孤島に浮かぶ真実

平野耕一郎

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第二部

15

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 三限は体育だった。競技は卓球で、私は倦厭とした思いを胸に持っていた。あの木の棒で出来たラケットと、それを覆うラバーが好きになれなかった。最も、それらは言い訳に過ぎない。ただ私は卓球という競技のコツを今一つ理解できていない。

 今の練習形式は最悪だった。

 右端のテーブルに一番うまい人が二人一組になってシングルス練習して、その左隣に次のうまい人がいる形を取っている。

 つまり左のテーブルに移動するとレベルが下がっていく。私は最低のポジションに当たる左端に留まり続けることになっていた。

 いやらしい練習だ。最下位にいたくないように、上手く練習させる意図が感じられる。

 全く。

 テニスはできるのに、なぜテーブルテニスは出来ないのだろう。不思議で仕方がない。

 私は練習相手が球を拾いに行っている隙に、辺りを見渡し現状を調べた。

 右端、私たちのテーブルと対極の位置に彩月がいる。誰と相手をしているのかはわからなかったが、どちらもいい勝負をしている。楽しそうにやっていて、見ていても残念なので、私は順々に手前に目を移していく。

 やはり左側。今度はメイことと芽衣子がいる。体育は、一組と二組の合同で行っている。それでもわずかな人数
だ。

 メイも中々うまい打球を相手に返す。きっとバドミントンの反復練習で鍛えられているからだ。

 反射神経は鍛えているのに……

 私はうっすらと視線を移していく。

 隣のテーブルに緑が、落ち着いた様子で球を追いかけ的確に打ち返していた。ただ堅い動きなので、変則的な打球に反応できない印象が強い。

 こうして順々に視線で人の顔を捉えて、色々な人と仲良くなってきたのだと思う。

「星河、さん……?」

 呼び止めた声は、ひそやかでくぐもった声をしている。私は我に返って、このつまらないセンチメンタリズムをやめて、目の前の現実を戻る。

 練習をしている瑠璃が自然に視界に映り込む。彼女は少し遅れて授業にやってきて、自然に私とラリーの練習をしていた。

 ラケットの握り方、打ち方の体勢を見れば、この子が器用ではないことがすぐに分かってしまう。瑠璃の打球は、健気で可愛らしいところがある。思っていたことだが、少し薄暗いな雰囲気が漂う、どこか淡い――ほのかな薄い影が瑠璃を覆っていた。

 同じクラスだったので、ちゃんと見覚えはある。

 ただ名前がわからない……

 そう、昨日会っているじゃないか。図書委員会の後のことだ。ポッと湧くように頭の中で、目の前の女の子の
像が浮かび上がる。

 緑に気まずい感情をかき立てさせた子。昨日二人はばったりと図書館の前で遭遇した。言葉では言えない何か
が、そこに存在していた。

 私はまたもや明かせない謎を発見してしまう。

 トバッチリだけは降りかかって来ないでほしいものだ。
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