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プロローグ
1 チートは1つ+おまけ
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ファンタジー小説でよくある異世界転移と同じく、吾郎も立派なチートを頂戴している。
その名は「強化鍛冶師(インフレスト)」と呼ばれるチートである。
どのようなチートかというと、あらゆるアイテムを限界突破で強化できる、実にぶっ飛んだチートである。
鍛冶師という名前から金槌をトンテンカンしそうな雰囲気があるが、そういう技巧は一切必要無い。
これは魔法というか、もはや奇跡の一種であり、あらゆるアイテムの特性を向上、追加、または限界を超えて暴騰させることが可能となる。
使用には魔力が必要となるが、残念ながら吾郎には魔法の才能や魔力が備わってはいない。
その為、吾郎の体力(カロリー)を魔力に変換する回路が体内に組み込まれており、つまり、チートを使うとお腹が減るということである。
吾郎はまだ知らないが、この異世界においては魔力をすぐに回復させるのは、なかなかに困難な事なので、食事で即座に魔力回復(カロリー補給)ができるというのは、吾郎にとってかなりのメリットなのである。
もちろん、吾郎からすれば魔力無限能力をくれれば話が楽で済むのであるが、チートは一人原則1個が基本らしいのでしょうがないのであった。
「というか、きちんと魔力変換回路をくれるあたりは、神様らしき人は本当にお優しいお方ではあると思う」
なので、あまり無茶な使い方をすると空腹で倒れる可能性もあり、こまめに食事を取るか、使用前に食事を済ませておくなどの対応が求められる。
吾郎は異世界風の冒険者服を装備しているが、武器は何も持ってはいなかったので、早速、試しにチートを使ってみることにした。
その場で立ち止まった吾郎は、荒野のそこら中で転がっている手頃な石ころを、ひとつ拾い上げて強化を施す。
「とりあえず空気抵抗やらをいじって飛距離を伸ばしてみよう」
吾郎は石ころに魔力を注ぎ込んで飛距離を向上させていくと、石ころは吾郎のチートに反応しているのか淡い光を放つ。
「あまり上げても魔力の無駄使いだから、これぐらいで止めておくか」
吾郎が強化を止めると、石ころから発せられる淡い光も止まった。
吾郎は強化した石ころを、その場で空に向かって軽く放り投げると、石ころは重力に囚われることなくスーッと斜めに飛び続けて、とうとうそのまま目に見えない所まで軽々と飛んでいってしまった。
「……ほう、見事なもんだなこれは」
吾郎は石を握っていた右手を閉じたり開いたりしながら、その手の平に視線を落とした。
「今は特に武器を持ってはいないけれども、この強化チートがあれば石ころでも強度、速度、飛距離、貫通力などをいじってやれば、投石だけでとんでもない威力が出そうだな」
吾郎は、自身の身を守る事が出来る事が確認できたので、少し安堵しつつ周りをまた確認する。
「それにしても西部劇に出てくるような見事な荒野だな。日本には無い景色だからか、こんなひらけた空間に一人で立たされると何とも心許ない。ま、転移の際に聞いた話では、色々と過酷な異世界らしいから、この荒野も納得ではあるが、この強化チートだけではなく、もう一つの『この』チートが無ければ本当にやってられない所だったな。というか、これをくれなかったら、俺はこの異世界転移は死んでも断ったけれども」
そう、吾郎は強力な強化チートという能力を提示されておきながら、実は元の世界の便利で楽しい生活を捨てたく無いという理由で、徹底的に異世界転移を固辞したのだった。
その固い思いを理解した神らしき存在は、チートは一人原則1個という基本に目をつぶってまで、特別におまけとしてもうひとつだけチート能力を追加してくれたのだが、それが「ネット通販」であった。
元の世界にあるネット通販にアクセスして、あらゆる物を購入できるというチート能力である。
ただし、あくまで通販がメインなので、ネットそのものができるという訳では無い。
しかし、元の世界の便利で楽しい生活を完全に捨てることだけは嫌だった吾郎にとっては、魔力無限能力などよりも、とにかくこちらの方が大事なのであった。
吾郎は「ネット通販」能力を使い、眼前に浮かび上がった映像を指でタッチしながら操作していく。
「ほうほう、通販サイトの一覧から選んだり、検索して絞ったりもできるわけか」
通販サイト一覧から有名な大手通販サイトを開いてみると、見慣れたレイアウトが浮かび上がる。
「おー、本当にアクセスできるんだな。これで、元の世界の食べ物、漫画、ゲームなども十分に楽しめるわけか。ただ、値段が円ではなく全て金貨という単位になっているみたいだから、この異世界のお金を稼がないとダメみたいだな。ただ、少し気になるのは金貨といえば異世界で最も価値が高い貨幣だと思うんだけれども……いや、今から心配してもどうしようもないか。後々、その価格バランスは分かるだろうし、強化チートがあれば何とかなるだろう」
吾郎が心配したように、1円=1金貨というバランスは明らかにおかしいのだが、娯楽の為とはいえ、元の世界からチート級の物品を取り寄せるコストとしては、決して高いものではないのである。
吾郎が「ネット通販」のチート能力を何よりもせがんだせいで、「強化鍛冶師(インフレスト)」のチート能力は基本通りカロリー補給をしながら上手に運用しなければならなくなったのだが、後々になって「強化鍛冶師」と「ネット通販」のコンビネーションの凄まじさが発揮されることになっていくのであった。
その名は「強化鍛冶師(インフレスト)」と呼ばれるチートである。
どのようなチートかというと、あらゆるアイテムを限界突破で強化できる、実にぶっ飛んだチートである。
鍛冶師という名前から金槌をトンテンカンしそうな雰囲気があるが、そういう技巧は一切必要無い。
これは魔法というか、もはや奇跡の一種であり、あらゆるアイテムの特性を向上、追加、または限界を超えて暴騰させることが可能となる。
使用には魔力が必要となるが、残念ながら吾郎には魔法の才能や魔力が備わってはいない。
その為、吾郎の体力(カロリー)を魔力に変換する回路が体内に組み込まれており、つまり、チートを使うとお腹が減るということである。
吾郎はまだ知らないが、この異世界においては魔力をすぐに回復させるのは、なかなかに困難な事なので、食事で即座に魔力回復(カロリー補給)ができるというのは、吾郎にとってかなりのメリットなのである。
もちろん、吾郎からすれば魔力無限能力をくれれば話が楽で済むのであるが、チートは一人原則1個が基本らしいのでしょうがないのであった。
「というか、きちんと魔力変換回路をくれるあたりは、神様らしき人は本当にお優しいお方ではあると思う」
なので、あまり無茶な使い方をすると空腹で倒れる可能性もあり、こまめに食事を取るか、使用前に食事を済ませておくなどの対応が求められる。
吾郎は異世界風の冒険者服を装備しているが、武器は何も持ってはいなかったので、早速、試しにチートを使ってみることにした。
その場で立ち止まった吾郎は、荒野のそこら中で転がっている手頃な石ころを、ひとつ拾い上げて強化を施す。
「とりあえず空気抵抗やらをいじって飛距離を伸ばしてみよう」
吾郎は石ころに魔力を注ぎ込んで飛距離を向上させていくと、石ころは吾郎のチートに反応しているのか淡い光を放つ。
「あまり上げても魔力の無駄使いだから、これぐらいで止めておくか」
吾郎が強化を止めると、石ころから発せられる淡い光も止まった。
吾郎は強化した石ころを、その場で空に向かって軽く放り投げると、石ころは重力に囚われることなくスーッと斜めに飛び続けて、とうとうそのまま目に見えない所まで軽々と飛んでいってしまった。
「……ほう、見事なもんだなこれは」
吾郎は石を握っていた右手を閉じたり開いたりしながら、その手の平に視線を落とした。
「今は特に武器を持ってはいないけれども、この強化チートがあれば石ころでも強度、速度、飛距離、貫通力などをいじってやれば、投石だけでとんでもない威力が出そうだな」
吾郎は、自身の身を守る事が出来る事が確認できたので、少し安堵しつつ周りをまた確認する。
「それにしても西部劇に出てくるような見事な荒野だな。日本には無い景色だからか、こんなひらけた空間に一人で立たされると何とも心許ない。ま、転移の際に聞いた話では、色々と過酷な異世界らしいから、この荒野も納得ではあるが、この強化チートだけではなく、もう一つの『この』チートが無ければ本当にやってられない所だったな。というか、これをくれなかったら、俺はこの異世界転移は死んでも断ったけれども」
そう、吾郎は強力な強化チートという能力を提示されておきながら、実は元の世界の便利で楽しい生活を捨てたく無いという理由で、徹底的に異世界転移を固辞したのだった。
その固い思いを理解した神らしき存在は、チートは一人原則1個という基本に目をつぶってまで、特別におまけとしてもうひとつだけチート能力を追加してくれたのだが、それが「ネット通販」であった。
元の世界にあるネット通販にアクセスして、あらゆる物を購入できるというチート能力である。
ただし、あくまで通販がメインなので、ネットそのものができるという訳では無い。
しかし、元の世界の便利で楽しい生活を完全に捨てることだけは嫌だった吾郎にとっては、魔力無限能力などよりも、とにかくこちらの方が大事なのであった。
吾郎は「ネット通販」能力を使い、眼前に浮かび上がった映像を指でタッチしながら操作していく。
「ほうほう、通販サイトの一覧から選んだり、検索して絞ったりもできるわけか」
通販サイト一覧から有名な大手通販サイトを開いてみると、見慣れたレイアウトが浮かび上がる。
「おー、本当にアクセスできるんだな。これで、元の世界の食べ物、漫画、ゲームなども十分に楽しめるわけか。ただ、値段が円ではなく全て金貨という単位になっているみたいだから、この異世界のお金を稼がないとダメみたいだな。ただ、少し気になるのは金貨といえば異世界で最も価値が高い貨幣だと思うんだけれども……いや、今から心配してもどうしようもないか。後々、その価格バランスは分かるだろうし、強化チートがあれば何とかなるだろう」
吾郎が心配したように、1円=1金貨というバランスは明らかにおかしいのだが、娯楽の為とはいえ、元の世界からチート級の物品を取り寄せるコストとしては、決して高いものではないのである。
吾郎が「ネット通販」のチート能力を何よりもせがんだせいで、「強化鍛冶師(インフレスト)」のチート能力は基本通りカロリー補給をしながら上手に運用しなければならなくなったのだが、後々になって「強化鍛冶師」と「ネット通販」のコンビネーションの凄まじさが発揮されることになっていくのであった。
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