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ビジョン8 真偽
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廊下から足音がした。現れた顔に綾香は驚いていた。
「香西さん?」
「新宿のフルーツパーラー楽しみにしていたのに悪いことしたね」
背後にいたのはよく知っている顔だ。沙良の素顔を見て綾香は自然と警戒心を強める。
「待ち合わせジャストに来るなんて大した時間管理ね」
綾香はじろりと沙良をにらみつける。いら立ちが丸見えだ。
「あなたが写真を撮ったのね。どういうことなの? ご説明いただけるかしら?」
「怒らないでよ。お互いクールにいかない? 私、あなたとはゆっくりお話がしたかったから」
「私とあなたで何の話をするのよ? いい加減にしなさい。まさか話をするだけならこんな辺鄙なところに人を呼ばなくてもいいでしょう」
「強気ね。いつもと違う少しイライラした姿も嫌いじゃないよ」
沙良はあえてペースをかき乱した。
「プレゼントはどうだった?」
「何が目的で撮ったのかしら? 生徒会を降ろされた腹いせ? これは盗撮よ? あなたを訴えてあげてもいい。来年から楽しい大学生活を送りたいなら写真を渡しなさい」
「ただでは渡せない。写真はあれだけじゃないし、動画もあるから。全部ネットに流してもいい」
「ちょっと、あなたどういう……」
綾香は目の前にいる沙良を得体の知れない化け物にみえてきた。香西といえば世界的にも名の知られた香西グループだ。ただどんな家にも汚点はいるもの。
沙良は出来損ないではない。中等部時代から学業は一番だった。特に努力をしてもいないのに、苦々しく思うほど成績はずば抜けてよかった。事故に遭った後でも難なく授業に付いてきた。
綾香は未だに成績トップになれない。自然に妬みの感情が募っていく。あれほど勉強したのに沙良は自分のはるか上を行く。
少しだけ嫌がらせをしてやろう。女子グループから外してみた。沙良が学校に来るとほかの女子たちがそっと距離を置く。
「何だか香西さんって気取っていない?」
「前から思っていたけど」
「やめましょう。とても素敵な方じゃない」
綾香は沙良を直接否定しなかった。あくまでも遠回しに嫌味を言い続けた。
悪口を言わない綾香の対応を周りはそれみたことかと褒めちぎった。ただ沙良の顔に泥を塗りたかった。
ほんのそれだけの出来心が発端だった。
でもなんの効果もなかった。静かな瞳で慎ましくしているだけだ。綾香は怖くなってやめた。
普通無視されたら、誰だってストレスを感じるはずなのに。沙良はそうじゃない。綾香は沙良を視界から逸らしたかった。
高校三年生になって妬みが蛆のように湧いてくる。クラスが一緒になってしまった。しばらく見ないうちに沙良は大人の女性に近づいていた。綾香が持たない可憐な真のお嬢様らしく男子の人気も高かった。
事件で入院していたときはいない間に綾香は噂を流したりした。
「香西さん事故に遭ったって」
「なんだか対向車線に出てトラックに引かれたらしいよ」
「お見舞い行ってあげないと」
「綾香、優しい」
沙良がいると自分が一番になれない。いい機会だ。お見舞いはけん制をしに行ったのだ。
病院からの帰り道に綾香たちは笑いあった。うまく成功したはずなのに気持ちは晴れなかった。
「お邪魔虫は生徒会から追い出せたけど、あの横にいた女さ」
「高村貴子。うざいね。ずっとべらべら悪口言っていたよ」
「ラスク持ってきたよね。なんかしょぼいやつ」
ダサいと全員が笑っていた。
さっと視線が綾香に注がれた。次のターゲットは誰か決を出すのは自分なのだ。
「みなさん、ご用意をお願いね。高村さんを少しだけ、ね……」
綾香はターゲットを沙良の周辺に目を向けた。
沙良はいじめに屈しないが、選ばれた高村貴子に効果はあった。貴子は気が弱いほうだった。沙良がいないと何も言えない。
取り巻きに言って少しずつ嫌がらせをしていく。真綿で首を締めるようにじっくり痛めつけた。
沙良から何らかのアクションがあると踏んでいた。生徒会に乗り込んできて怒りをぶちまけた。沙良は平静を装っていたが、綾香は勝ったと確信していたが、事態は予想外の方向へ進んでいる。まさか自分の過去の写真を使って脅迫まがいな行為をするとは予想だにもしなかった。
「香西さん?」
「新宿のフルーツパーラー楽しみにしていたのに悪いことしたね」
背後にいたのはよく知っている顔だ。沙良の素顔を見て綾香は自然と警戒心を強める。
「待ち合わせジャストに来るなんて大した時間管理ね」
綾香はじろりと沙良をにらみつける。いら立ちが丸見えだ。
「あなたが写真を撮ったのね。どういうことなの? ご説明いただけるかしら?」
「怒らないでよ。お互いクールにいかない? 私、あなたとはゆっくりお話がしたかったから」
「私とあなたで何の話をするのよ? いい加減にしなさい。まさか話をするだけならこんな辺鄙なところに人を呼ばなくてもいいでしょう」
「強気ね。いつもと違う少しイライラした姿も嫌いじゃないよ」
沙良はあえてペースをかき乱した。
「プレゼントはどうだった?」
「何が目的で撮ったのかしら? 生徒会を降ろされた腹いせ? これは盗撮よ? あなたを訴えてあげてもいい。来年から楽しい大学生活を送りたいなら写真を渡しなさい」
「ただでは渡せない。写真はあれだけじゃないし、動画もあるから。全部ネットに流してもいい」
「ちょっと、あなたどういう……」
綾香は目の前にいる沙良を得体の知れない化け物にみえてきた。香西といえば世界的にも名の知られた香西グループだ。ただどんな家にも汚点はいるもの。
沙良は出来損ないではない。中等部時代から学業は一番だった。特に努力をしてもいないのに、苦々しく思うほど成績はずば抜けてよかった。事故に遭った後でも難なく授業に付いてきた。
綾香は未だに成績トップになれない。自然に妬みの感情が募っていく。あれほど勉強したのに沙良は自分のはるか上を行く。
少しだけ嫌がらせをしてやろう。女子グループから外してみた。沙良が学校に来るとほかの女子たちがそっと距離を置く。
「何だか香西さんって気取っていない?」
「前から思っていたけど」
「やめましょう。とても素敵な方じゃない」
綾香は沙良を直接否定しなかった。あくまでも遠回しに嫌味を言い続けた。
悪口を言わない綾香の対応を周りはそれみたことかと褒めちぎった。ただ沙良の顔に泥を塗りたかった。
ほんのそれだけの出来心が発端だった。
でもなんの効果もなかった。静かな瞳で慎ましくしているだけだ。綾香は怖くなってやめた。
普通無視されたら、誰だってストレスを感じるはずなのに。沙良はそうじゃない。綾香は沙良を視界から逸らしたかった。
高校三年生になって妬みが蛆のように湧いてくる。クラスが一緒になってしまった。しばらく見ないうちに沙良は大人の女性に近づいていた。綾香が持たない可憐な真のお嬢様らしく男子の人気も高かった。
事件で入院していたときはいない間に綾香は噂を流したりした。
「香西さん事故に遭ったって」
「なんだか対向車線に出てトラックに引かれたらしいよ」
「お見舞い行ってあげないと」
「綾香、優しい」
沙良がいると自分が一番になれない。いい機会だ。お見舞いはけん制をしに行ったのだ。
病院からの帰り道に綾香たちは笑いあった。うまく成功したはずなのに気持ちは晴れなかった。
「お邪魔虫は生徒会から追い出せたけど、あの横にいた女さ」
「高村貴子。うざいね。ずっとべらべら悪口言っていたよ」
「ラスク持ってきたよね。なんかしょぼいやつ」
ダサいと全員が笑っていた。
さっと視線が綾香に注がれた。次のターゲットは誰か決を出すのは自分なのだ。
「みなさん、ご用意をお願いね。高村さんを少しだけ、ね……」
綾香はターゲットを沙良の周辺に目を向けた。
沙良はいじめに屈しないが、選ばれた高村貴子に効果はあった。貴子は気が弱いほうだった。沙良がいないと何も言えない。
取り巻きに言って少しずつ嫌がらせをしていく。真綿で首を締めるようにじっくり痛めつけた。
沙良から何らかのアクションがあると踏んでいた。生徒会に乗り込んできて怒りをぶちまけた。沙良は平静を装っていたが、綾香は勝ったと確信していたが、事態は予想外の方向へ進んでいる。まさか自分の過去の写真を使って脅迫まがいな行為をするとは予想だにもしなかった。
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