Murder Mystery VR ~SF電脳空間でミステリー体験? VRの世界へようこそ~

冴季栄瑠

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12.一日目・夜 整理タイム(1)

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 食堂での話し合いをいったん解散し、自室へと戻った。

 ベッドにごろんと寝転がり、気持ちを落ち着ける。
 部屋はとても静かで、通風口からのかすかな風の流れは感じるものの、別室や廊下など外部の物音は聞こえてこない。

 にゃいぼのお掃除スケジュールは、マーリンさんに頼んで全室停止してもらった。にゃいぼが入室するのにくっついて犯人に部屋に入られては、防犯もなにもあったものじゃないからな。

 頭をフル回転させたし、お互いに疑いあう緊張感も手伝って、精神的にはかなり疲労を感じている。
 こうして寝転がっていると眠くなるけど、寝てる場合じゃないんだよな……。

(よし。自分なりに、ここまでの事件をまとめてみよう……)

 ピコンと呼び出せるパーソナルホログラフィにもメモ機能はあるのだが、ここはあえて机に用意してあるペンとメモを使って、思いつくまま書き出していくことにした。
 今は義務教育の現場ですら、筆記具よりも画面上のタッチパッドを触ることが多くなってしまったような電脳社会だが、ゆっくりと考えを整理して頭に入れるには、これが一番効率がいいと思うのだ。

 スラスラと、握ったペンが紙の上を走りだす――。

+++【事件メモ】+++

①被害者はダオラ船長。
 昼に食堂でマーリンさんに聞いた話では、船長は見た目通りの(?)善人ではなく、裏では悪どい組織と繋がり密売などを行っている、というような噂があるとのこと。犯行動機はこれかもしれない。

②凶器のナイフ。どこにでもありそうな、小型だが殺傷するのに十分な長さがあるもの。犯人が用意していたのだろうから、もとから船長殺害を狙っていた裏付けと考えられる。

③犯行時、コントロールルームから離れた二階の宿泊ルーム区画で顔を合わせた俺、エレノア、ヒカルは、今のところアリバイ成立に近いと考えられている。

④犯人はアリバイ工作をするため、にゃいぼを利用した可能性がある。だが、それがフェイクという可能性も捨てきれない。それどころか、すべてを覆されるケースも――?

+++++++

 と、そこまで記入して、手を止めた。
 腕を組み、「うーん」と唸り声を出しながら、瞼を閉じる。
 どれも曖昧で想像の域を出ないが、その中でも③、④については特に検討の必要があるんだよなぁ。

 皆そこには触れたがらないだろうから話には出さなかったが……各々がひとつ与えられている「特殊能力」を考えると、ますますややこしいことになるのだ。

 たとえば能力が「テレポート」できるようなものだったら、二階にいた俺、エレノア、ヒカルにも犯行が可能になってしまう。
 または「すり抜け」能力があれば、扉のオートロックの権限設定など意味をなさないし……。

(――だけど、そんなチート的な技を許してしまえば、推理どころではなくなるから、上記のような極端なケースはさすがにないと思うんだよな……)

 もともとMMVRの「特殊能力」については、搭載するかしないか、社内で意見が割れていたと聞いている。結局、「ただの推理ゲームだと工夫がないでしょ。ゲームだし派手にいこうよ、派手に」というプロデューサーの意見で採用の方向に進んだみたいだが、そんな機能は入れないほうが、単純で良かったんじゃないのかなぁ……。

 特殊能力の味付けは、自分が担当した基幹設計よりもあとで、別チームが行った仕事だ。どんな能力を組み込んだのかは、こちらは聞かされていない。

(というか、知る必要もなかったので、確認しようという気もなかったんだよな……。まさか自分がプレイするとは思っていなかったし……)

 今はただ希望的観測として、特殊能力はおそらく攻撃的なものではなく、「身を守る」ほうで発揮するような類いにしてあるんじゃないかと思う――多分。
 でないと、設定をミスった能力がひとつあるだけで、ゲームバランスが崩壊してしまう。公開直後に大炎上するような危険は、さすがにおかさないのではないか――。

(……でもな、絶対あるんだよなぁ。アホかと思う爆弾がぶっこんであって、気づいてもそのままにしておくやつ。「何か言われたらあとでアップデートで直せばいっかー」みたいな無責任なのが……)

 ……まぁ、想像に怯えていても疲れるだけだ。今のところは物理的な流れで事件が進んでいるから、考えすぎずに推理を進めたほうがいいかもしれない。
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