異世界転生したのに弱いってどういうことだよ

めがてん

文字の大きさ
15 / 80
第2章―初めての友達

入院生活#4

~ミハル視点~

――レナルドが退院した。
彼との入院生活は楽しかった。退屈だった日々が、彼と遊ぶことで色が変わった。
最近は新しく始まった薬の副作用の所為かやけに眠くて、一日のほとんどを寝てたら、寝てる間に退院してしまってて、最後の別れの挨拶ができなかったのが残念だったけど……。

そんなわけで一人の入院生活に戻った。
病室も、レナルドの使っていたベッドは片付けられ、元の個室の状態に戻った。
ベッドが丸ごとなくなったからか、妙に広く感じる。
しかし、レナルドと遊んだボードゲームの道具だけは残っていた。

「……あれ?」

その、ボードゲームを見ていたら、手にぽたっと水が落ちてきた。
なんだこれ。

まさか俺……一人になって、寂しくなった?
中身大人なのに?寂しくなって泣いちゃってるわけ?

「はは……寂しがらなくていいとか、どの口が言ってんだか……」

大人ぶってあんなこと言っておいて、泣いてちゃ世話ないわな。
しかし、友達と離れるのが、こんなにつらいとは思わなかった。

いや、伊月と死に別れたときもすごくつらかったけど。
こんな気持ちになるのは、あのときくらいだと思ってたのに。

「……もっと、健康になりたいなあ」

そうすれば、レナルドとももっと遊べるし、伊月のことだって探しにいけるのにな。

――その日は前世ぶりに、泣きながら眠った。


***


~父視点~

『……もっと、健康になりたいなあ』

普段弱音を吐いてこない子の、切実な願いだった。


その日、僕は入院しているミハルの下へ、様子を見に行った。

ひょんなことで、レッドグレイヴ家の子息と同室となってしまい、同年代の子とほとんど接したことがなかったミハルは大丈夫だろうかと心配していたのだが、思ったより仲良くしているようで安心していた。
しかしレッドグレイヴ家の子息もつい先日退院してしまった。しかし、ミハルはまだ退院できる目処は立っていない。

そのことで気落ちしていないかと思って様子を見に行ったのだ。

その時に聞こえたのが先ほどの言葉だ。

そうだ、あの子は子供なのにまるで大人みたいに物わかりが良くて、つらくても何も言わない子だけど。
あの子にだって、思うことはある。
僕はそのことを忘れていないはずで、忘れていた。

「……ごめんね、ミハル……」

――君を、健康な体で生まれさせてあげられなくて。

僕は溢れる涙を抑えられず、病室の外で泣きはらした。


***


「ミハル様、退院おめでとうございます」
「ありがとう、ございます」

レッドグレイヴの子息が退院してから一か月後。ミハルもようやく退院できることになった。
完治したというわけではないが、とりあえず領地までは帰れるくらいには状態が回復したので後は領地に戻って療養、ということでの退院となった。

「ミハル、よく頑張ったね」
「お父さま、三か月も待たせちゃって……ごめんなさい」
「そんなこと、ミハルは気にしなくていいんだよ!お父さんはミハルが元気なのが一番なんだからね!」

申し訳なさそうに謝ってくる我が子に僕は努めて明るく励ました。
優しいこの子は本来の予定から大幅に変わって結局首都に三か月間も滞在することになってしまったことを気に病んでいるのだろうが、そんなことをミハルが気にする必要などないのだ。
だが、そんなことを言わせてしまう自分が情けなく、内心とても凹んだ。

まだ足元が覚束ないミハルを支えながら、僕は馬車に乗り込んだ。たったそれだけの動作だったが、ミハルは馬車の座席に座ったと同時に苦し気に息を吐いた。

「ミハル、大丈夫?苦しい?」
「ん……、だいじょぶ、です……ゲホッ、ゴホッ」

大丈夫だといいつつもその顔色は悪く、喉からは苦し気な息遣いが聞こえた。
ミハルは退院したとはいえ病院から出られるレベルになった、というだけで本調子からはまだ遠い状態だった。
休まなくても大丈夫だと言い張る息子を宥めながら、なるべく体に負担をかけないように、行きよりも長い行程で領地まで帰還した。

感想 27

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた

BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。 断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。 ーーそれなのに。 婚約者に婚約は破棄され、 気づけば断罪寸前の立場に。 しかも理由もわからないまま、 何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。 ※最終的にハッピーエンド ※愛され悪役令息

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!