女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo

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第1章:開かずのアパート

第13話:「闇に消えた者たち」

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——追跡を振り切った。

 商店街の入り口にたどり着いた千影と柚葉は、ようやく足を止めた。

 街灯の光が照らす通りは、昼間とは違い閑散としている。すでに店じまいしたシャッター街の静けさが、二人の鼓動を余計に大きく感じさせた。

「はぁ……はぁ……まさか、こんな逃走劇になるとは思わなかったよ……」

 柚葉は膝に手をつきながら荒い息を吐く。

「でも、どうにか巻けたみたいね」

 千影は背後を振り返りながら、慎重に周囲を確認した。

 ——敵の姿はない。

「うん……たぶん、大丈夫……」

 柚葉も辺りを見回しながら、ようやくほっと息をついた。

「でも、杉田さんと美咲ちゃんのほうは……」

「……それが問題ね」

 千影の表情が険しくなる。

 二手に分かれた彼らが無事に逃げ切れているのか——その確認が必要だった。

「とにかく、杉田さんに連絡を……」

 千影がスマートフォンを取り出した、その瞬間だった。

——着信。

 「!」

 千影と柚葉が顔を見合わせる。

 画面に表示されたのは、"杉田"の名前。

「……無事なの?」

 柚葉が不安そうに千影を見つめる。

「今、確認するわ」

 千影は通話ボタンを押し、すぐに耳に当てた。

「杉田さん、大丈夫ですか?」

 だが——応答はない。

「……杉田さん?」

 無音のまま、かすかに何かのノイズだけが聞こえる。

「何か変だよ……?」

 柚葉が不安げに千影の肩を掴む。

 そのとき——

「……助け……」

 かすれた声が、受話口の向こうから漏れた。

「っ!?」

 千影と柚葉の表情が一気に変わる。

——通話が切れた。

「杉田さん!? 美咲ちゃん!?」

 千影はすぐにもう一度発信しようとした。

 しかし——

「この番号は現在、電源が入っていないか、電波の届かない場所にあるため——」

 無機質なアナウンスが流れた。

「っ……!」

 千影は、無言のままスマートフォンを握りしめる。

 杉田と美咲が、何者かに襲われた——?

「嘘でしょ……!?」

 柚葉の顔が青ざめる。

「どうしよう……! もしかして、あの黒フードの奴らに……!」

「落ち着いて」

 千影は、冷静に柚葉の目を見つめた。

「今、焦っても状況は変わらないわ。まずは"考える"ことが大事よ」

「で、でも……!」

 柚葉の声が震える。

 だが、千影は静かに息を吸い込み、考えを巡らせた。

「まず、杉田さんは逃走中に"助け"を求める電話をかけてきた」

「う、うん……」

「つまり、その時点で彼らはまだ捕まっていなかった。だとすれば、通話が切れる直前に何かが起こった可能性が高いわ」

「何かって……襲われたとか?」

「ええ、または"強制的に電話を切らされた"か」

「……っ!」

 柚葉の顔が強張る。

「じゃあ、どうするの……? このまま放っておけないよ!」

「もちろんよ」

 千影はスマートフォンの画面を操作しながら言った。

「杉田さんが最後に電話をかけてきた時の"発信元"を特定するわ」

「えっ、そんなことできるの!?」

「ある程度はね。発信元の基地局を割り出せば、"どのエリアからかけられたか"は分かるはずよ」

 千影は検索をかけ、直前の通信記録を調べる。

 数秒後——

「……商店街の裏手、川沿いの倉庫街」

「倉庫街!?」

 柚葉が驚く。

「なんでそんなところに!?」

「分からない。でも、何か"運び込まれた"可能性があるわ」

「運び込まれたって……!?」

「杉田さんと美咲ちゃんが"連れ去られた"と考えれば、場所の選択としては合理的よ。人気のない場所なら、目撃されるリスクも低いしね」

「……っ!」

 柚葉は息を呑んだ。

「で、でも! もしそこに黒フードの奴らがいたら……どうするの!?」

「"状況を確認する"わ」

 千影の表情は冷静だった。

「私たちが今できることは、彼らがどんな状態にあるのかを確認し、それに応じた行動を取ること。それに、まだ"敵が何者なのか"も分かっていないのよ」

「……」

 柚葉は、一瞬躊躇したように口を閉じた。

 だが——

「……はぁ……もう! 分かったよ!」

 やがて彼女は大きく息を吐き、肩をすくめた。

「ここまで来たら、最後まで付き合うしかないでしょ……!」

 千影は、その言葉に小さく微笑んだ。

「頼りにしてるわ」

「ほんと、千影のこういうとこ、たまに怖いんだけど……」

 柚葉が頭を抱えながらぼやく。

「でも、確かに杉田さんと美咲ちゃんを見捨てるわけにはいかないし……よし! さっさと行くよ!」

「ええ。急ぎましょう」

 二人はスマートフォンの地図を確認しながら、倉庫街へ向かう道を進み始めた。

 ——すべての手がかりは、闇に閉ざされた"倉庫街"の中にある。

 そして、そこにはきっと——彼らを待ち構える"何者か"がいる。

 だが、ミステリー研究会の二人は、すでに引き返すつもりはなかった。

 ——"開かずのアパート"の謎は、まだ終わらない。
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