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プロローグ
2 巨大な黒蟻との初戦闘
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吾郎があてもなく荒廃した大地をフラフラとさまよっていると、ふと小さな地揺れと共に目の前の大地に穴が開き、そこから自転車程度の大きさはありそうな巨大な黒蟻がゾロゾロと這い出てきた。
「おいおい……マジかよ」
十数匹の黒蟻達は、吾郎の足音を獲物として察知したのか、迷うこと無く一斉に向かってくる。
吾郎は予め用意していた強化石ころをズボンのポケットから取り出すと、左手で数個を握りしめ、そこから右手でひとつ取っては黒蟻に向かってぶん投げていく。
まるで弾丸の様に凄まじい勢いで飛んでいく強化石ころではあったが、ノーコン気味と初戦への焦りもあってか、数発を外した後、だいぶ近づいてきた先頭を来る黒蟻の頭にやっとこさ命中した瞬間、強化石ころは黒蟻の頭部をやすやすと貫通してみせた。
先頭の巨大な黒蟻が、前のめりで地面に突っ伏しながら絶命する。
この瞬間、強化石ころが敵である巨大な黒蟻に致命傷を与える程の威力を有していることが証明された。
「――よし、威力は申し分無さそうだな! というか、少しオーバーキル気味か? どんな魔物が出てくるか分からないからある程度は強めにしておいたんだが、後で微調整だな」
吾郎は跳ねる心臓を深呼吸で抑えながら、強化石ころを無駄に外さない為に丁寧に丁寧に目標の的に向かって、軽い動作で放り投げる。
「(強化石ころに必要なのは俺の腕力ではない。俺の投てきはあくまで石が飛ぶというきっかけを与えるに過ぎない。銃のトリガーを引いたら勝手に凄まじい弾丸が射出されるように、強化石が空中に飛んだ瞬間、後は強化された速度、威力などが発揮される。だから、俺が気をつけるのは的に命中する為の正確性のみ)」
吾郎の石投げの殲滅力は圧倒的であり、巨大な黒蟻達は吾郎に近づくことも出来ずにバタバタと倒れていく。
しかし、いきなり十数匹の黒蟻に一斉に襲われたせいか弾切れをおこしてしまった。
「やばいやばい」
吾郎はその場で何個か石を拾い上げると、少しでも時間稼ぎをする為に迫り来る黒蟻を睨みながら後退しつつ、石を強化しては放り投げる。
石の発射間隔はかなり落ちてしまったが、確実に一体ずつ黒蟻を仕留めていく。
「(一応、この平凡な冒険者服や赤マントの防御性能は高めてはあるが、あんなでかい枝切りバサミの様な顎で直に噛まれるのは御免被りたい)」
巨大な黒蟻はその強靭そうな牙の顎をカッションカッションさせながら、吾郎を噛み切り殺そうと大地をシャカシャカと走ってくる。
しかし、吾郎の強化石ころによる遠距離攻撃の前では、その自慢の顎も意味を成さず、とうとう最後の一匹が地面に突っ伏した。
「……はぁ、やっと終わった」
目の前で死屍累々となっている黒蟻達を呆然と見ながら、吾郎はため息を吐き捨てた。
「しかし、虫はチート気味な奴が多いから巨大化は色々と反則だよな。あとキモいし。まーでも、一応は映画やゲームでそれなりには慣れてはいるけれども」
吾郎が気怠そうに独り言を呟いていると、黒蟻の死体が塵となって消え去り始めた。
「ん、そういう感じなのか?」
黒蟻の死体がまるで幻だったかのように消え去ると、軽快なチャイムが鳴り報酬ウインドウが表示された。
「ほうほう、勝者に報酬を置いていくとは殊勝な心がけではないですか。どれどれ」
吾郎は報酬を確認する。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
黒蟻(100金貨)×15=1500金貨
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「へー、こいつらを倒すとお金が手に入るのか、これは倒しがいがあるな。あといちいちお金を拾い集めなくても、電子マネーぽく手に入るというのが楽で助かる」
吾郎は早速「ネット通販」のチートを使って通販ウインドウを立ち上げると、右上にある残高表記が0金貨から1500金貨へと変化していた。
「なるほど、こういう仕組みか」
ふいに吾郎のお腹が小さく鳴った。
「ふむ、これがチートの使用に際して魔力消費という名のカロリーが消費されたわけか。というか、朝から何も食べていないせいかもしれないが」
吾郎は早速、ネット通販でコンビニのデリバリーサービス系を選択して「国産つぶあんパン」販売価格100金貨を注文してみたところ、目の前に注文した商品が、淡い金色に輝く光の粒子に包まれながら現れた。
「何という速さ。というか、世界を超えて届くのに送料無しとかマジチート」
吾郎は地面にちょこんと置かれている見慣れた袋入りあんパンを手に取ると、無造作に開けてかぶりつく。
「うん、甘くて、んまい」
吾郎はあんぱんをほおばりながら、荒野をあてもなく歩くのを再開するのだった。
「おいおい……マジかよ」
十数匹の黒蟻達は、吾郎の足音を獲物として察知したのか、迷うこと無く一斉に向かってくる。
吾郎は予め用意していた強化石ころをズボンのポケットから取り出すと、左手で数個を握りしめ、そこから右手でひとつ取っては黒蟻に向かってぶん投げていく。
まるで弾丸の様に凄まじい勢いで飛んでいく強化石ころではあったが、ノーコン気味と初戦への焦りもあってか、数発を外した後、だいぶ近づいてきた先頭を来る黒蟻の頭にやっとこさ命中した瞬間、強化石ころは黒蟻の頭部をやすやすと貫通してみせた。
先頭の巨大な黒蟻が、前のめりで地面に突っ伏しながら絶命する。
この瞬間、強化石ころが敵である巨大な黒蟻に致命傷を与える程の威力を有していることが証明された。
「――よし、威力は申し分無さそうだな! というか、少しオーバーキル気味か? どんな魔物が出てくるか分からないからある程度は強めにしておいたんだが、後で微調整だな」
吾郎は跳ねる心臓を深呼吸で抑えながら、強化石ころを無駄に外さない為に丁寧に丁寧に目標の的に向かって、軽い動作で放り投げる。
「(強化石ころに必要なのは俺の腕力ではない。俺の投てきはあくまで石が飛ぶというきっかけを与えるに過ぎない。銃のトリガーを引いたら勝手に凄まじい弾丸が射出されるように、強化石が空中に飛んだ瞬間、後は強化された速度、威力などが発揮される。だから、俺が気をつけるのは的に命中する為の正確性のみ)」
吾郎の石投げの殲滅力は圧倒的であり、巨大な黒蟻達は吾郎に近づくことも出来ずにバタバタと倒れていく。
しかし、いきなり十数匹の黒蟻に一斉に襲われたせいか弾切れをおこしてしまった。
「やばいやばい」
吾郎はその場で何個か石を拾い上げると、少しでも時間稼ぎをする為に迫り来る黒蟻を睨みながら後退しつつ、石を強化しては放り投げる。
石の発射間隔はかなり落ちてしまったが、確実に一体ずつ黒蟻を仕留めていく。
「(一応、この平凡な冒険者服や赤マントの防御性能は高めてはあるが、あんなでかい枝切りバサミの様な顎で直に噛まれるのは御免被りたい)」
巨大な黒蟻はその強靭そうな牙の顎をカッションカッションさせながら、吾郎を噛み切り殺そうと大地をシャカシャカと走ってくる。
しかし、吾郎の強化石ころによる遠距離攻撃の前では、その自慢の顎も意味を成さず、とうとう最後の一匹が地面に突っ伏した。
「……はぁ、やっと終わった」
目の前で死屍累々となっている黒蟻達を呆然と見ながら、吾郎はため息を吐き捨てた。
「しかし、虫はチート気味な奴が多いから巨大化は色々と反則だよな。あとキモいし。まーでも、一応は映画やゲームでそれなりには慣れてはいるけれども」
吾郎が気怠そうに独り言を呟いていると、黒蟻の死体が塵となって消え去り始めた。
「ん、そういう感じなのか?」
黒蟻の死体がまるで幻だったかのように消え去ると、軽快なチャイムが鳴り報酬ウインドウが表示された。
「ほうほう、勝者に報酬を置いていくとは殊勝な心がけではないですか。どれどれ」
吾郎は報酬を確認する。
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黒蟻(100金貨)×15=1500金貨
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「へー、こいつらを倒すとお金が手に入るのか、これは倒しがいがあるな。あといちいちお金を拾い集めなくても、電子マネーぽく手に入るというのが楽で助かる」
吾郎は早速「ネット通販」のチートを使って通販ウインドウを立ち上げると、右上にある残高表記が0金貨から1500金貨へと変化していた。
「なるほど、こういう仕組みか」
ふいに吾郎のお腹が小さく鳴った。
「ふむ、これがチートの使用に際して魔力消費という名のカロリーが消費されたわけか。というか、朝から何も食べていないせいかもしれないが」
吾郎は早速、ネット通販でコンビニのデリバリーサービス系を選択して「国産つぶあんパン」販売価格100金貨を注文してみたところ、目の前に注文した商品が、淡い金色に輝く光の粒子に包まれながら現れた。
「何という速さ。というか、世界を超えて届くのに送料無しとかマジチート」
吾郎は地面にちょこんと置かれている見慣れた袋入りあんパンを手に取ると、無造作に開けてかぶりつく。
「うん、甘くて、んまい」
吾郎はあんぱんをほおばりながら、荒野をあてもなく歩くのを再開するのだった。
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