記憶にない思い出

平野耕一郎

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事後処理

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 警察は2つの調査をしていた。尾坂家から見つかった骨について。もう一つは風井空の死体だ。

 骨について、時間がかかったがDNA検査の結果、作成された似顔絵と上岡洋子の生前の写真が一致して当人であろうと判断が付いた。上岡洋子は調査によると両親を亡くしていた。その後、施設で過ごしていたが、そこを訪れた夫妻により里子になった。

 近所の住民によると上岡洋子を見かけたものはいない。ある日を境に全く見なくなってしまったが、それが5年前である。

「何だか夜中に何かを掘る音が聞こえてきたけどね。一時期だよ」

 恐らくスコップか何かで穴を掘っていたのだろう。穴ができ上がると同時に夫妻は上岡洋子を遺棄した。

 上岡洋子の死体発見後、遺骨の周りに石灰が巻かれていたとわかった。死体を早く腐らせるためだろうか。

 次はいなくなった風井空について説明しよう。

 尾坂勉と尾坂詩織の足取りを調べたところ、河口湖周辺のペンションに泊っていたことがわかる。

 10月26日の午前1時である。

 突然、深夜にやってきて空いている部屋はないかと行って来たのでペンションのオーナーが不審に思って覚えていたようだ。何でもスーツケースを持っていた。

「いきなり夜中にやってきたので、妙なお客さんでしたよ」

 続けてオーナーは怪訝な顔で話す。

「手に重そうなスーツケースを持っていましたね。でも帰りには持っていなくておかしいなって。でも、まさかね……」

 その後、警察は河口湖畔で調査を進めていた。

 小型ボートに黒いダイバースーツを付けた男が乗り込んでいた。

 ボトボトと音を立てて湖に入る。男たちはもぐさが生える湖中を駆け抜けて泳いでいく。

 バサバサと水面を蹴る音が聞こえていた。

 湖中を泳ぐ一人がカツンと固いものに触れた。

 形状確認をする。四角い、取手がある。スーツケースの形にそっくりである。

「ここだ! こっち来てくれ!」

 引き揚げ作業が始まった。スーツケースの中身を見た瞬間、屈強な肉体を持つ刑事たちも目を背けたくなる。

 白いワンピースを着ているから女だとわかる。海藻のように長い髪がケースにまとわりついていた。髪に隠れていたためか、相貌は見えないが、判別が付かないほど原型をとどめていなかった。

 引き上がったものはスーツケースだった。中から女性の腐乱死体が見つかった。後の調査で死後半年と判明する。

 司法解剖の結果、風井空だと判明した。死因は首を絞められたことによる窒息死。犯行現場は風井空の自宅で隣の住人の証言からドタバタと物音が深夜にしたことから、犯人は真夜中に侵入して風井空を殺害した。侵入経路は空いていた窓からとわかった。恐らく事前に開けていたのだろう。

 殺害より数日前に40代の男性が訪れていたことから、住人に聞いたところ尾坂誠だと分かった。状況から警察は尾坂誠と尾坂詩織を風井空殺害の容疑で被疑者死亡のまま書類送検した。夫妻を殺害した香西沙良は未だに行方がつかめていない。
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