プライスレス

風見☆渚

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春の連休前

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女性


今年で私もとうとう28歳。 
来年は29になっちゃうんだよな~・・・
今まで仕事一直線。
一直線の大きな通過点である三十路がもうすぐになってきた。
は~・・・もうため息しか出ない。
そんな私だけど、一応彼氏がいないわけではない。
でも最近、浮気されているような気がする。
LINEを送っても未読か既読無視。
その割に、向こうからはキャンセルやら予定はどうだとか、気分次第で連絡がくる。
もうすぐ連休なのに予定も決まってない。
なんだかなぁ~・・・
どうせ、仕事がどうとか理由付けて、浮気相手とよろしくやる予定なんだろうけど。
よろしくっておっさんか私・・・
『一応彼氏』って肩書きくらいでしかないから、もう別れてもいいのかな・・・
そんな余計な事考えてると、顔が一気に老けそうだし、どうでもいい話は置いといて、まずは連休前のこの忙しさを片付けなくちゃ。
春って、なんでこう無駄に忙しいんだろう。
普段の仕事に加え新人の教育係もしているせいか、毎日があっという間にすぎてしまう。
仕事以外何も考えられない。というか、考えたくない。
それが調度いいのかもしれないけど。
それでも今日の昼休みは、久々に一人でゆっくり食事する事ができるのです。
せっかくだし、前から気になっていたラーメン屋さんに行くしかない!
人気店です。行列ができるくらいの人気店です!
これはこってり元気付けて今日を乗り切るしかないでしょ!
とはいえ、さすが最近人気のラーメン屋さん。
店に入るのも時間がかかる。
やっとのことで店に入っておすすめを注文。
出てくるのを待っていると、見覚えのある顔が隣の席に案内された。
え…………私が教えている新人君だ………
なんでこんな所で会ってしまうのだろうか。
なんだか気まずい。
その新人君が話しかけてきたけど、さらっと流してしまった。
別にイラついているわけじゃないの。
ただ、いろいろ疲れていて、いろいろめんどくさくなってるだけなの。
ごめんね。
君は悪くない。
私って小さい人間だな・・・
新人君も空気読んで気を使ってくれているのか、ほどほどに簡単な話をし、私はラーメンを食べ終わってすぐ会社に戻った。
ラーメンは…おいしかったと思う。
せっかくの、ゆっくりとそしてガッツリな昼休みだったのに。
とぼとぼ会社に戻ってふと気付いた。
さっきの新人君がまだ戻っていない。
最近の若い子は時間にルーズ過ぎる。
そもそも、あの時間であのお店って・・・
イライラしながら待っていると昼休み終了ギリギリに新人君は戻ってきた。
そして、何か袋をもっている。
このタイミングで買い物?
いい度胸じゃない!
あまり怒りすぎても後が面倒なので、なだめるように叱った。
とはいえ、内なるモヤモヤが晴れないからストレスになってるんだけど。
一応新人君は反省しているようなので仕事を再開しようとした時、手提げの袋を私に渡してきた。
ん?
まったく状況が読めない中袋をあけてみると、薄手のカーディガン。
意外とセンスも悪くない。
いやいやそうじゃなくて、これは何かと聞くと、そっと小声で、私のシャツが汚れていると教えてくれた。
さっきのラーメンか・・・失敗した。
午後には大事なプレゼンもあって勢いつける為に食べたのに大失敗。
全く気付かなかった・・・
色々恥ずかしくなったが、ひとまず感謝してそれを着る。
着たあと新人君が、恥ずかしそうな笑顔でこそっと、似合ってるって。
私は何食わぬ顔で、新人君に背を向け仕事に戻る。
あーー・・・色々な意味で恥ずかしい。
穴があったら入りたいってこういうときに使うんだよね。
でも、優しくされたのが久しぶりだったせいか、私は顔が赤くなり、新人君の顔が見られなくなった。
こういうのって・・・あり?
なにこの無駄なドキドキ感は?
よくわからないドキドキで混乱していると、ピローンと彼からまた来たメッセージが届いた。
どうせ余計な事しか送ってこないだから無視しとこう。
久々の優しさって、くすぐったいんだね。
ねぇ、新人君?
私は、いい上司でやっていけてるように見える?
私って、ちゃんとやれてるのかな?






男性


就活は本当に大変だった。
大変だったけど、俺は第一志望の会社に合格した。
俺頑張ったって、自分をほめるくらい、本当に大変だった。
しかも、希望の部署に行くことが出来た。
ラッキーとしか言いようがないくらいについてる。
やりたい仕事につけたのは幸せだと思うが、理想と現実は全く違って覚えることが多く大変な毎日。
社会人って大変だなって、時々どっか他人事のように思える瞬間がある。
こういうところが、ゆとりだとか、まだ学生だとかいろいろ言われる原因なんだろうか。
ちなみに、俺の教育担当の先輩は女性だった。
見るからに出来る女といった雰囲気の先輩は、かっこよく、なんでもテキパキこなす人で、すごいの一言である。
これだけ完璧なのだから、悩みなんてないのだろうと思っていたが仕事の合間、テラスルームで一人スマホを見ている先輩を見かけた。
先輩は高嶺の花で声をかけにくいので、俺は遠くから見ていた。
先輩・・・浮かない顔をしている。
ため息と一緒に涙が流れていったように見えた。
あれは、なにかの見間違いだったのだろうか。
その後も先輩は普段通り、厳しくも優しくいろいろ教えてくれている。
とにもかくにも、自分でも不甲斐ないと思うくらい毎日怒られてばかりだ。
ある日、朝から先輩の機嫌が悪そうだ。
もしかしたら今日は大事なプレゼンがあると聞いていたので、その事でも考えているのだろうか。
それとも、この前の涙の理由の続きなのだろうか・・・
何があったか気になっているが、聞けるわけもなくいつも通り仕事をがんばる。
そして、いつも通り怒られる俺。
不甲斐ない俺・・・
先輩の役に立ちたいと思ったりするけど、こんな新人が余計なことしてもな・・・
昼休み、先輩は一人外へ出かけたのが目に入った。
あまり気にしていなかったが、俺もたまには外で食べようと思い外へ出た。
何気なく入ったラーメン屋。
ここは最近流行っているラーメン屋で、気になっていたのでどんなものかと期待して入る事にした。
流石に並んでいる。
やっとで入れた店内。
案内された席に座るとびっくり。先輩の隣の席だった。
なんだか気まずい。
そして、今朝感じた感覚は気のせいでなく、なぜか機嫌が悪そうだ。
話しかけるのに少し気が引けたが、この距離で何も話しかけないというのも、それはそれでやはり気まずい。
たわいもない話をそこそこして、注文が出てくるのを待った。
ラーメンを食べ、少し汗ばむ先輩は、なんだか色っぽかった。
ふと、男としてどうしようもなく目がいく。
先輩の胸元。
これは、男としてどうしようもない衝動であって、けっして下心があるとかそういうわけではなく・・・
つい目がいってしまうのは、生理現象のようなもので・・・

オマケのように気がついてしまった。
先輩のシャツにスープのシミが・・・
これはどうしたらいいのだろうか・・・
この先輩の不機嫌さが増す気もするけど、言った方がいいのだろうか?
そして、男としての本能というか、なんというか・・・
そんな、少し抜けた所を見て、完璧な先輩が可愛く感じた。
先輩は、食べ終わるとすぐに行ってしまった。
もう会社に戻るのかと思い時計を見た。
マジか!
自分も急がなくてはならなかった。
今回は急いで食べる事になったけど、今度は仕事の合間じゃなくゆっくり別の日に味わおう。
急いで会社に戻る途中、ふと思った。
今日の先輩の予定と、シャツのシミ。
余計なお世話と思ったが、先輩の役に少しでもたちたいと思い、会社までの途中にあるスーツショップへ駆け込みカーディガンを1枚購入。
時計を見た。ギリギリセーフ?な時間。
やはり怒られた。
実際は、ギリギリアウトの雰囲気だった。
怒られてそんな雰囲気じゃないとわかっていたけれど、先輩に恥をかかせてはいけないと思いカーディガンをそっと渡した。
それを着たかっこいい先輩が、少し可愛く見えた。
つい、言葉が出た。
言ってて恥ずかしいな俺。
なぜか、先輩は後ろを向き、急ぎ足で仕事に戻っていった。

なんだろう?
なんかあったのかな?
さっきとは雰囲気が変わって、少し機嫌が良さそうだ。
ちょっとは役に立てたのだろうか。
先輩。
俺は、あなたの単なる後輩で新人ってだけですよね?
それ以外にはなれないんですか?
後でまだ機嫌が良かったら、連休の予定はあいているだろうか聞いてみようと思う。

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