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第2章―初めての友達
入院生活#4
~ミハル視点~
――レナルドが退院した。
彼との入院生活は楽しかった。退屈だった日々が、彼と遊ぶことで色が変わった。
最近は新しく始まった薬の副作用の所為かやけに眠くて、一日のほとんどを寝てたら、寝てる間に退院してしまってて、最後の別れの挨拶ができなかったのが残念だったけど……。
そんなわけで一人の入院生活に戻った。
病室も、レナルドの使っていたベッドは片付けられ、元の個室の状態に戻った。
ベッドが丸ごとなくなったからか、妙に広く感じる。
しかし、レナルドと遊んだボードゲームの道具だけは残っていた。
「……あれ?」
その、ボードゲームを見ていたら、手にぽたっと水が落ちてきた。
なんだこれ。
まさか俺……一人になって、寂しくなった?
中身大人なのに?寂しくなって泣いちゃってるわけ?
「はは……寂しがらなくていいとか、どの口が言ってんだか……」
大人ぶってあんなこと言っておいて、泣いてちゃ世話ないわな。
しかし、友達と離れるのが、こんなにつらいとは思わなかった。
いや、伊月と死に別れたときもすごくつらかったけど。
こんな気持ちになるのは、あのときくらいだと思ってたのに。
「……もっと、健康になりたいなあ」
そうすれば、レナルドとももっと遊べるし、伊月のことだって探しにいけるのにな。
――その日は前世ぶりに、泣きながら眠った。
***
~父視点~
『……もっと、健康になりたいなあ』
普段弱音を吐いてこない子の、切実な願いだった。
その日、僕は入院しているミハルの下へ、様子を見に行った。
ひょんなことで、レッドグレイヴ家の子息と同室となってしまい、同年代の子とほとんど接したことがなかったミハルは大丈夫だろうかと心配していたのだが、思ったより仲良くしているようで安心していた。
しかしレッドグレイヴ家の子息もつい先日退院してしまった。しかし、ミハルはまだ退院できる目処は立っていない。
そのことで気落ちしていないかと思って様子を見に行ったのだ。
その時に聞こえたのが先ほどの言葉だ。
そうだ、あの子は子供なのにまるで大人みたいに物わかりが良くて、つらくても何も言わない子だけど。
あの子にだって、思うことはある。
僕はそのことを忘れていないはずで、忘れていた。
「……ごめんね、ミハル……」
――君を、健康な体で生まれさせてあげられなくて。
僕は溢れる涙を抑えられず、病室の外で泣きはらした。
***
「ミハル様、退院おめでとうございます」
「ありがとう、ございます」
レッドグレイヴの子息が退院してから一か月後。ミハルもようやく退院できることになった。
完治したというわけではないが、とりあえず領地までは帰れるくらいには状態が回復したので後は領地に戻って療養、ということでの退院となった。
「ミハル、よく頑張ったね」
「お父さま、三か月も待たせちゃって……ごめんなさい」
「そんなこと、ミハルは気にしなくていいんだよ!お父さんはミハルが元気なのが一番なんだからね!」
申し訳なさそうに謝ってくる我が子に僕は努めて明るく励ました。
優しいこの子は本来の予定から大幅に変わって結局首都に三か月間も滞在することになってしまったことを気に病んでいるのだろうが、そんなことをミハルが気にする必要などないのだ。
だが、そんなことを言わせてしまう自分が情けなく、内心とても凹んだ。
まだ足元が覚束ないミハルを支えながら、僕は馬車に乗り込んだ。たったそれだけの動作だったが、ミハルは馬車の座席に座ったと同時に苦し気に息を吐いた。
「ミハル、大丈夫?苦しい?」
「ん……、だいじょぶ、です……ゲホッ、ゴホッ」
大丈夫だといいつつもその顔色は悪く、喉からは苦し気な息遣いが聞こえた。
ミハルは退院したとはいえ病院から出られるレベルになった、というだけで本調子からはまだ遠い状態だった。
休まなくても大丈夫だと言い張る息子を宥めながら、なるべく体に負担をかけないように、行きよりも長い行程で領地まで帰還した。
――レナルドが退院した。
彼との入院生活は楽しかった。退屈だった日々が、彼と遊ぶことで色が変わった。
最近は新しく始まった薬の副作用の所為かやけに眠くて、一日のほとんどを寝てたら、寝てる間に退院してしまってて、最後の別れの挨拶ができなかったのが残念だったけど……。
そんなわけで一人の入院生活に戻った。
病室も、レナルドの使っていたベッドは片付けられ、元の個室の状態に戻った。
ベッドが丸ごとなくなったからか、妙に広く感じる。
しかし、レナルドと遊んだボードゲームの道具だけは残っていた。
「……あれ?」
その、ボードゲームを見ていたら、手にぽたっと水が落ちてきた。
なんだこれ。
まさか俺……一人になって、寂しくなった?
中身大人なのに?寂しくなって泣いちゃってるわけ?
「はは……寂しがらなくていいとか、どの口が言ってんだか……」
大人ぶってあんなこと言っておいて、泣いてちゃ世話ないわな。
しかし、友達と離れるのが、こんなにつらいとは思わなかった。
いや、伊月と死に別れたときもすごくつらかったけど。
こんな気持ちになるのは、あのときくらいだと思ってたのに。
「……もっと、健康になりたいなあ」
そうすれば、レナルドとももっと遊べるし、伊月のことだって探しにいけるのにな。
――その日は前世ぶりに、泣きながら眠った。
***
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『……もっと、健康になりたいなあ』
普段弱音を吐いてこない子の、切実な願いだった。
その日、僕は入院しているミハルの下へ、様子を見に行った。
ひょんなことで、レッドグレイヴ家の子息と同室となってしまい、同年代の子とほとんど接したことがなかったミハルは大丈夫だろうかと心配していたのだが、思ったより仲良くしているようで安心していた。
しかしレッドグレイヴ家の子息もつい先日退院してしまった。しかし、ミハルはまだ退院できる目処は立っていない。
そのことで気落ちしていないかと思って様子を見に行ったのだ。
その時に聞こえたのが先ほどの言葉だ。
そうだ、あの子は子供なのにまるで大人みたいに物わかりが良くて、つらくても何も言わない子だけど。
あの子にだって、思うことはある。
僕はそのことを忘れていないはずで、忘れていた。
「……ごめんね、ミハル……」
――君を、健康な体で生まれさせてあげられなくて。
僕は溢れる涙を抑えられず、病室の外で泣きはらした。
***
「ミハル様、退院おめでとうございます」
「ありがとう、ございます」
レッドグレイヴの子息が退院してから一か月後。ミハルもようやく退院できることになった。
完治したというわけではないが、とりあえず領地までは帰れるくらいには状態が回復したので後は領地に戻って療養、ということでの退院となった。
「ミハル、よく頑張ったね」
「お父さま、三か月も待たせちゃって……ごめんなさい」
「そんなこと、ミハルは気にしなくていいんだよ!お父さんはミハルが元気なのが一番なんだからね!」
申し訳なさそうに謝ってくる我が子に僕は努めて明るく励ました。
優しいこの子は本来の予定から大幅に変わって結局首都に三か月間も滞在することになってしまったことを気に病んでいるのだろうが、そんなことをミハルが気にする必要などないのだ。
だが、そんなことを言わせてしまう自分が情けなく、内心とても凹んだ。
まだ足元が覚束ないミハルを支えながら、僕は馬車に乗り込んだ。たったそれだけの動作だったが、ミハルは馬車の座席に座ったと同時に苦し気に息を吐いた。
「ミハル、大丈夫?苦しい?」
「ん……、だいじょぶ、です……ゲホッ、ゴホッ」
大丈夫だといいつつもその顔色は悪く、喉からは苦し気な息遣いが聞こえた。
ミハルは退院したとはいえ病院から出られるレベルになった、というだけで本調子からはまだ遠い状態だった。
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