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第1章―新しい人生
家族#1
親友兼恋人の葬式に参列したその日に、突然眩い光に包まれたかと思ったら赤ちゃんになっていた俺、須藤美陽。
赤ちゃんになったことを自覚したそのときは、夢かとも思ったが、何時まで経っても夢から覚めないため、俺はこれが現実だと認めた。
今の俺は、ミハル=ブラックウェルという名前だった。何故かファーストネームは前世と同じなので、そこだけはよかった。
しかし、よかったのはそこだけだった。
赤ちゃんになってしまったその日に両親がしていた会話から、俺は自分が未熟児で生まれたことがわかった。
その影響からなのか、俺の身体はとても弱く、もうこれまでに何度も病気にかかっては生死の境を彷徨った。
だが、父が医者だったのが救いだった。
父――ウィリアム=ブラックウェルは、今の俺がいる国で一番の腕だと言われている有名な医者だった。
父は、俺が死にかけるたびに、治療を施して俺の命をつなぎとめてくれた。父が居なかったら、今頃俺は死んでいただろう。
そして、母――アリサ=ブラックウェルの存在も大きかった。
実は俺の今の家、ブラックウェル家は貴族だ。しかも公爵家。
アリサはそんな高貴な家の当主だ。彼女は、並み居る男兄弟や親戚たちを抑えて公爵となった、本当の実力者だ。
俺が生まれる前にあったらしい隣国との戦争では、騎士団の長として男の騎士たちを引き連れ、見事勝利を治めたという偉業を持っている。
そんな功績があったから、俺の命をつなぎとめるための最新医療を惜しみなく施すことができたのだ。
母の存在がなくても、俺は生きていなかったに違いない。
そうしてなんとか生き延び、俺は三歳の誕生日を迎えた。
死にかけることも多かったので、細かくはわからないが、今いる場所のこともなんとなく把握した。
まずここは俺の居た現代日本ではなく、科学ではなく魔法が発達している世界だった。
また、人間だけでなくエルフやドワーフ、魔物、精霊のような、地球にはいなかった生き物もいるらしい。
現代日本だったら、ファンタジーと言われるであろう世界だ。
日本ではこんな風に異世界に転生する小説が流行っていたけど、まさか自分が体験することになろうとは思わなかった。
でもああいう小説だと、転生者は大体が所謂チートで凄い力を持ってて、異世界で無双とかしてたけど……、俺はどう繕ってもその真逆だった。魔法どころか体を動かすことすらままならないのだから。おかしいだろ。
……とは言いつつも、転生自体については、特に不満はなかった。あの時点で、元の世界に未練はなかったからだ。
親友兼恋人がまだ生きていたら違っただろうけど、あの時点ではもう事故で死んでしまっていたし。
もしかしたら、あの時俺は光に包まれたのではなく、既に死んでいたのかもしれない。
あの光は死ぬ間際に見た夢で、実際の俺は公園で死んでいたのではないか。
転生して三年経った今は、そう思い始めていた。
(もし本当にそうなんだとしたら、伊月も生まれ変わっていたらいいのに……)
今ではそう願うようにもなった。
親友兼恋人であった榊原伊月は、仕事から帰る途中、突然降ってきた落下物に直撃して死んでしまった。
しかし、何に当たって死んでしまったのかがわからなかった。何故ならその落下物はどういうわけか消えてしまっていたからだ。
通行人が、確かに伊月目掛けて何かが降ってきたのを見たということなのだが、救急隊と警察が現場に駆け付けたときには、その謎の落下物は跡形もなく消えており、頭に何かがぶつかった痕のある伊月の遺体が残っていただけだった。
そういうわけで、伊月の死は原因不明の事故として処理され、伊月はたった一日で物言わぬ灰となってしまった。
もう二度と会えないんだという実感が湧く前に、こうして転生してしまったから、伊月も俺のように転生していて、何時か会えるのではないかという期待を持たずにはいられなかった。
俺が自由に動ける体だったら、今にでも伊月を探しに行くんだけどな……。
でも、伊月は俺と気付かないかもしれない。今の俺は前世の俺とは似ても似つかない姿になってしまったから。
髪は父親と同じ金髪で、瞳は母親と同じ紫色だ。前世の俺は黒髪黒目だったからまずその時点で全然違うし、顔立ちも平凡そのものだったのが、今は誰がどうみても美少年……下手したら女の子とも見間違えられそうな顔立ちになった。
顔があまりにも変わりすぎているし、流石に気付かないだろうな。それに、仮に伊月も生まれ変わっていたとしても、俺みたいに姿が変わってるだろうし、街で会ってもお互いに気づかないかも……。
そんなことを考えつつ、今日もベッドの上で過ごしていると、部屋の扉が勢いよく開かれた。
赤ちゃんになったことを自覚したそのときは、夢かとも思ったが、何時まで経っても夢から覚めないため、俺はこれが現実だと認めた。
今の俺は、ミハル=ブラックウェルという名前だった。何故かファーストネームは前世と同じなので、そこだけはよかった。
しかし、よかったのはそこだけだった。
赤ちゃんになってしまったその日に両親がしていた会話から、俺は自分が未熟児で生まれたことがわかった。
その影響からなのか、俺の身体はとても弱く、もうこれまでに何度も病気にかかっては生死の境を彷徨った。
だが、父が医者だったのが救いだった。
父――ウィリアム=ブラックウェルは、今の俺がいる国で一番の腕だと言われている有名な医者だった。
父は、俺が死にかけるたびに、治療を施して俺の命をつなぎとめてくれた。父が居なかったら、今頃俺は死んでいただろう。
そして、母――アリサ=ブラックウェルの存在も大きかった。
実は俺の今の家、ブラックウェル家は貴族だ。しかも公爵家。
アリサはそんな高貴な家の当主だ。彼女は、並み居る男兄弟や親戚たちを抑えて公爵となった、本当の実力者だ。
俺が生まれる前にあったらしい隣国との戦争では、騎士団の長として男の騎士たちを引き連れ、見事勝利を治めたという偉業を持っている。
そんな功績があったから、俺の命をつなぎとめるための最新医療を惜しみなく施すことができたのだ。
母の存在がなくても、俺は生きていなかったに違いない。
そうしてなんとか生き延び、俺は三歳の誕生日を迎えた。
死にかけることも多かったので、細かくはわからないが、今いる場所のこともなんとなく把握した。
まずここは俺の居た現代日本ではなく、科学ではなく魔法が発達している世界だった。
また、人間だけでなくエルフやドワーフ、魔物、精霊のような、地球にはいなかった生き物もいるらしい。
現代日本だったら、ファンタジーと言われるであろう世界だ。
日本ではこんな風に異世界に転生する小説が流行っていたけど、まさか自分が体験することになろうとは思わなかった。
でもああいう小説だと、転生者は大体が所謂チートで凄い力を持ってて、異世界で無双とかしてたけど……、俺はどう繕ってもその真逆だった。魔法どころか体を動かすことすらままならないのだから。おかしいだろ。
……とは言いつつも、転生自体については、特に不満はなかった。あの時点で、元の世界に未練はなかったからだ。
親友兼恋人がまだ生きていたら違っただろうけど、あの時点ではもう事故で死んでしまっていたし。
もしかしたら、あの時俺は光に包まれたのではなく、既に死んでいたのかもしれない。
あの光は死ぬ間際に見た夢で、実際の俺は公園で死んでいたのではないか。
転生して三年経った今は、そう思い始めていた。
(もし本当にそうなんだとしたら、伊月も生まれ変わっていたらいいのに……)
今ではそう願うようにもなった。
親友兼恋人であった榊原伊月は、仕事から帰る途中、突然降ってきた落下物に直撃して死んでしまった。
しかし、何に当たって死んでしまったのかがわからなかった。何故ならその落下物はどういうわけか消えてしまっていたからだ。
通行人が、確かに伊月目掛けて何かが降ってきたのを見たということなのだが、救急隊と警察が現場に駆け付けたときには、その謎の落下物は跡形もなく消えており、頭に何かがぶつかった痕のある伊月の遺体が残っていただけだった。
そういうわけで、伊月の死は原因不明の事故として処理され、伊月はたった一日で物言わぬ灰となってしまった。
もう二度と会えないんだという実感が湧く前に、こうして転生してしまったから、伊月も俺のように転生していて、何時か会えるのではないかという期待を持たずにはいられなかった。
俺が自由に動ける体だったら、今にでも伊月を探しに行くんだけどな……。
でも、伊月は俺と気付かないかもしれない。今の俺は前世の俺とは似ても似つかない姿になってしまったから。
髪は父親と同じ金髪で、瞳は母親と同じ紫色だ。前世の俺は黒髪黒目だったからまずその時点で全然違うし、顔立ちも平凡そのものだったのが、今は誰がどうみても美少年……下手したら女の子とも見間違えられそうな顔立ちになった。
顔があまりにも変わりすぎているし、流石に気付かないだろうな。それに、仮に伊月も生まれ変わっていたとしても、俺みたいに姿が変わってるだろうし、街で会ってもお互いに気づかないかも……。
そんなことを考えつつ、今日もベッドの上で過ごしていると、部屋の扉が勢いよく開かれた。
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