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第3章―夢と大切なこと
その夢は誰が為に#5
~ダニエル視点~
「――ミハルにそんなにやりたいこと、あったなんて知らなかったな」
「……ゆ、ユリアス……様!?な、何故ここに……」
其処に居たのは、ミハルの兄のユリアスだった。
「ミハル一人でこんなところまで誰にも気付かれずに来られるわけないでしょ?俺がずっと後ろから着いていってたんだよ」
「……あ、そ、そうだったんですね。そりゃそうか……」
「まあミハルは気付いてないけどね。……で、ミハルの命のことだけど」
いきなり核心を言われ僕は背が伸びた。
「確かに今のままだと数年だそうだよ。でも……『あるもの』が手に入れば、さらに伸ばせるかもしれない」
「『あるもの』……?」
「これだよ」
ユリアスは小指の爪ほどの小さな緑色の鉱石を僕に渡してきた。
「この鉱石、磨くととても綺麗に光るっていうんで、元々市場じゃ高級宝石として出回ってるんだけどさ。最近わかったのが、この鉱石はある特殊な加工をすると、『マナを弾く』ってことなんだ」
「マナを弾く?」
「これさ、うまく利用すれば……ミハルの命を繋ぐのに役立ちそうだよね」
「……!」
確かにそのとおりだ。だが何故ユリアスは僕にその話を……。
「でも上手く利用する方法を見つけるにも、この鉱石、中々量が手に入らないんだ。何故だか知ってる?」
「……希少なのですか?」
「ううん、違うよ。この鉱石が獲れる鉱山は割と多い――でもね、その鉱山はどれも独占されちゃってるの」
「独占……?」
「そう――かの、『グリーンウッド』にね」
僕はその名前に息を呑んだ。
「グリーンウッドとしては、貴重な収入源だし、鉱山を手放す気なんてさらさらないんだけど……うちとしては量が欲しい。ここまで言えば……俺が君に何を求めてるか、わかるよね」
「……奪ってこいということですね」
「うん、流石。やっぱり君、俺と並んで天才と言われてるだけあるよ」
ユリアスは満足げに口角を上げた。その笑みはミハルのものによく似ていたが、しかしその奥に潜む深い企みは、ミハルにはないものだった。
「君ならできる――その血筋と頭脳で。グリーンウッドの頂点になって、ミハルの命の糧になってよ」
その言葉に、僕は震えた。
――心に湧き上がる歓喜に。
僕が一度、嫌だと思って手放したものが――役に立つ日が来るとは思わなかった。
「いいですよ、なってやりましょう――そのための手は、勿論貸していただけるのですよね?」
ユリアスは答えの代わりに笑みを返した。
***
~ミハル視点~
こっそりダニエル君の部屋に行って彼と話をして、満足して気を失ってしまった俺は、目を覚ましたあと、こっぴどく怒られた。
ダニエル君にも、昨日家に帰ってきていたユリアスにも。
そのあと、ダニエル君は別のブラックウェル傘下の貴族邸宅に移ることになったと聞かされ俺は顔を青くさせた。
「どうして……?もしかして、僕の所為?」
俺が無茶して無理矢理ダニエル君の部屋に行ったせいで、彼の方に咎めが行ってしまったのかと思ってそう聞いたのだが、それは違うと返された。
であれば、彼の存在がグリーンウッドに気付かれたということではないのだろうか。
でも、ダニエル君が本当はグリーンウッドの庶子であることを、俺は知らないことになっているからそれは聞けなかった。
「――大丈夫。ミハルが心配することは何もないよ」
しかしダニエル君はそんな俺の心をまるで読んだかのようにそう言った。
「どうしても手に入れたいものがあるんだ。それを手に入れたら、必ず戻ってくるから」
ダニエル君はそう言い残して、屋敷を去っていった。
部屋のベッドで彼の行く末を心配していると、ユリアスに肩を叩かれた。
「彼なら大丈夫、心配いらないよ」
「……もしかして、ユリアス兄さま……、なにか、しましたか」
「ん?何のことかな」
ユリアスはにこりと笑うだけだった。
……これ絶対何か噛んでるな……。
***
――その一年後。
とある一つの新聞記事が、国中を賑やかせた。
題名は、『グリーンウッド家の真・後継者』。
グリーンウッドの当主とその弟であり後継者とされていたその人は、帝国独占禁止法に違反していることが発覚、二人揃って失脚。
その身内の膿を暴き清らかなグリーンウッドを取り戻したのは、存在を隠され忘れられたグリーンウッドの正当後継者――現当主の隠し子。
――その名を、ダニエル=グリーンウッド。齢九にして、正義を掲げた天才児。
「――ミハルにそんなにやりたいこと、あったなんて知らなかったな」
「……ゆ、ユリアス……様!?な、何故ここに……」
其処に居たのは、ミハルの兄のユリアスだった。
「ミハル一人でこんなところまで誰にも気付かれずに来られるわけないでしょ?俺がずっと後ろから着いていってたんだよ」
「……あ、そ、そうだったんですね。そりゃそうか……」
「まあミハルは気付いてないけどね。……で、ミハルの命のことだけど」
いきなり核心を言われ僕は背が伸びた。
「確かに今のままだと数年だそうだよ。でも……『あるもの』が手に入れば、さらに伸ばせるかもしれない」
「『あるもの』……?」
「これだよ」
ユリアスは小指の爪ほどの小さな緑色の鉱石を僕に渡してきた。
「この鉱石、磨くととても綺麗に光るっていうんで、元々市場じゃ高級宝石として出回ってるんだけどさ。最近わかったのが、この鉱石はある特殊な加工をすると、『マナを弾く』ってことなんだ」
「マナを弾く?」
「これさ、うまく利用すれば……ミハルの命を繋ぐのに役立ちそうだよね」
「……!」
確かにそのとおりだ。だが何故ユリアスは僕にその話を……。
「でも上手く利用する方法を見つけるにも、この鉱石、中々量が手に入らないんだ。何故だか知ってる?」
「……希少なのですか?」
「ううん、違うよ。この鉱石が獲れる鉱山は割と多い――でもね、その鉱山はどれも独占されちゃってるの」
「独占……?」
「そう――かの、『グリーンウッド』にね」
僕はその名前に息を呑んだ。
「グリーンウッドとしては、貴重な収入源だし、鉱山を手放す気なんてさらさらないんだけど……うちとしては量が欲しい。ここまで言えば……俺が君に何を求めてるか、わかるよね」
「……奪ってこいということですね」
「うん、流石。やっぱり君、俺と並んで天才と言われてるだけあるよ」
ユリアスは満足げに口角を上げた。その笑みはミハルのものによく似ていたが、しかしその奥に潜む深い企みは、ミハルにはないものだった。
「君ならできる――その血筋と頭脳で。グリーンウッドの頂点になって、ミハルの命の糧になってよ」
その言葉に、僕は震えた。
――心に湧き上がる歓喜に。
僕が一度、嫌だと思って手放したものが――役に立つ日が来るとは思わなかった。
「いいですよ、なってやりましょう――そのための手は、勿論貸していただけるのですよね?」
ユリアスは答えの代わりに笑みを返した。
***
~ミハル視点~
こっそりダニエル君の部屋に行って彼と話をして、満足して気を失ってしまった俺は、目を覚ましたあと、こっぴどく怒られた。
ダニエル君にも、昨日家に帰ってきていたユリアスにも。
そのあと、ダニエル君は別のブラックウェル傘下の貴族邸宅に移ることになったと聞かされ俺は顔を青くさせた。
「どうして……?もしかして、僕の所為?」
俺が無茶して無理矢理ダニエル君の部屋に行ったせいで、彼の方に咎めが行ってしまったのかと思ってそう聞いたのだが、それは違うと返された。
であれば、彼の存在がグリーンウッドに気付かれたということではないのだろうか。
でも、ダニエル君が本当はグリーンウッドの庶子であることを、俺は知らないことになっているからそれは聞けなかった。
「――大丈夫。ミハルが心配することは何もないよ」
しかしダニエル君はそんな俺の心をまるで読んだかのようにそう言った。
「どうしても手に入れたいものがあるんだ。それを手に入れたら、必ず戻ってくるから」
ダニエル君はそう言い残して、屋敷を去っていった。
部屋のベッドで彼の行く末を心配していると、ユリアスに肩を叩かれた。
「彼なら大丈夫、心配いらないよ」
「……もしかして、ユリアス兄さま……、なにか、しましたか」
「ん?何のことかな」
ユリアスはにこりと笑うだけだった。
……これ絶対何か噛んでるな……。
***
――その一年後。
とある一つの新聞記事が、国中を賑やかせた。
題名は、『グリーンウッド家の真・後継者』。
グリーンウッドの当主とその弟であり後継者とされていたその人は、帝国独占禁止法に違反していることが発覚、二人揃って失脚。
その身内の膿を暴き清らかなグリーンウッドを取り戻したのは、存在を隠され忘れられたグリーンウッドの正当後継者――現当主の隠し子。
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