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9.最初の被害者(1)
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三階は、エレベーターホールから一本の廊下が伸びる単純な構造になっている。
まっすぐ先に進んでいくと、途中で「船長室」の表札がある部屋の前を通りかかった。部屋は閉め切られていて、船長本人ではないから当然、その扉を開けることはできない。
そのまま奥へ進むと、突き当りに人だかりが見えてきた。
「ライさん……」
エレノアが気づいて、声をかけてきた。隣にはヒカルもいる。
そしてもうひとり、黒ずくめのドレスを着た女性の姿もあった。
黒衣の女性は「宇佐美」と名乗った。この場所へいち早く駆け付けたが、権限がないために扉は開かず、どうしようかと思っていたところに、ヒカルとエレノアが追いついたらしい。
扉の上には「ブリッジ兼コントロールルーム」と表札がある。扉をノックしてみたが、中から反応はない。
そうこうしているうちに、次のエレベーターで上がってきたのだろう、ツインテールの「あーちゃん」が来て、その後に少し間を置いてピエロ化粧の「夢人」が合流した。
最後にまた少し間を置いて、殺し屋風の男「黒須」が姿を見せる。
流れで名乗りも済ませ、乗客七人がここに揃ったわけだが――。
ヒカルが顎に手を当てながら、言った。
「権限がないと扉が開かないとは、どうしたものか……。もしかして船長は中にはいないのか?」
エレノアが答える。
「だけど、緊急アラームのあと、なんの音沙汰もないのは妙ですよね。私たちがこれだけ騒いでいるのに、姿を見せないのもおかしいです」
首を傾げながら、
「扉、壊すしかないんじゃない?」
などと言いだすあーちゃん。いやいや、そんな力業はいくらなんでも反則だから……。
俺は、ごく常識的に考えて、なんとなく閃いたことを提案した。なんせ本業プログラマーだから、論理的に考えるのは割と得意なのだ。
「どちらにしろ、コントロールルーム内で問題が起きていないか確かめたいところですね。もしかしたら船長の身になにかあったのかもしれないし……船長が動けず、返事もできない状況にあるとすれば――もうひとりのスタッフに緊急時の対応を聞いてみるのがいいんじゃないですかね?」
そう、犯人でも探偵でもない完全中立のNPC。食堂のマーリンさんだ。
その案に全員の同意を得たので、あーちゃん、夢人、ヒカル、黒須にはその場に待機してもらうことにして、こちらはエレノア・宇佐美の女性ふたりを連れ、一階の食堂へと向かった。
***
「なるほどね。確かに、船長に通信を送ってみたけど、応答がないわ……どうしましょう。船長からワタシに管理者権限を移管して、遠隔操作でコントロールルームの扉を開くことは可能だけど……」
食堂に行き、マーリンさんに事情を話した。
運航中のコントロールルームに乗客を入れるなんて、通常はありえない。マーリンさんも最初は渋っていたが、緊急事態と不測の状況かもしれないことを強調して説得すると、
「そうね……ワタシはこんな体だから、ここから動くことはできないし。なにか事故でもあったのなら、誰かに確かめてもらう必要がある……」
そう言って首を縦に振ると、緊急時対策マニュアルにのっとってなんらかの手続きをし、船長権限で開けられる部屋のロック解除を行ってくれた。
***
急ぎ三階の奥へ戻ると、待機組の四人はすでに解除された扉からコントロールルームの中に立ち入っていた。正面の奥のブリッジを囲むようにして、一様にとまどった様子で立ち尽くしている。
ブリッジ中央に設置されている船長用の操縦席。席に面しているガラス張りの窓の向こうには、無限の宇宙が広がっている。
航行を管理する機材類もかっこよく、メインパネルにはさまざまなデータが表示され、船自体は通常運転中であったが――。
「どうなって……、あっ……」
近づいて、視界に飛び込んできたのは、メインパネルの前に仰向けで倒れているタコ船長の姿だった。
まっすぐ先に進んでいくと、途中で「船長室」の表札がある部屋の前を通りかかった。部屋は閉め切られていて、船長本人ではないから当然、その扉を開けることはできない。
そのまま奥へ進むと、突き当りに人だかりが見えてきた。
「ライさん……」
エレノアが気づいて、声をかけてきた。隣にはヒカルもいる。
そしてもうひとり、黒ずくめのドレスを着た女性の姿もあった。
黒衣の女性は「宇佐美」と名乗った。この場所へいち早く駆け付けたが、権限がないために扉は開かず、どうしようかと思っていたところに、ヒカルとエレノアが追いついたらしい。
扉の上には「ブリッジ兼コントロールルーム」と表札がある。扉をノックしてみたが、中から反応はない。
そうこうしているうちに、次のエレベーターで上がってきたのだろう、ツインテールの「あーちゃん」が来て、その後に少し間を置いてピエロ化粧の「夢人」が合流した。
最後にまた少し間を置いて、殺し屋風の男「黒須」が姿を見せる。
流れで名乗りも済ませ、乗客七人がここに揃ったわけだが――。
ヒカルが顎に手を当てながら、言った。
「権限がないと扉が開かないとは、どうしたものか……。もしかして船長は中にはいないのか?」
エレノアが答える。
「だけど、緊急アラームのあと、なんの音沙汰もないのは妙ですよね。私たちがこれだけ騒いでいるのに、姿を見せないのもおかしいです」
首を傾げながら、
「扉、壊すしかないんじゃない?」
などと言いだすあーちゃん。いやいや、そんな力業はいくらなんでも反則だから……。
俺は、ごく常識的に考えて、なんとなく閃いたことを提案した。なんせ本業プログラマーだから、論理的に考えるのは割と得意なのだ。
「どちらにしろ、コントロールルーム内で問題が起きていないか確かめたいところですね。もしかしたら船長の身になにかあったのかもしれないし……船長が動けず、返事もできない状況にあるとすれば――もうひとりのスタッフに緊急時の対応を聞いてみるのがいいんじゃないですかね?」
そう、犯人でも探偵でもない完全中立のNPC。食堂のマーリンさんだ。
その案に全員の同意を得たので、あーちゃん、夢人、ヒカル、黒須にはその場に待機してもらうことにして、こちらはエレノア・宇佐美の女性ふたりを連れ、一階の食堂へと向かった。
***
「なるほどね。確かに、船長に通信を送ってみたけど、応答がないわ……どうしましょう。船長からワタシに管理者権限を移管して、遠隔操作でコントロールルームの扉を開くことは可能だけど……」
食堂に行き、マーリンさんに事情を話した。
運航中のコントロールルームに乗客を入れるなんて、通常はありえない。マーリンさんも最初は渋っていたが、緊急事態と不測の状況かもしれないことを強調して説得すると、
「そうね……ワタシはこんな体だから、ここから動くことはできないし。なにか事故でもあったのなら、誰かに確かめてもらう必要がある……」
そう言って首を縦に振ると、緊急時対策マニュアルにのっとってなんらかの手続きをし、船長権限で開けられる部屋のロック解除を行ってくれた。
***
急ぎ三階の奥へ戻ると、待機組の四人はすでに解除された扉からコントロールルームの中に立ち入っていた。正面の奥のブリッジを囲むようにして、一様にとまどった様子で立ち尽くしている。
ブリッジ中央に設置されている船長用の操縦席。席に面しているガラス張りの窓の向こうには、無限の宇宙が広がっている。
航行を管理する機材類もかっこよく、メインパネルにはさまざまなデータが表示され、船自体は通常運転中であったが――。
「どうなって……、あっ……」
近づいて、視界に飛び込んできたのは、メインパネルの前に仰向けで倒れているタコ船長の姿だった。
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