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第3章―夢と大切なこと
その夢は誰が為に#1
~ダニエル視点~
僕はダニエル。ダニエル=ネロだ。ネロは、母さんのファミリーネームだ。
ついこの間まで、僕は小さな港町で母さんと一緒に暮らしていた。
でも母さんは病気で死んでしまった。母さんには頼れる人は居なかったけど、母さんの葬式が終わってすぐに僕はとある家へと連れていかれた。
それは四大公爵家の一つの、ブラックウェル家だった。
僕を迎えに来たブラックウェルの使いの者たちは、「君のお母さんは、実はブラックウェルと縁がある人だったんだ」とだけ言った。
まだ8歳の子供に言えることなんて、そんなものだろう。
母さんがブラックウェルと縁があるというのも本当だ。でもそれ以上の秘密が僕にはある。
――僕は知っている。
僕は本当は、四大公爵家の一つ、グリーンウッド家の当主の子だってこと。
『貴方は賢いから……隠すべきではないと思ったの』
母さんはそう言って、死ぬ前に僕に全てを教えてくれた。
僕は自慢じゃないけど、一つを聞けば十わかる知能があると自負してる。
港町で通っていた学校でだって、僕は常に一番だった。
だから母さんがそう言ったのも、納得がいくんだ。
自分が死んだあと、僕が自分で自分を守れるように。すべての真実を教えてくれたのだ。
僕は権力争いの渦中に入ることも、死にたくもない。
――だって僕には夢がある。夢を叶えるためには絶対にグリーンウッドのしがらみに囚われたくなかったのだ。
だからブラックウェルに保護をしてもらうため――母さんが唯一持っていた実家とのつながりを頼りにブラックウェルに保護を求めた。
勿論、僕が自分で仕掛けたとは思わせないよう、策を巡らせて。
こうして僕は、何も知らぬまま母親が死に、母と縁のある家に保護された子供となった。
グリーンウッドの子に特徴的な深緑に青の混ざった瞳の色は魔法の薬で色を変えられて、僕はブラックウェルに住むことになった。
特徴を失くしたとはいえ、顔立ちは見る人が見ればグリーンウッドの現当主に似ていることはわかるだろうから、僕はブラックウェル家の屋敷の外に出ることは許されていない。それに対して不満は別にない。そのつもりでここに来たのだから当然だ。
――それなのに。
その考えが覆されることになろうとは、このときの僕はまだ思いもしていなかった。
ブラックウェル現当主の子、長男、次男、三男、あと末の長女。
彼らとも顔を合わせた。末の長女はまだ小さいから顔を合わせただけだが、長男は当たり障りなく、歓迎の言葉を言った。
しかしあの表情は何か知っている顔だった。長男のユリアスは首都のアカデミーで首席を取る天才だと聞いているし、次期当主でもあるから僕の素性も聞いている可能性があった。だからその表情も納得だ。
次男のアルフレッドは挨拶をした際に名前を名乗りあっただけで終わった。しかしその眼には少し哀れみの色が乗っていたので、純粋に僕の境遇を聞いて心を痛めていたのかもしれない。僕の素性は知らない様子だった。
問題は三男だ。三男、ミハル=ブラックウェルは僕と同い年のようだが、どうやら元々身体が弱い上に、マナ不適合症でもあるようで、ほとんど自室から出られないらしい。特に今の季節は体調が一番悪くなる時期のようで、僕は彼とだけは未だに顔を合わせられていなかった。
そして僕がブラックウェル家に来てから一か月経った頃。
「――あの、ダニエル様」
「はい、なんでしょう」
ブラックウェルの使用人たちは皆僕に対し敬って接してくれている。前当主と血縁があると聞いているからだろう。その使用人の一人から呼び止められた。
「今、お時間がありましたら、ミハル様とお会いになりますか?」
「ミハル様……とは、確か三男の……。でも、体の具合はいいんですか?」
「今日は比較的暖かいので、調子が良いようです。数分なら大丈夫とのことですが……。ミハル様も、お会いしたいそうなので、他に用事がないのであれば……」
「わかりました、行きましょう」
僕はこのときついに、ミハル=ブラックウェルと対面することとなった。
――この、彼との出会いが、後に僕の運命を大きく変えることになろうとは、このときの僕はまだ知る由もなかった。
僕はダニエル。ダニエル=ネロだ。ネロは、母さんのファミリーネームだ。
ついこの間まで、僕は小さな港町で母さんと一緒に暮らしていた。
でも母さんは病気で死んでしまった。母さんには頼れる人は居なかったけど、母さんの葬式が終わってすぐに僕はとある家へと連れていかれた。
それは四大公爵家の一つの、ブラックウェル家だった。
僕を迎えに来たブラックウェルの使いの者たちは、「君のお母さんは、実はブラックウェルと縁がある人だったんだ」とだけ言った。
まだ8歳の子供に言えることなんて、そんなものだろう。
母さんがブラックウェルと縁があるというのも本当だ。でもそれ以上の秘密が僕にはある。
――僕は知っている。
僕は本当は、四大公爵家の一つ、グリーンウッド家の当主の子だってこと。
『貴方は賢いから……隠すべきではないと思ったの』
母さんはそう言って、死ぬ前に僕に全てを教えてくれた。
僕は自慢じゃないけど、一つを聞けば十わかる知能があると自負してる。
港町で通っていた学校でだって、僕は常に一番だった。
だから母さんがそう言ったのも、納得がいくんだ。
自分が死んだあと、僕が自分で自分を守れるように。すべての真実を教えてくれたのだ。
僕は権力争いの渦中に入ることも、死にたくもない。
――だって僕には夢がある。夢を叶えるためには絶対にグリーンウッドのしがらみに囚われたくなかったのだ。
だからブラックウェルに保護をしてもらうため――母さんが唯一持っていた実家とのつながりを頼りにブラックウェルに保護を求めた。
勿論、僕が自分で仕掛けたとは思わせないよう、策を巡らせて。
こうして僕は、何も知らぬまま母親が死に、母と縁のある家に保護された子供となった。
グリーンウッドの子に特徴的な深緑に青の混ざった瞳の色は魔法の薬で色を変えられて、僕はブラックウェルに住むことになった。
特徴を失くしたとはいえ、顔立ちは見る人が見ればグリーンウッドの現当主に似ていることはわかるだろうから、僕はブラックウェル家の屋敷の外に出ることは許されていない。それに対して不満は別にない。そのつもりでここに来たのだから当然だ。
――それなのに。
その考えが覆されることになろうとは、このときの僕はまだ思いもしていなかった。
ブラックウェル現当主の子、長男、次男、三男、あと末の長女。
彼らとも顔を合わせた。末の長女はまだ小さいから顔を合わせただけだが、長男は当たり障りなく、歓迎の言葉を言った。
しかしあの表情は何か知っている顔だった。長男のユリアスは首都のアカデミーで首席を取る天才だと聞いているし、次期当主でもあるから僕の素性も聞いている可能性があった。だからその表情も納得だ。
次男のアルフレッドは挨拶をした際に名前を名乗りあっただけで終わった。しかしその眼には少し哀れみの色が乗っていたので、純粋に僕の境遇を聞いて心を痛めていたのかもしれない。僕の素性は知らない様子だった。
問題は三男だ。三男、ミハル=ブラックウェルは僕と同い年のようだが、どうやら元々身体が弱い上に、マナ不適合症でもあるようで、ほとんど自室から出られないらしい。特に今の季節は体調が一番悪くなる時期のようで、僕は彼とだけは未だに顔を合わせられていなかった。
そして僕がブラックウェル家に来てから一か月経った頃。
「――あの、ダニエル様」
「はい、なんでしょう」
ブラックウェルの使用人たちは皆僕に対し敬って接してくれている。前当主と血縁があると聞いているからだろう。その使用人の一人から呼び止められた。
「今、お時間がありましたら、ミハル様とお会いになりますか?」
「ミハル様……とは、確か三男の……。でも、体の具合はいいんですか?」
「今日は比較的暖かいので、調子が良いようです。数分なら大丈夫とのことですが……。ミハル様も、お会いしたいそうなので、他に用事がないのであれば……」
「わかりました、行きましょう」
僕はこのときついに、ミハル=ブラックウェルと対面することとなった。
――この、彼との出会いが、後に僕の運命を大きく変えることになろうとは、このときの僕はまだ知る由もなかった。
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