偶然の出会いの物語の主人公、僕の心に暗い陰を落とした人物のお話です。
  この方とは交流を絶ってから数十年になり、二度と会うことはないと思っていただけに、その人物が突然僕の前に現れたときには度肝を抜かれました。やはり深い縁で結ばれていたとしか思えません。その時を越えた出会いをここに紹介いたします。


 その人物は明君と言いました。当時、小学校一年生の明君は大柄で皆に一目置かれる存在でした。その明君が引っ越して来たばかりの僕に声を掛けてくれたのです。すぐに仲良くなり交流が始まりました。
 ある日、明君が桜さんを伴って僕の家を訪れました。写生に行こうと言いのです。喜びいさんでクレヨン、画用紙、それに画板を用意し、二人のあとをのこのことついて行きました。連れて行かれたのは家からそう遠くない林の中です。
 僕は着く早々写生を始めたのですが、二人はいっこうに始めようとしません。ふたりでこそこそ話をしています。次第に僕も落ち着きを失って行きました。二人の様子が徐々に普通ではなくなっていったからです。何かが始まる気配が濃厚でした。そして、いきなり明君が言ったのです。
「淳ちゃん、僕たちはちょっと二人だけで遊んでいるから、写生をしていなよ。でも見たかったら見ていてもいいんだよ。じゃあ、桜ちゃん、ここに寝ころんで」
 桜さんは躊躇することもなく雑草の上に寝ころび、そして白いパンツをさっと脱ぎ捨てると、霰もない姿を晒したのでした。まさに、さっきも使いましたが、「度肝を抜かれる」と言う言葉は本来こういう時に使うのでしょう。とはいえ、僕の目は、そのピンク色に染まる綺麗な割れ目に釘付けになってしまったのです。
 明君はまるで医者が問診でもしているように桜さんに言葉をかけ、指で触ったり広げたりし、仕舞いにはちぎった葉っぱをその割れ目に差し込みます。僕は驚き呆れ、二人のやりとり凝視していました。
「じゃあ、今度は桜ちゃんの番」
 唐突にそう言ったかと思うと、明君が半ズボンを、ついでにパンツも脱いですっぽんぽんになるではないですか。桜さんはその先をつまんで、こう言います。
「ちょっと赤くなっていますね。痛くはないですか?」
 僕の目はすっかり点になってしまって、口は開きっぱなしです。二人のそんなやりとりの間、二人の視線が時々僕の方に向けられているのを感じました。厭な予感がしてきました。そして、まさか、まさか、と思っている矢先、案の定、桜さんが僕を睨みました。そして言ったのです。
「淳ちゃん、ずるい。見てばっかし。淳ちゃんのも見せてよ」
 その後のやりとりは覚えていません。でも、男として「ずるい」と言われるのは、僕にとって心外で、耐え難い評価であり、とはいえ究極の二者択一を迫られ困惑すると言うより錯乱の極みでした。
 その究極の二者択一とは、「おちんちん」か「お尻の穴」をのうちどちらかを選べと言うのです。にっちもさっちもいかない交渉の末、僕は後者を選択せざるを得なかったのです。穴に葉っぱをあてがわれるという屈辱にもじっと耐えたのでした。

 その夜、僕の心はふるふると震えて千切れんばかりでした。屈辱、悔恨、それ以上に父母に知られたれどうしようという恐怖でした。もう少し大人になっていたとしたら「親に対し合わせる顔がない」或いは「背徳」という表現をつかったかもしれません。性的なことなど何も分からない子供でしたから、下半身を見せっこしてちょっと触られたぐらいのことでも、大変なことをしてしまったと思いこんでしまったのです。

  二人はその後も執拗に僕を誘いに来ました。思いつく限りのいいわけを言って、そのつど断り、しまいには、泣きながら「もう来るな」と怒鳴っていました。そして二人はぷっつりと姿を見せなくなりほっとしたのですが、まさかさらなる地獄の日々が待っていようとは思いもしなかったのです。

 ある日、近所の悪ガキがにやにやしながら僕に近づいてきました。それほど仲のよいわけではないのに、何故親しげな顔をしているのか不思議に思っていました。その彼がいきなりドスの効いた声を放ったのです。
「お前、桜とこれやっただろう」
 これ、と言って右手の親指を人差し指と中指の間から覗かせた形で突き出したのです。僕はその親指を突き出した手の形の意味が分からず、きょとんとしてその指の形の意味を問いました。彼は顔色を変え怒鳴りました。
「これはオ○○コにきまってるじゃねえか」
 そのオ○○コという言葉は聞いたことがありました。子供がかかわってはいけない、大人の言葉という印象でした。まさにふるふる震えたあの晩に恐れた事態が急速に僕の身に迫ってきていると感じたのです。
 僕は悲鳴を上げてその場を逃げだしました。恐ろしくて恐ろしくて泣きながら家に飛んで帰りました。母親が心配して話しかけますが、母親に知られたくない一心なのですから、僕は泣き喚くばかりだったのです。
 誘いを断り続ける僕を恨んで、明君が僕と桜さん二人だけの秘め事として彼に密告したのでした。そして、恐れていたごとく、その悪ガキの脅迫は何年にも及んだのです。

 さて、これが明君との出会いであり、このことによって僕の性格は大きくねじ曲げられました。明君によってというより、この悪ガキによってというべきかもしれません。ですが、きっかけを作ったのは明らかに明君です。
 そしてこれは余談ですが、この悪ガキとは小学5年の時、同じクラスになり、その交友は今日に至るのですから人生とは分からないものです。この彼との不思議な縁についてもいずれ書こうと思っていますが、とりあえづ明君とのその後の出会いについて、続きをお読みください。

 六度目の転職を余儀なくされ、職安の世話になりました。当然の権利とはいえ、支給日に名前を呼ばれるのを待つのは厭なものです。早々と呼ばれて手続きを済ませ立ち去りたいという思いでいっぱいでした。ようやく順番が回ってきて書類を受け取り、後ろのカウンターで書類に記入していると、係官の「宮崎明さん」と名前を呼ぶ声が聞こえたのです。
 あれっと思い振り向きました。まさか同一人物とは思わなかったのです。しかし、僕の目に飛び込んできたのは、まさにあの明君だったのです。あの太めの顔は小学生の頃と少しも変わりません。僕はまじまじとその顔を見つました。
 同じ時期に失業し、同じ日、同じ時間に失業保険が支給されるなんて、偶然とは思えません。その偶然にはただただ驚き呆れるばかりでした。その後、僕は何食わぬ顔をして書類を提出し、その場を後にしたのです。

 ここまで読んだアナタは「そんなの単なる偶然だよ」と思ったことでしょう。あるいは、表現が少々大袈裟すぎるとも感じたかもしれません。でも、話はこれで終わりではなかったのです。

 ようやく就職が決まり、やれやれという気持ちで日々過ごしていました。気のあった仲間もでき、慣れない仕事に疲れれば、互いに誘い合い喫煙所で一服することもしばしばです。喫煙所は、廊下の端にある非常階段の踊り場にありました。
 ある日、一服吸い終わり廊下に出ると、ビル管理会社の制服の男性が脚立に乗って蛍光灯を取り替えています。いつもの管理人ではありません。新人が配属されたのかと思い、通り過ぎる時、ふと見上げると、どこかで見たような下ぶくれの顔が見えました。しかし、下から見ているのでよく分かりません。
 入り口まで来てドアに手をかけつつ、気になって後ろを振り返りました。男性は蛍光灯を取り付け終わり、脚立から降りるところでした。その顔に見覚えがありました・・・・なんてものじゃありません。ドングリ眼、ぷっくりとした頬、突き出た唇、間違いなく明君だったのです。
 僕は、部屋には入らず、そのまま階段を駆け下りました。駆けながら携帯を取り出し、友人に電話したのです。職安で明君と出会ったと知らせた友人を呼び出したのです。相手が出ると、僕はほとんど叫んでいました。
「どうなっているんだ、こんな偶然ってある?いいか、天ちゃん、職安で明君と会ったと言っただろう。その明君が、今度は、うちの会社に現れた。ビル管理会社の常駐管理人になっていたんだ。こんなことって、あり得る?」

 さて、偶然の出会いばかりでは飽きたと思いますので、今度は別のテーマをご用意いたしましょう。                  
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