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11.謎の協力者
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ヨルアが普段好んで着ているのは、首元まわりを白の繊細な刺繍が施されたレース素材のシャツで、同じレースのリボンで締め上げた腰からふんわりと膨らみを持たせた可愛らしい黒地のコルセットドレス
このドレス生地には秘密がある。それは大型蜘蛛から糸を貰って織っているということ
デザインも可愛くて似合っているから眷属様様なのだが、製造元はあまり想像したくない。それでも柔らかく伸縮性があるため、体に無理なくフィットしていて動きやすい。装甲も鉄壁だ
そして、夜着の素材は大きな蛾の繭。やはり製造主とは出会いたくないが、この蛾の繭から作った糸はとても柔らかく、ヨルアは子供の服にも、この素材を使用した、と外伝にも語られていた
砂埃だらけだし、ドレスの脱ぎ方も分からないし、この屋敷から出る方法も探してたからちょうどよかったかもしれない
一人で着替えを抱えて、考え事をしているヨルアを見かねたメイドが眼鏡をなおし、腰を曲げる
「リリーがあのように喜んでいる姿は初めてでして…粗相のないよう私どもも気をつけます」
「あっ…いえいえ、私もリリーちゃんには癒されますので…」
ロボットみたいに感情の読めないメイドさんでも天使なリリーちゃんの可愛さには負けるのか、と思ったよりもあっさりと退出した眼鏡のメイドを見送って、急いでバスルームへと駆け込んだ
扉に鍵を掛け、辺りに人の気配がないことを確認すると、一つ息を吐く。そして両手を重ねて、目を瞑った。
《───眷属達。》
·············
「…ん?」
もしかして何か間違えた?遠いところに居るから届かなかったとか?
《───眷属達…?》
……………
「お、おーい…けんぞくたちー?」
呼び掛けに答える声もなく、静寂が身を包む
すっかり「古語」を使いこなしていたため、そのあまりの静けさに呆気にとられてしまう
「へっ…?どうして」
外では確かに体内に流れる魔力を感じ取れていた
「さっきは外気の冷たさで感じ取りやすかったとか?」
もう一度手を組んで、体内の魔力の流れを確認する。心臓部で暖かな流れを感じる。
ガタガタッ
「ヒィッ…?!」
体内を巡る魔力に集中し「古語」を発声しようとした時、バスルームの上部の窓に何かがぶつかる音がした
ガタガタッ
窓からは月だけが見えており、小枝が風によってぶつかっているわけではないようだ
ガタガタッ バタバタッ
「だ、誰かいるのっ?」
呼び掛けに答える声はなかったが、私の声に反応するように窓は更に強く音を立てる
ガタガタッ ────チチチッ
「けんぞくっ?!」
羽がぶつかる音とその鳴き声を聞いて、すぐに上部の扉を開けると二匹のコウモリが力無く床へと転がり落ちた
「えっ…ちょっと、大丈夫っ?」
両手で二匹をすくい上げると、手の中でブルブルと大きく震えているのが分かる
「私の魔法で移動して来たわけではないのね…」
よく見ると片方のコウモリには銀色の筒の様なものが付いたチェーンが掛けられていた
「あれ?さっきはこんなの付けてなかったよね…」
屋敷で魔法が使えないのか、それとも私の魔力切れなのか分からなかったが、眷属たちに魔力を与えることはできるようで、やはり屋敷に魔法が使えないように何か施されているのかもしれない
「こんなの詰みじゃん…やっぱり付いてくるんじゃなかったぁあ」
嘆きながらも片手で二匹の眷属に魔力を送り、首にかかったチェーンを外すとその銀の筒は2センチほどの長さをしていて真ん中に溝のようなものが見えた
魔力で満たされた眷属たちが胸元ですっかり落ち着いているのを確認して、そのチェーンを観察する
「吸血鬼って銀に弱いって聞くけど、ヨルアが強いから…?それにしてもこんなに小さいのに薔薇の模様がはっきりと分かって…綺麗」
まじまじと観察した後、銀の筒を両手で持ち、ねじる様に回すと簡単にそれは分断されて中から紙のようなものが転がり落ちた
「なにこれ…?」
急いで拾い上げるとやはりクルクルと丸められた紙のようで広げると15センチ程の紙に急いで書いたかのような走り書きの文字が並んでいた
―――――――――――――
馬鹿なの?よりにもよって
辺境伯に捕まるなんて…
馬鹿でしかないわ
明日迎えに行くから
これは貸しだからね
絶対に!!逃げ出そうとか
血の塊で屋敷を破壊だとか
これ以上!馬鹿なことは
しないでちょうだい!!
保管魔法だとか安全なもの以外
使用しないこと!!絶対よ!!
大人しくしてて頂戴!!
―――――――――――――
「………誰?」
殴り書きからも、急いで書いたのが分かる。どちらにしろ、ヨルアの素性を知った人物が明日迎えに来るらしい
「私がどこの誰かも分からないのに、どうやって迎えに来るっていうの?しかもめっちゃ怒ってない…?というか保管魔法って…あ」
《storage》
頭の中で当たり前のように浮かんだ「古語」を呟く。すると目の前に、その部分だけを切り取ったかのような真っ暗な円形の空間が姿を表した
「あっ!これ原作でもあったやつだ!!アイテムボックスみたいなものなのかな」
恐る恐る円の中へ腕を差し込むと思い浮かべていた感触が手の中にあることに気づく。それを掴んでゆっくりと引き抜くとシルクのような肌触りの透け感しかないキャミソールが手元にはあった
「さすがに……これは…はだけすぎでは?」
その後、何度もブラックホールに手を出し入れして原作のヨルアが胸元に自信がある事だけは分かった現ヨルアはロングのレーススリップを纏い、その夜を凌いだのだった
このドレス生地には秘密がある。それは大型蜘蛛から糸を貰って織っているということ
デザインも可愛くて似合っているから眷属様様なのだが、製造元はあまり想像したくない。それでも柔らかく伸縮性があるため、体に無理なくフィットしていて動きやすい。装甲も鉄壁だ
そして、夜着の素材は大きな蛾の繭。やはり製造主とは出会いたくないが、この蛾の繭から作った糸はとても柔らかく、ヨルアは子供の服にも、この素材を使用した、と外伝にも語られていた
砂埃だらけだし、ドレスの脱ぎ方も分からないし、この屋敷から出る方法も探してたからちょうどよかったかもしれない
一人で着替えを抱えて、考え事をしているヨルアを見かねたメイドが眼鏡をなおし、腰を曲げる
「リリーがあのように喜んでいる姿は初めてでして…粗相のないよう私どもも気をつけます」
「あっ…いえいえ、私もリリーちゃんには癒されますので…」
ロボットみたいに感情の読めないメイドさんでも天使なリリーちゃんの可愛さには負けるのか、と思ったよりもあっさりと退出した眼鏡のメイドを見送って、急いでバスルームへと駆け込んだ
扉に鍵を掛け、辺りに人の気配がないことを確認すると、一つ息を吐く。そして両手を重ねて、目を瞑った。
《───眷属達。》
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「…ん?」
もしかして何か間違えた?遠いところに居るから届かなかったとか?
《───眷属達…?》
……………
「お、おーい…けんぞくたちー?」
呼び掛けに答える声もなく、静寂が身を包む
すっかり「古語」を使いこなしていたため、そのあまりの静けさに呆気にとられてしまう
「へっ…?どうして」
外では確かに体内に流れる魔力を感じ取れていた
「さっきは外気の冷たさで感じ取りやすかったとか?」
もう一度手を組んで、体内の魔力の流れを確認する。心臓部で暖かな流れを感じる。
ガタガタッ
「ヒィッ…?!」
体内を巡る魔力に集中し「古語」を発声しようとした時、バスルームの上部の窓に何かがぶつかる音がした
ガタガタッ
窓からは月だけが見えており、小枝が風によってぶつかっているわけではないようだ
ガタガタッ バタバタッ
「だ、誰かいるのっ?」
呼び掛けに答える声はなかったが、私の声に反応するように窓は更に強く音を立てる
ガタガタッ ────チチチッ
「けんぞくっ?!」
羽がぶつかる音とその鳴き声を聞いて、すぐに上部の扉を開けると二匹のコウモリが力無く床へと転がり落ちた
「えっ…ちょっと、大丈夫っ?」
両手で二匹をすくい上げると、手の中でブルブルと大きく震えているのが分かる
「私の魔法で移動して来たわけではないのね…」
よく見ると片方のコウモリには銀色の筒の様なものが付いたチェーンが掛けられていた
「あれ?さっきはこんなの付けてなかったよね…」
屋敷で魔法が使えないのか、それとも私の魔力切れなのか分からなかったが、眷属たちに魔力を与えることはできるようで、やはり屋敷に魔法が使えないように何か施されているのかもしれない
「こんなの詰みじゃん…やっぱり付いてくるんじゃなかったぁあ」
嘆きながらも片手で二匹の眷属に魔力を送り、首にかかったチェーンを外すとその銀の筒は2センチほどの長さをしていて真ん中に溝のようなものが見えた
魔力で満たされた眷属たちが胸元ですっかり落ち着いているのを確認して、そのチェーンを観察する
「吸血鬼って銀に弱いって聞くけど、ヨルアが強いから…?それにしてもこんなに小さいのに薔薇の模様がはっきりと分かって…綺麗」
まじまじと観察した後、銀の筒を両手で持ち、ねじる様に回すと簡単にそれは分断されて中から紙のようなものが転がり落ちた
「なにこれ…?」
急いで拾い上げるとやはりクルクルと丸められた紙のようで広げると15センチ程の紙に急いで書いたかのような走り書きの文字が並んでいた
―――――――――――――
馬鹿なの?よりにもよって
辺境伯に捕まるなんて…
馬鹿でしかないわ
明日迎えに行くから
これは貸しだからね
絶対に!!逃げ出そうとか
血の塊で屋敷を破壊だとか
これ以上!馬鹿なことは
しないでちょうだい!!
保管魔法だとか安全なもの以外
使用しないこと!!絶対よ!!
大人しくしてて頂戴!!
―――――――――――――
「………誰?」
殴り書きからも、急いで書いたのが分かる。どちらにしろ、ヨルアの素性を知った人物が明日迎えに来るらしい
「私がどこの誰かも分からないのに、どうやって迎えに来るっていうの?しかもめっちゃ怒ってない…?というか保管魔法って…あ」
《storage》
頭の中で当たり前のように浮かんだ「古語」を呟く。すると目の前に、その部分だけを切り取ったかのような真っ暗な円形の空間が姿を表した
「あっ!これ原作でもあったやつだ!!アイテムボックスみたいなものなのかな」
恐る恐る円の中へ腕を差し込むと思い浮かべていた感触が手の中にあることに気づく。それを掴んでゆっくりと引き抜くとシルクのような肌触りの透け感しかないキャミソールが手元にはあった
「さすがに……これは…はだけすぎでは?」
その後、何度もブラックホールに手を出し入れして原作のヨルアが胸元に自信がある事だけは分かった現ヨルアはロングのレーススリップを纏い、その夜を凌いだのだった
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