Murder Mystery VR ~SF電脳空間でミステリー体験? VRの世界へようこそ~

冴季栄瑠

文字の大きさ
31 / 43

22.食料倉庫の怪

しおりを挟む
 マーリンさんに食料庫を調査させてほしいと頼むと、「ほんとはいけないんだけどね。正直、気になって仕方がなくて……見に行ってもらえると助かるわ」と言って、ロックを遠隔解除してくれた。コックとしては、自分の管轄である倉庫で起こった謎を、そのままにはしたくなかったのだろう。

 マーリンさんは基本、食堂を離れることはできないので、行き方だけ教えてもらって、バーチャルマップに目印を付けてもらう。

 通常は一般乗客は入ることができない裏通路を通り、食料が積み込まれている倉庫へと向かった。

(ええと、ここを道なりに行って……途中、左の壁沿いに該当の部屋があるはず……)

『ガガガ、ピピピピ……』

 すると、どこかで聞いたことがある音が、耳に飛び込んでくる。

『緊急事態……ヘルプ……へールプ……』

 なんだか、デジャブ……。
 廊下の向こうを見ると、案の定、お掃除ロボットらしき物体が横たわっている。

 少し距離はあるが、直線上の廊下の先に、でんと横たわっている黒いドラム缶ボディ。

 おそらく宿泊ルーム区画を任されていた、あいつだ。あのエリアの掃除は中止したから、代わりにこちらに回されたか。そんで転んで動けなくなっていると。あいつは何回すっ転がったら気が済むんだ?

(どうするか……)

 横を見ると「第一倉庫」の札が見えていた。目的地は、目の前だ。

『ヘルプ……ヘルプ……』

 にゃいぼは相変わらず音声を発していたが、あいつ本当に重いんだよな……。ひとりで起こすのは重労働なのだ。

『カタジケノウゴザルガ! スケダチオタノミモウス!』

 なんでいきなり武士語なんだ。日本人を、いや俺をなめてるのか?
 声はかけずにいたが、相手はこちらのことを感知したのだろう。焦れた様子で暴れる動きが激しくなり、少々鬱陶しい。

「わかったわかった、あとで戻してやるから」

 遊んでいる暇はない。マーリンさんは、特別にロックを開けてくれている。あまり遅くなると心配するかもしれないしな。
 とりあえず先に調査を――ここへ来た目的を果たそう。
 にゃいぼはひとまず置いておくことにして、倉庫に足を向けた。

***

 倉庫内――。
 ドアが開き、室内に足を踏み入れると、自動的に明かりがついた。

 雑然と積み上げられたダンボールや麻袋、コンテナ類。品物が傷まないよう低い室温に設定されているのだろう、非常に肌寒く感じる。
 見回したところ、人影はもちろん、ない。

 作業スペースゆえか自動扉の検知動作はゆっくりで、こちらが部屋の中央に進んだ頃に、背後で扉が閉まる音がした。
 それを横目で見届けてから、ふぅと息をつき、適当にそばにある棚から順に調べていくことにする。
 
「……? これは」

 さっそく異常を発見した。
 籠に入っている野菜類が、不自然に食い荒らされている。『倉庫の食料が減っている』と言っていたマーリンさんの言葉は本当だったらしい。

 しかし、この部屋には普段はロックがかけられているはず。一体どうやって?
 例によって搬送用ロボットにくっついて侵入したか。それとも、もとからこの場所に、何者かが忍び込んでいたのだろうか。

 緊張感を持ったまま庫内を調べていったが、人が入りそうなコンテナやロッカーを開けてみても、不審者を見つけることはできなかった。

 だが、収穫はあった。ところどころに例の「赤いねばねば」がこびりついているのを発見したのだ。

「やっぱりな――」

 二階のロビーで見つけた不審な痕跡は、この倉庫に繋がっていた。
 なんとなく、頭の中で「点と点」が繋がりつつあった。

 赤いぬるぬるをつけた犯人……いや、もしかしたら、赤いぬるぬるそのものが……。

 ――そのときだった。

『ギュイイン、ギュイイン……!』

 耳障りな警報音が鳴り響き、思わず足を浮かせるほどに竦みあがる。

「な、なんだ……?」

『ハッチを……開きます……ハッチを……開きます……倉庫内に人員が残っていないか……確認してください……』

 は? なんだって?

 ここは宇宙船の倉庫だ。出発前は、外からキャリーで積み荷を運び込んだりもするから、当然ハッチは開閉するし、外部との通用口にもなっている。
 だけどここは――宇宙だぞ? 今開いたら、一体どうなると思う?

 何かの間違いだろう。きっと、放送だけ流れる防災訓練のようなものに違いない――そう思いながら、視線は自然とハッチのほうへ吸い寄せられる。

 出入り口の上部にある緑ランプが、赤点滅に変わった。
 巨大な船の蓋にあたる部分が耳障りな音を立て、空気を巻き込んで動きはじめた。

 倉庫内の荷物が一斉にスライドし、我先に外へ飛び出さんとばかりに、一方へと押し寄せていく。

「……まずい……逃げ――」

 急いで船内の廊下に避難しなければ。だが扉に向かって踵を返したときには、もう手遅れだった。足が床から離れて、体が浮遊する。無重力空間のほうへと引っ張られる!
 追撃のように飛んできたスチール棚が体に激突し、一緒に空気の流れに巻き込まれた。

 そして開いたハッチから、宇宙服も着ないまま、暗い宇宙空間へと放り出されて――。

(嘘だろ……)

 視界が暗くなり、「GAME OVER」の文字が滲み出すように脳裏を埋め尽くしていった。どうやら自分は、ここまでらしい……。

 …………。
 ………。
 ……。

 特殊能力「コンティニュー」を使う?(使用回数制限 あと5回)
 →する
  しない
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

処理中です...