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4.宇宙間旅行にようこそ
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『あなたの役割は、探偵、です』
機械的な音声が、割り当てられた自分の役割を知らせた。
声は頭の中に直接響いてくる感じで、少々びっくりさせられる。
序盤、しばらくの間はチュートリアルが入るようだ。このあたりは従来のゲームの様式を守っている。
どうやら自分は、「探偵側」の立ち位置となった模様。排除されないよう身を守りながら、犯人捜しを追求すればいい役回りだ。
もしランダムで配置される役割で「犯人」とされた場合は、チュートリアル時点から「探偵」とは異なり、最初の事件までの特殊ミッションがあるらしい。
それはそれで興味を引かれるが……またの機会があれば、試してみたい気もする。
だが今回は、犯行バレを恐れて動きを制限される犯人と違い、探偵として自由に動ける分、自分の本来の目的には最適だったと思う。
『まずは、バーチャルの操作に、慣れてください』
ぽんぽんと指示が飛ぶ。歩いてみろってことか?
部屋の探索がてら、狭い室内をぐるりと移動して、クローゼットを開けてみた。
今着ているものと全く同じ形の服が二着、ハンガーにかかっている。
服装は、顔パーツと同じように、好みのデザインを事前に選んだものだ。
コスプレみたいなものから着ぐるみまでいろいろあったが、宇宙船が舞台ということも考慮して、無難に未来人っぽいイメージのカジュアルな服装にした。あまり目立ちすぎても困るし、このくらいでいいだろう。ご丁寧に、下段にはバスタオル、スリッパも用意してあった。
部屋はビジネスホテルのシングルルームみたいなもので、ベッドと机、冷蔵庫、入り口付近にはシャワーブースも備えてある。
ひと通り回って、直感的に動けることを確かめる。バーチャル酔いも、平気そうだ。
『あなたは、これから三日間、船内で宇宙間旅行を楽しむことになります』
旅行の終わり、それはすなわちゲームの制限時間ということだ。
この後、ほどなくして宇宙船ヘリオポリス内で殺人事件が起こる。
だが三日目には先の惑星に到着し、現地の宇宙警察が駆け付けて、事件はうやむやにされてしまうという筋書き。
よって探偵役は、三日目の正午までに、真相を解明する必要があるのだ。
この制限は、本当の自分の体へかかる負担も考えて、設定されている。
ゲーム内時間は三日でも、カプセルの中にいる本体の実際の睡眠時間は、最長で三時間。三時間で三日分の夢を見る計算。
これくらいの拘束時間なら危険性はないという触れ込みだが、電気信号をやりとりしているのだから、少なからず負荷が生じている。頭脳パズルをぶっつづけで遊んでいるようなものと思ってもらえばいい。
安全を確保できるプレイ時間の目安が、その目安だと現状は考えられている。
『操作に慣れたら、ブリーフィングルームに向かってください。船長から船内設備のご説明と、乗客の皆さんの顔合わせがあります』
――それじゃあ、行くか。
ひとつしかない部屋のドアへと足を向けた。
***
ドアノブのない、つるりとした扉の前に立つと、目の前に「OPEN?」と半透明パネルが表示される。
「YES」を選択すると、エアー音がしてドアがスライドした。
廊下に出ると、背後でプシュッと音を立てて、元どおりに扉が閉まる。
自室を振り返ると、ドア横の壁に、小さな読み取り用のパネルがあった。
部屋の鍵は、指紋認証になっているようだ。室内に鍵を忘れたまま外に出て、閉め出されることがないのは便利なことだ。
頭の右上に浮かんでいるホログラムのMAPには、現在地が青く、目的地が赤く表示されていた。ご丁寧に行き先を指し示す矢印に従って、足を進めた。
メタリックな壁面に覆われた廊下。
乗客の居室が並ぶこの廊下は、宇宙船の内部にあるため、窓はない。
未来的なデザインなのだろうが、無機質さを感じてしまう。もっと夢のあるデザインにした方がよかったんじゃないか?
プライバシーに配慮してか、部屋と部屋の間も距離がとってあり、全体的に薄暗い。
タイミングがずれてしまったのか、船に乗っているはずの他の客と出くわすことはなかった。先に行ってしまったのだろうか?
しばらく進んでいくと、急に視界が開けて、ようやくここが宇宙船の中だということがわかる景色が広がった。
大きな窓が連続して続く展望ラウンジ。外の景色を見るために点々と設置された、くつろぎ用のソファ。窓の向こうには、もちろん広大な宇宙空間が広がっている――。
(これはなかなかだぞ)
VR映像とはわかっていても、この目で見ている形になっているから、非常にリアルな光景。瞬く星々、ときおりほうき星も流れて、端に見えている宇宙船の翼部分もかっこいい。
ゆったりとしたソファに体を預け、広大な宇宙をぼんやり眺めていたい気持ちにかられたが――。
――ピコン。
『説明会がもうすぐ始まります。ブリーフィングルームへ向かってください。顔合わせに行かない選択もありますが、お勧めはできません』
どうやら先を急いだほうがよさそうだ。
機械的な音声が、割り当てられた自分の役割を知らせた。
声は頭の中に直接響いてくる感じで、少々びっくりさせられる。
序盤、しばらくの間はチュートリアルが入るようだ。このあたりは従来のゲームの様式を守っている。
どうやら自分は、「探偵側」の立ち位置となった模様。排除されないよう身を守りながら、犯人捜しを追求すればいい役回りだ。
もしランダムで配置される役割で「犯人」とされた場合は、チュートリアル時点から「探偵」とは異なり、最初の事件までの特殊ミッションがあるらしい。
それはそれで興味を引かれるが……またの機会があれば、試してみたい気もする。
だが今回は、犯行バレを恐れて動きを制限される犯人と違い、探偵として自由に動ける分、自分の本来の目的には最適だったと思う。
『まずは、バーチャルの操作に、慣れてください』
ぽんぽんと指示が飛ぶ。歩いてみろってことか?
部屋の探索がてら、狭い室内をぐるりと移動して、クローゼットを開けてみた。
今着ているものと全く同じ形の服が二着、ハンガーにかかっている。
服装は、顔パーツと同じように、好みのデザインを事前に選んだものだ。
コスプレみたいなものから着ぐるみまでいろいろあったが、宇宙船が舞台ということも考慮して、無難に未来人っぽいイメージのカジュアルな服装にした。あまり目立ちすぎても困るし、このくらいでいいだろう。ご丁寧に、下段にはバスタオル、スリッパも用意してあった。
部屋はビジネスホテルのシングルルームみたいなもので、ベッドと机、冷蔵庫、入り口付近にはシャワーブースも備えてある。
ひと通り回って、直感的に動けることを確かめる。バーチャル酔いも、平気そうだ。
『あなたは、これから三日間、船内で宇宙間旅行を楽しむことになります』
旅行の終わり、それはすなわちゲームの制限時間ということだ。
この後、ほどなくして宇宙船ヘリオポリス内で殺人事件が起こる。
だが三日目には先の惑星に到着し、現地の宇宙警察が駆け付けて、事件はうやむやにされてしまうという筋書き。
よって探偵役は、三日目の正午までに、真相を解明する必要があるのだ。
この制限は、本当の自分の体へかかる負担も考えて、設定されている。
ゲーム内時間は三日でも、カプセルの中にいる本体の実際の睡眠時間は、最長で三時間。三時間で三日分の夢を見る計算。
これくらいの拘束時間なら危険性はないという触れ込みだが、電気信号をやりとりしているのだから、少なからず負荷が生じている。頭脳パズルをぶっつづけで遊んでいるようなものと思ってもらえばいい。
安全を確保できるプレイ時間の目安が、その目安だと現状は考えられている。
『操作に慣れたら、ブリーフィングルームに向かってください。船長から船内設備のご説明と、乗客の皆さんの顔合わせがあります』
――それじゃあ、行くか。
ひとつしかない部屋のドアへと足を向けた。
***
ドアノブのない、つるりとした扉の前に立つと、目の前に「OPEN?」と半透明パネルが表示される。
「YES」を選択すると、エアー音がしてドアがスライドした。
廊下に出ると、背後でプシュッと音を立てて、元どおりに扉が閉まる。
自室を振り返ると、ドア横の壁に、小さな読み取り用のパネルがあった。
部屋の鍵は、指紋認証になっているようだ。室内に鍵を忘れたまま外に出て、閉め出されることがないのは便利なことだ。
頭の右上に浮かんでいるホログラムのMAPには、現在地が青く、目的地が赤く表示されていた。ご丁寧に行き先を指し示す矢印に従って、足を進めた。
メタリックな壁面に覆われた廊下。
乗客の居室が並ぶこの廊下は、宇宙船の内部にあるため、窓はない。
未来的なデザインなのだろうが、無機質さを感じてしまう。もっと夢のあるデザインにした方がよかったんじゃないか?
プライバシーに配慮してか、部屋と部屋の間も距離がとってあり、全体的に薄暗い。
タイミングがずれてしまったのか、船に乗っているはずの他の客と出くわすことはなかった。先に行ってしまったのだろうか?
しばらく進んでいくと、急に視界が開けて、ようやくここが宇宙船の中だということがわかる景色が広がった。
大きな窓が連続して続く展望ラウンジ。外の景色を見るために点々と設置された、くつろぎ用のソファ。窓の向こうには、もちろん広大な宇宙空間が広がっている――。
(これはなかなかだぞ)
VR映像とはわかっていても、この目で見ている形になっているから、非常にリアルな光景。瞬く星々、ときおりほうき星も流れて、端に見えている宇宙船の翼部分もかっこいい。
ゆったりとしたソファに体を預け、広大な宇宙をぼんやり眺めていたい気持ちにかられたが――。
――ピコン。
『説明会がもうすぐ始まります。ブリーフィングルームへ向かってください。顔合わせに行かない選択もありますが、お勧めはできません』
どうやら先を急いだほうがよさそうだ。
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