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11.初めての推理(1)
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「なんだよ、一体」
水を差されたと思ったのか、ヒカルが棘のある口調と視線をこちらに向けてくる。自分の華麗な推理にケチをつけるなといわんばかりの態度だ。
(ああ、ケチならあるとも。少し……思いついたことがあるんだ)
俺は聞き役に徹していたマーリンさんに、ある確信をもって尋ねた。
「マーリンさん。確認したいのですが……船長室とコントロールルームに入れるのは、本当に船長だけでしたか?」
マーリンさんは答えた。
「ええ、そうよ。乗客の部屋と同じく、指紋認証で権限を設定しているから」
ヒカルが「なにを今更、当たり前のことを」と吐き捨て、こちらを睨みつけていたが、そんなのはマルっと無視して話を続けさせてもらう。物事には段取りが必要なのだ。
「実は、先ほど廊下で自動巡回型のお掃除ロボットを目にしたのですが」
廊下で遇った、ドラム缶ロボットを思い浮かべながら尋ねた。
「あら、にゃいぼに遇ったの? 珍しいわね。お掃除している姿なんてお客さんになるべく見られない方がいいから、なるべくお客さんに遇わないよう、黒子に徹しているはずなんだけど」
「二階廊下で転んだらしくて、動けなくなっていたんですよ」
「あぁ、二階担当の子はおっちょこちょいだから……」
「そいつは、部屋の掃除をすると言っていました。僕ら三日間も宿泊するわけですが、その間の部屋の清掃はどういう手筈になっているんでしょうか?」
「客室にも、一日一回、お掃除に入らせてもらうわよ。基本的にはお客さんが部屋を出ている日中を狙って、スケジュールに沿って動いているわ。センサーで判断して、お客さんが部屋にいない間に入室してお掃除させてもらうの。
……それから、もしお客さんが部屋にこもりっきりだったりして掃除の時間とかち合ってしまった場合は、ピンポンしてお掃除を希望するか聞いてから入室する場合も……あっ」
そこまで言って、マーリンさんが葉っぱの手を自らの口に当て、驚いた表情で押し黙った。そして、おずおずと新たな事実を口にする。
「ごめんなさい。船長以外にも、船長権限の部屋に入れる存在がいたわ。三階も、お部屋のお掃除のために、三階担当のにゃいぼが巡回して入室しているの。船長室やコントロールルームも例外ではないわ」
メンバーの間に、ざわりと動揺が広がった。
つまり、にゃいぼは全室の合鍵を持っているということだ。
あーちゃんが言った。
「えっ……じゃあ、犯人はまさかのお掃除ロボット……?」
いや、さすがににゃいぼが殺人事件の犯人ということはないだろうが……。
「にゃいぼが犯人なんて、そんなオチはないわよ? 簡単な受け答えくらいはできるけど、お掃除の使命第一の、旧式ロボットだから――。だけどもし心配なら、皆さんのお部屋への入室を停止させてもらうけど……」
「にゃいぼを疑ってはいませんが、そうですね……その必要もあるかもしれないな……。
マーリンさん、三階担当のにゃいぼのスケジュールはどうなっているかわかりますか?」
「三階のにゃいぼは、廊下の清掃を終えたらコントロールルームへ入って、そこを綺麗にしたら、次は船長のお部屋ね。それが終わったら、にゃいぼの収納場所へ自動で戻るわ。廊下の途中ににゃいぼ用通用口があるのよ。壁と同化して、傍目には見分けがつかないと思うけれど」
「おい……だから、ど、どういうことなんだ? 掃除ロボットが、事件となんの関係がある?」
ヒカルが、苛立ちを滲ませた声で会話に割り込んでくる。自分の推理を白紙にされ、混乱しているのだろう。
水を差されたと思ったのか、ヒカルが棘のある口調と視線をこちらに向けてくる。自分の華麗な推理にケチをつけるなといわんばかりの態度だ。
(ああ、ケチならあるとも。少し……思いついたことがあるんだ)
俺は聞き役に徹していたマーリンさんに、ある確信をもって尋ねた。
「マーリンさん。確認したいのですが……船長室とコントロールルームに入れるのは、本当に船長だけでしたか?」
マーリンさんは答えた。
「ええ、そうよ。乗客の部屋と同じく、指紋認証で権限を設定しているから」
ヒカルが「なにを今更、当たり前のことを」と吐き捨て、こちらを睨みつけていたが、そんなのはマルっと無視して話を続けさせてもらう。物事には段取りが必要なのだ。
「実は、先ほど廊下で自動巡回型のお掃除ロボットを目にしたのですが」
廊下で遇った、ドラム缶ロボットを思い浮かべながら尋ねた。
「あら、にゃいぼに遇ったの? 珍しいわね。お掃除している姿なんてお客さんになるべく見られない方がいいから、なるべくお客さんに遇わないよう、黒子に徹しているはずなんだけど」
「二階廊下で転んだらしくて、動けなくなっていたんですよ」
「あぁ、二階担当の子はおっちょこちょいだから……」
「そいつは、部屋の掃除をすると言っていました。僕ら三日間も宿泊するわけですが、その間の部屋の清掃はどういう手筈になっているんでしょうか?」
「客室にも、一日一回、お掃除に入らせてもらうわよ。基本的にはお客さんが部屋を出ている日中を狙って、スケジュールに沿って動いているわ。センサーで判断して、お客さんが部屋にいない間に入室してお掃除させてもらうの。
……それから、もしお客さんが部屋にこもりっきりだったりして掃除の時間とかち合ってしまった場合は、ピンポンしてお掃除を希望するか聞いてから入室する場合も……あっ」
そこまで言って、マーリンさんが葉っぱの手を自らの口に当て、驚いた表情で押し黙った。そして、おずおずと新たな事実を口にする。
「ごめんなさい。船長以外にも、船長権限の部屋に入れる存在がいたわ。三階も、お部屋のお掃除のために、三階担当のにゃいぼが巡回して入室しているの。船長室やコントロールルームも例外ではないわ」
メンバーの間に、ざわりと動揺が広がった。
つまり、にゃいぼは全室の合鍵を持っているということだ。
あーちゃんが言った。
「えっ……じゃあ、犯人はまさかのお掃除ロボット……?」
いや、さすがににゃいぼが殺人事件の犯人ということはないだろうが……。
「にゃいぼが犯人なんて、そんなオチはないわよ? 簡単な受け答えくらいはできるけど、お掃除の使命第一の、旧式ロボットだから――。だけどもし心配なら、皆さんのお部屋への入室を停止させてもらうけど……」
「にゃいぼを疑ってはいませんが、そうですね……その必要もあるかもしれないな……。
マーリンさん、三階担当のにゃいぼのスケジュールはどうなっているかわかりますか?」
「三階のにゃいぼは、廊下の清掃を終えたらコントロールルームへ入って、そこを綺麗にしたら、次は船長のお部屋ね。それが終わったら、にゃいぼの収納場所へ自動で戻るわ。廊下の途中ににゃいぼ用通用口があるのよ。壁と同化して、傍目には見分けがつかないと思うけれど」
「おい……だから、ど、どういうことなんだ? 掃除ロボットが、事件となんの関係がある?」
ヒカルが、苛立ちを滲ませた声で会話に割り込んでくる。自分の推理を白紙にされ、混乱しているのだろう。
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