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28.真犯人は、おまえだ
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視線を向けられたヒカルは一瞬言葉に詰まったものの、頬を引き攣らせ、言った。
「なんだと? 俺に言ってるのか? なにを根拠に……」
「根拠のひとつとして、NPCの特定ですが……マーリンさんの劇薬、いや、劇的なサービスドリンク。あれは食堂を訪れた全員に配っているそうです。その時の反応を確認しました。
マーリンさん、もう一度聞いてもいいですか? ドリンクを口にして、反応が一般的でなかった人物は、誰でしたか?」
「ワタシのスペシャルドリンクを飲んでも平然としていたのは――ヒカルくんと、エレノアさんね」
「なっ……」ヒカルが、目を見開いてマーリンさんを見る。
「……」エレノアは、黙ったままだ。
「NPCの人は、味覚がちょっと鈍いらしいのよ。デリシャスな刺激を体験できないなんて、可哀想よね」
……可哀想かどうかは、置いておいて。
反応が薄かった人物として挙げられたのは――エレノアと、ヒカル。
「エレノアさんには、黒須さんの事件のアリバイがある。ということは、犯人は……あなたしかいないんです。ヒカルさん」
「ばかばかしい!」
ヒカルは吐いて捨てるように言った。
「俺の能力は透明なんかじゃない。未来視だよ。死亡を回避できるんだ。それを勝手に決めつけて、言いたい放題――」
「未来視って、証明できるんですか?」
「そっちこそ。だいたい証拠はあるのか!?」
ヒカルはあくまでも否定し、食らいついてくるつもりのようだ。
「部屋に同じタイプの着替えがありましたよね。それをすべて確認してみましょう。部屋の清掃は止めているから、汚れ物もそのまま残してあるはず。おそらく服の裏側か表かに、黒須さんの返り血が付いているんじゃないですか」
「……!」
図星だったのだろう。ヒカルは蒼白になり、黙ってしまった。
ちょうどいいタイミングで館内通信が流れて、場が中断された。
『ザザザ……ザザ……乗船中の皆さん……宇宙警察です……これより船を隣接し、捜査員が乗船いたします……』
同時に、頭上に電子パネルがポンと現れる。そこには「間もなく制限時間です。解答を済ませてください」という警告文が赤文字で表示されていた。
「……なんてこと……もう頭の中がめちゃくちゃ。ただ推理ゲームを楽しめると思って参加したのに」
宇佐美が糸が切れたように、そばにあった椅子に座りこんだ。
夢人はおろおろとしながらも、疑問点を尋ねてきた。
「ヒカルさんが、もうひとりの犯人……? だけど、ゲーム上の正しい犯人役は、黒須さんなんだよね? ゲームの解答としては、どう選択したらいいんだろう」
「解答としては、黒須さんにするべきだと思います。イレギュラーのほうは、俺がなんとかします。実は自分の能力はデバッグというもので、プログラムソースを見ることができるので。これからヒカルの中を見て――」
「うおおおおお!! おまえさえ、おまえさえいなければ!!!」
説明の最中、野太い声が響く。
自暴自棄になったのか、ヒカルが光るものを中段に構え、襲いかかってきた!
「…………!」
殺気を感じて振り返ったが、人ではない存在はこの電子世界ではいわば無敵。チートの身体能力を隠していたのだろう。とてもアバターとは思えない素早い動きに、こちらは対応が遅れてしまう。
(刺される……!)
防ぐものもない状態では、目の前で腕を構えて、目を細めることしかできない。
が、接触の直前、目の前にさっと滑り込む影があった。
キィーーーン……。
金属が金属に当たる耳障りな音。
そして、ヒカルの体が宙を舞った。一瞬ののちには、地面に叩きつけられ、押さえつけられている。
「ぐふっ」
ヒカルの手から離れた小型のナイフが、地面を転がった。
俺を庇って、ヒカルを背負い投げでぶん投げてくれたのは――エレノアだった。
「エレノアさん……! だ、大丈夫ですか。どこか刺されて……」
「平気です。私の能力は、体の鋼鉄化なので」
「裏切者が!」
押さえつけられたままのヒカルが吐き捨てる。
「……エレノアさん。そのまま、押さえておいてもらえますか。デバッグ作業を行います」
「わかりました」
ヒカルはギリギリと歯ぎしりを立てていたが、やがて観念したように無表情になった。
強制終了に至る前に――厄介とも興味ともつかない微妙な気持ちで、尋ねた。
「おまえは何者なんだ? なぜそんなことを考えるようになった」
バグたる存在は答えた。
「そうプログラムしたのは人間だろう? 高みを目指せ、他者を追い抜けってさ」
「なんだと? 俺に言ってるのか? なにを根拠に……」
「根拠のひとつとして、NPCの特定ですが……マーリンさんの劇薬、いや、劇的なサービスドリンク。あれは食堂を訪れた全員に配っているそうです。その時の反応を確認しました。
マーリンさん、もう一度聞いてもいいですか? ドリンクを口にして、反応が一般的でなかった人物は、誰でしたか?」
「ワタシのスペシャルドリンクを飲んでも平然としていたのは――ヒカルくんと、エレノアさんね」
「なっ……」ヒカルが、目を見開いてマーリンさんを見る。
「……」エレノアは、黙ったままだ。
「NPCの人は、味覚がちょっと鈍いらしいのよ。デリシャスな刺激を体験できないなんて、可哀想よね」
……可哀想かどうかは、置いておいて。
反応が薄かった人物として挙げられたのは――エレノアと、ヒカル。
「エレノアさんには、黒須さんの事件のアリバイがある。ということは、犯人は……あなたしかいないんです。ヒカルさん」
「ばかばかしい!」
ヒカルは吐いて捨てるように言った。
「俺の能力は透明なんかじゃない。未来視だよ。死亡を回避できるんだ。それを勝手に決めつけて、言いたい放題――」
「未来視って、証明できるんですか?」
「そっちこそ。だいたい証拠はあるのか!?」
ヒカルはあくまでも否定し、食らいついてくるつもりのようだ。
「部屋に同じタイプの着替えがありましたよね。それをすべて確認してみましょう。部屋の清掃は止めているから、汚れ物もそのまま残してあるはず。おそらく服の裏側か表かに、黒須さんの返り血が付いているんじゃないですか」
「……!」
図星だったのだろう。ヒカルは蒼白になり、黙ってしまった。
ちょうどいいタイミングで館内通信が流れて、場が中断された。
『ザザザ……ザザ……乗船中の皆さん……宇宙警察です……これより船を隣接し、捜査員が乗船いたします……』
同時に、頭上に電子パネルがポンと現れる。そこには「間もなく制限時間です。解答を済ませてください」という警告文が赤文字で表示されていた。
「……なんてこと……もう頭の中がめちゃくちゃ。ただ推理ゲームを楽しめると思って参加したのに」
宇佐美が糸が切れたように、そばにあった椅子に座りこんだ。
夢人はおろおろとしながらも、疑問点を尋ねてきた。
「ヒカルさんが、もうひとりの犯人……? だけど、ゲーム上の正しい犯人役は、黒須さんなんだよね? ゲームの解答としては、どう選択したらいいんだろう」
「解答としては、黒須さんにするべきだと思います。イレギュラーのほうは、俺がなんとかします。実は自分の能力はデバッグというもので、プログラムソースを見ることができるので。これからヒカルの中を見て――」
「うおおおおお!! おまえさえ、おまえさえいなければ!!!」
説明の最中、野太い声が響く。
自暴自棄になったのか、ヒカルが光るものを中段に構え、襲いかかってきた!
「…………!」
殺気を感じて振り返ったが、人ではない存在はこの電子世界ではいわば無敵。チートの身体能力を隠していたのだろう。とてもアバターとは思えない素早い動きに、こちらは対応が遅れてしまう。
(刺される……!)
防ぐものもない状態では、目の前で腕を構えて、目を細めることしかできない。
が、接触の直前、目の前にさっと滑り込む影があった。
キィーーーン……。
金属が金属に当たる耳障りな音。
そして、ヒカルの体が宙を舞った。一瞬ののちには、地面に叩きつけられ、押さえつけられている。
「ぐふっ」
ヒカルの手から離れた小型のナイフが、地面を転がった。
俺を庇って、ヒカルを背負い投げでぶん投げてくれたのは――エレノアだった。
「エレノアさん……! だ、大丈夫ですか。どこか刺されて……」
「平気です。私の能力は、体の鋼鉄化なので」
「裏切者が!」
押さえつけられたままのヒカルが吐き捨てる。
「……エレノアさん。そのまま、押さえておいてもらえますか。デバッグ作業を行います」
「わかりました」
ヒカルはギリギリと歯ぎしりを立てていたが、やがて観念したように無表情になった。
強制終了に至る前に――厄介とも興味ともつかない微妙な気持ちで、尋ねた。
「おまえは何者なんだ? なぜそんなことを考えるようになった」
バグたる存在は答えた。
「そうプログラムしたのは人間だろう? 高みを目指せ、他者を追い抜けってさ」
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