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5.怪しい乗客たち
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同階にあるブリーフィングルームに入ると、すでに他の乗客らが集まっていた。それぞれ客席にぽつぽつと離れて座っている。
(和気あいあいとした感じではないな)
「……失礼」
「あ、すみません」
入り口で立ち止まっていると、後ろから来た女性が、通り過ぎていった。
能面のように愛想はなかったが、スレンダーボディに否応なく目を引く長い銀髪――かなりの美女だ。体にフィットした軍服ちっくな衣装が凛々しく、魅惑的。
(まぁアバターだから、実物がどういう容姿をしているかは、わからないんだけど)
もう後ろに人影はなかったが、ここにとどまっては邪魔だから、そそくさと室内に進み、空いている席に腰を下ろした。
ほかの乗客たちの様子はというと――。
前方中央に、ツインテールの派手な髪色をした女の子がいる。スカートがふわっとした、アイドルのような恰好。
その子に親しげに話しかけられているのは、メガネをかけた細身の女性。黒のドレスを身に着けている。ゴスロリというよりは魔女っぽい……外国の喪服みたいな感じだな。
前方左側の席には、パンクな化粧で、服装もピエロのように奇抜な少年。その割に隅っこに位置どっているし、視線は揺れて、どこかおどおどしている。
前方右側には、金髪碧眼のハリウッド俳優みたいな男。着ている服は白のスーツ。足を組んで、少しスカした雰囲気だ。
視線を自分の横のほうへ動かして、一瞬ぎょっとした。
大柄で顔に傷のある、殺し屋みたいな風貌の男が、薄暗い柱の影になった席に座っている。だぼっとしたコートにサングラス。これは話しかけづらいな……。
先ほどすれ違った銀髪の軍服美人は、中ほどの空いている席に座った。
自分を入れて、一、二、三……全部で七人。乗客はこれで全部だろうか。
みんな見た目は様々だ。
顔合わせということだったが、乗客たちはお互いの様子をうかがっている。
ゲームでは証拠を集め、事件の謎を解く。犯人をつきとめ、拘束することでゲームクリアとなる。
ときには他のプレイヤー同士、情報を交換した方が有利に進められるだろうが、忘れてはいけないのは、ここには犯人が紛れているということ。
犯人だって黙って隠れているわけじゃない。こちらが邪魔だと思ったら排除しようとしてくる。
そう、攻撃が可能なのだ。探偵役は、殺されてしまうとゲームオーバーとなってしまう。
プレイヤーによっては犯人でなくとも、わざとゲームを混乱させようとする者もいる。
味方か敵か、見極めも重要となる。
油断せずいかねば……早々にゲームオーバーになっては恥ずかしい。
部屋が暗くなり、前方にライトが照らされた。
演説台に顔を出したのは、かっちりとした制服を身に纏い、茶色の髪にたっぷりとした足のような髭を生やした中年の……「タコ」。
そう、タコだった。いや、宇宙人? 火星人か?(なお現代では火星に存在した生物はタコみたいな形ではなかったことが証明されている)
この船の船長は……七等身の海洋生物だったのだ。
「皆さん、こんにちは。宇宙船ヘリオポリスへようこそ。私が船長のベリル・ダオラです」
タコが喋ったぞ。一瞬、客席がざわっとしたが、これはゲーム。
動物のアバターがあるくらいだし、船長が喋るタコ宇宙人ということも、当然ありえるだろう。あぁびっくりした。
「最新鋭のこの船はほとんど自動航行をするので、名ばかりの船長ですが、何かお困りごとなどがありましたらいつでもお声かけください。
ワンマン運転ですので、スタッフは私と、食堂にいるコックの二名しかおりません。些細なことでも、私が対応させていただきますので」
割としっかりした説明。かっこいいタコだな。
船内の簡単な説明とスケジュールの連絡のあと、ゲームの仕様について注釈があった。
「現在、本船は試験航海をしており、抽選で選ばれた方のみが搭乗しています。人数を絞っているため、実は皆さんの中には、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)が紛れています。
本船のNPCは非常に高性能で、皆さんと同じように自分自身で考え、行動します。もし余裕があれば、誰がNPCなのかも、つきとめてみてください」
そう、試験運用の負荷を減らすため、乗客全員の中に「人」が入っているとは限らない。実在の人物ではないNPCキャラも含まれているらしい。
有人プレイヤーかNPCかどうかも、見極められれば大きな手掛かりになるだろうが……パッと見では違いがわからないな。
「おわかりかと思いますが、私は問答無用でNPCです。どうです? 本当の人間みたいでしょう?」
船長は、照れたように笑った。その表情の動きは自然で、言葉も滑らかだ。
NPCの賢さは、相当な域まで達している。高性能のAIを積んでいるらしいから、彼らとの邂逅も、楽しみな要素のひとつだ。
「それでは、三日間の宇宙の旅を存分にお楽しみください」
タコ船長がお辞儀をして、説明会はお開きとなった。
(和気あいあいとした感じではないな)
「……失礼」
「あ、すみません」
入り口で立ち止まっていると、後ろから来た女性が、通り過ぎていった。
能面のように愛想はなかったが、スレンダーボディに否応なく目を引く長い銀髪――かなりの美女だ。体にフィットした軍服ちっくな衣装が凛々しく、魅惑的。
(まぁアバターだから、実物がどういう容姿をしているかは、わからないんだけど)
もう後ろに人影はなかったが、ここにとどまっては邪魔だから、そそくさと室内に進み、空いている席に腰を下ろした。
ほかの乗客たちの様子はというと――。
前方中央に、ツインテールの派手な髪色をした女の子がいる。スカートがふわっとした、アイドルのような恰好。
その子に親しげに話しかけられているのは、メガネをかけた細身の女性。黒のドレスを身に着けている。ゴスロリというよりは魔女っぽい……外国の喪服みたいな感じだな。
前方左側の席には、パンクな化粧で、服装もピエロのように奇抜な少年。その割に隅っこに位置どっているし、視線は揺れて、どこかおどおどしている。
前方右側には、金髪碧眼のハリウッド俳優みたいな男。着ている服は白のスーツ。足を組んで、少しスカした雰囲気だ。
視線を自分の横のほうへ動かして、一瞬ぎょっとした。
大柄で顔に傷のある、殺し屋みたいな風貌の男が、薄暗い柱の影になった席に座っている。だぼっとしたコートにサングラス。これは話しかけづらいな……。
先ほどすれ違った銀髪の軍服美人は、中ほどの空いている席に座った。
自分を入れて、一、二、三……全部で七人。乗客はこれで全部だろうか。
みんな見た目は様々だ。
顔合わせということだったが、乗客たちはお互いの様子をうかがっている。
ゲームでは証拠を集め、事件の謎を解く。犯人をつきとめ、拘束することでゲームクリアとなる。
ときには他のプレイヤー同士、情報を交換した方が有利に進められるだろうが、忘れてはいけないのは、ここには犯人が紛れているということ。
犯人だって黙って隠れているわけじゃない。こちらが邪魔だと思ったら排除しようとしてくる。
そう、攻撃が可能なのだ。探偵役は、殺されてしまうとゲームオーバーとなってしまう。
プレイヤーによっては犯人でなくとも、わざとゲームを混乱させようとする者もいる。
味方か敵か、見極めも重要となる。
油断せずいかねば……早々にゲームオーバーになっては恥ずかしい。
部屋が暗くなり、前方にライトが照らされた。
演説台に顔を出したのは、かっちりとした制服を身に纏い、茶色の髪にたっぷりとした足のような髭を生やした中年の……「タコ」。
そう、タコだった。いや、宇宙人? 火星人か?(なお現代では火星に存在した生物はタコみたいな形ではなかったことが証明されている)
この船の船長は……七等身の海洋生物だったのだ。
「皆さん、こんにちは。宇宙船ヘリオポリスへようこそ。私が船長のベリル・ダオラです」
タコが喋ったぞ。一瞬、客席がざわっとしたが、これはゲーム。
動物のアバターがあるくらいだし、船長が喋るタコ宇宙人ということも、当然ありえるだろう。あぁびっくりした。
「最新鋭のこの船はほとんど自動航行をするので、名ばかりの船長ですが、何かお困りごとなどがありましたらいつでもお声かけください。
ワンマン運転ですので、スタッフは私と、食堂にいるコックの二名しかおりません。些細なことでも、私が対応させていただきますので」
割としっかりした説明。かっこいいタコだな。
船内の簡単な説明とスケジュールの連絡のあと、ゲームの仕様について注釈があった。
「現在、本船は試験航海をしており、抽選で選ばれた方のみが搭乗しています。人数を絞っているため、実は皆さんの中には、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)が紛れています。
本船のNPCは非常に高性能で、皆さんと同じように自分自身で考え、行動します。もし余裕があれば、誰がNPCなのかも、つきとめてみてください」
そう、試験運用の負荷を減らすため、乗客全員の中に「人」が入っているとは限らない。実在の人物ではないNPCキャラも含まれているらしい。
有人プレイヤーかNPCかどうかも、見極められれば大きな手掛かりになるだろうが……パッと見では違いがわからないな。
「おわかりかと思いますが、私は問答無用でNPCです。どうです? 本当の人間みたいでしょう?」
船長は、照れたように笑った。その表情の動きは自然で、言葉も滑らかだ。
NPCの賢さは、相当な域まで達している。高性能のAIを積んでいるらしいから、彼らとの邂逅も、楽しみな要素のひとつだ。
「それでは、三日間の宇宙の旅を存分にお楽しみください」
タコ船長がお辞儀をして、説明会はお開きとなった。
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