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22.食料倉庫の怪
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マーリンさんに食料庫を調査させてほしいと頼むと、「ほんとはいけないんだけどね。正直、気になって仕方がなくて……見に行ってもらえると助かるわ」と言って、ロックを遠隔解除してくれた。コックとしては、自分の管轄である倉庫で起こった謎を、そのままにはしたくなかったのだろう。
マーリンさんは基本、食堂を離れることはできないので、行き方だけ教えてもらって、バーチャルマップに目印を付けてもらう。
通常は一般乗客は入ることができない裏通路を通り、食料が積み込まれている倉庫へと向かった。
(ええと、ここを道なりに行って……途中、左の壁沿いに該当の部屋があるはず……)
『ガガガ、ピピピピ……』
すると、どこかで聞いたことがある音が、耳に飛び込んでくる。
『緊急事態……ヘルプ……へールプ……』
なんだか、デジャブ……。
廊下の向こうを見ると、案の定、お掃除ロボットらしき物体が横たわっている。
少し距離はあるが、直線上の廊下の先に、でんと横たわっている黒いドラム缶ボディ。
おそらく宿泊ルーム区画を任されていた、あいつだ。あのエリアの掃除は中止したから、代わりにこちらに回されたか。そんで転んで動けなくなっていると。あいつは何回すっ転がったら気が済むんだ?
(どうするか……)
横を見ると「第一倉庫」の札が見えていた。目的地は、目の前だ。
『ヘルプ……ヘルプ……』
にゃいぼは相変わらず音声を発していたが、あいつ本当に重いんだよな……。ひとりで起こすのは重労働なのだ。
『カタジケノウゴザルガ! スケダチオタノミモウス!』
なんでいきなり武士語なんだ。日本人を、いや俺をなめてるのか?
声はかけずにいたが、相手はこちらのことを感知したのだろう。焦れた様子で暴れる動きが激しくなり、少々鬱陶しい。
「わかったわかった、あとで戻してやるから」
遊んでいる暇はない。マーリンさんは、特別にロックを開けてくれている。あまり遅くなると心配するかもしれないしな。
とりあえず先に調査を――ここへ来た目的を果たそう。
にゃいぼはひとまず置いておくことにして、倉庫に足を向けた。
***
倉庫内――。
ドアが開き、室内に足を踏み入れると、自動的に明かりがついた。
雑然と積み上げられたダンボールや麻袋、コンテナ類。品物が傷まないよう低い室温に設定されているのだろう、非常に肌寒く感じる。
見回したところ、人影はもちろん、ない。
作業スペースゆえか自動扉の検知動作はゆっくりで、こちらが部屋の中央に進んだ頃に、背後で扉が閉まる音がした。
それを横目で見届けてから、ふぅと息をつき、適当にそばにある棚から順に調べていくことにする。
「……? これは」
さっそく異常を発見した。
籠に入っている野菜類が、不自然に食い荒らされている。『倉庫の食料が減っている』と言っていたマーリンさんの言葉は本当だったらしい。
しかし、この部屋には普段はロックがかけられているはず。一体どうやって?
例によって搬送用ロボットにくっついて侵入したか。それとも、もとからこの場所に、何者かが忍び込んでいたのだろうか。
緊張感を持ったまま庫内を調べていったが、人が入りそうなコンテナやロッカーを開けてみても、不審者を見つけることはできなかった。
だが、収穫はあった。ところどころに例の「赤いねばねば」がこびりついているのを発見したのだ。
「やっぱりな――」
二階のロビーで見つけた不審な痕跡は、この倉庫に繋がっていた。
なんとなく、頭の中で「点と点」が繋がりつつあった。
赤いぬるぬるをつけた犯人……いや、もしかしたら、赤いぬるぬるそのものが……。
――そのときだった。
『ギュイイン、ギュイイン……!』
耳障りな警報音が鳴り響き、思わず足を浮かせるほどに竦みあがる。
「な、なんだ……?」
『ハッチを……開きます……ハッチを……開きます……倉庫内に人員が残っていないか……確認してください……』
は? なんだって?
ここは宇宙船の倉庫だ。出発前は、外からキャリーで積み荷を運び込んだりもするから、当然ハッチは開閉するし、外部との通用口にもなっている。
だけどここは――宇宙だぞ? 今開いたら、一体どうなると思う?
何かの間違いだろう。きっと、放送だけ流れる防災訓練のようなものに違いない――そう思いながら、視線は自然とハッチのほうへ吸い寄せられる。
出入り口の上部にある緑ランプが、赤点滅に変わった。
巨大な船の蓋にあたる部分が耳障りな音を立て、空気を巻き込んで動きはじめた。
倉庫内の荷物が一斉にスライドし、我先に外へ飛び出さんとばかりに、一方へと押し寄せていく。
「……まずい……逃げ――」
急いで船内の廊下に避難しなければ。だが扉に向かって踵を返したときには、もう手遅れだった。足が床から離れて、体が浮遊する。無重力空間のほうへと引っ張られる!
追撃のように飛んできたスチール棚が体に激突し、一緒に空気の流れに巻き込まれた。
そして開いたハッチから、宇宙服も着ないまま、暗い宇宙空間へと放り出されて――。
(嘘だろ……)
視界が暗くなり、「GAME OVER」の文字が滲み出すように脳裏を埋め尽くしていった。どうやら自分は、ここまでらしい……。
…………。
………。
……。
特殊能力「コンティニュー」を使う?(使用回数制限 あと5回)
→する
しない
マーリンさんは基本、食堂を離れることはできないので、行き方だけ教えてもらって、バーチャルマップに目印を付けてもらう。
通常は一般乗客は入ることができない裏通路を通り、食料が積み込まれている倉庫へと向かった。
(ええと、ここを道なりに行って……途中、左の壁沿いに該当の部屋があるはず……)
『ガガガ、ピピピピ……』
すると、どこかで聞いたことがある音が、耳に飛び込んでくる。
『緊急事態……ヘルプ……へールプ……』
なんだか、デジャブ……。
廊下の向こうを見ると、案の定、お掃除ロボットらしき物体が横たわっている。
少し距離はあるが、直線上の廊下の先に、でんと横たわっている黒いドラム缶ボディ。
おそらく宿泊ルーム区画を任されていた、あいつだ。あのエリアの掃除は中止したから、代わりにこちらに回されたか。そんで転んで動けなくなっていると。あいつは何回すっ転がったら気が済むんだ?
(どうするか……)
横を見ると「第一倉庫」の札が見えていた。目的地は、目の前だ。
『ヘルプ……ヘルプ……』
にゃいぼは相変わらず音声を発していたが、あいつ本当に重いんだよな……。ひとりで起こすのは重労働なのだ。
『カタジケノウゴザルガ! スケダチオタノミモウス!』
なんでいきなり武士語なんだ。日本人を、いや俺をなめてるのか?
声はかけずにいたが、相手はこちらのことを感知したのだろう。焦れた様子で暴れる動きが激しくなり、少々鬱陶しい。
「わかったわかった、あとで戻してやるから」
遊んでいる暇はない。マーリンさんは、特別にロックを開けてくれている。あまり遅くなると心配するかもしれないしな。
とりあえず先に調査を――ここへ来た目的を果たそう。
にゃいぼはひとまず置いておくことにして、倉庫に足を向けた。
***
倉庫内――。
ドアが開き、室内に足を踏み入れると、自動的に明かりがついた。
雑然と積み上げられたダンボールや麻袋、コンテナ類。品物が傷まないよう低い室温に設定されているのだろう、非常に肌寒く感じる。
見回したところ、人影はもちろん、ない。
作業スペースゆえか自動扉の検知動作はゆっくりで、こちらが部屋の中央に進んだ頃に、背後で扉が閉まる音がした。
それを横目で見届けてから、ふぅと息をつき、適当にそばにある棚から順に調べていくことにする。
「……? これは」
さっそく異常を発見した。
籠に入っている野菜類が、不自然に食い荒らされている。『倉庫の食料が減っている』と言っていたマーリンさんの言葉は本当だったらしい。
しかし、この部屋には普段はロックがかけられているはず。一体どうやって?
例によって搬送用ロボットにくっついて侵入したか。それとも、もとからこの場所に、何者かが忍び込んでいたのだろうか。
緊張感を持ったまま庫内を調べていったが、人が入りそうなコンテナやロッカーを開けてみても、不審者を見つけることはできなかった。
だが、収穫はあった。ところどころに例の「赤いねばねば」がこびりついているのを発見したのだ。
「やっぱりな――」
二階のロビーで見つけた不審な痕跡は、この倉庫に繋がっていた。
なんとなく、頭の中で「点と点」が繋がりつつあった。
赤いぬるぬるをつけた犯人……いや、もしかしたら、赤いぬるぬるそのものが……。
――そのときだった。
『ギュイイン、ギュイイン……!』
耳障りな警報音が鳴り響き、思わず足を浮かせるほどに竦みあがる。
「な、なんだ……?」
『ハッチを……開きます……ハッチを……開きます……倉庫内に人員が残っていないか……確認してください……』
は? なんだって?
ここは宇宙船の倉庫だ。出発前は、外からキャリーで積み荷を運び込んだりもするから、当然ハッチは開閉するし、外部との通用口にもなっている。
だけどここは――宇宙だぞ? 今開いたら、一体どうなると思う?
何かの間違いだろう。きっと、放送だけ流れる防災訓練のようなものに違いない――そう思いながら、視線は自然とハッチのほうへ吸い寄せられる。
出入り口の上部にある緑ランプが、赤点滅に変わった。
巨大な船の蓋にあたる部分が耳障りな音を立て、空気を巻き込んで動きはじめた。
倉庫内の荷物が一斉にスライドし、我先に外へ飛び出さんとばかりに、一方へと押し寄せていく。
「……まずい……逃げ――」
急いで船内の廊下に避難しなければ。だが扉に向かって踵を返したときには、もう手遅れだった。足が床から離れて、体が浮遊する。無重力空間のほうへと引っ張られる!
追撃のように飛んできたスチール棚が体に激突し、一緒に空気の流れに巻き込まれた。
そして開いたハッチから、宇宙服も着ないまま、暗い宇宙空間へと放り出されて――。
(嘘だろ……)
視界が暗くなり、「GAME OVER」の文字が滲み出すように脳裏を埋め尽くしていった。どうやら自分は、ここまでらしい……。
…………。
………。
……。
特殊能力「コンティニュー」を使う?(使用回数制限 あと5回)
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