女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo

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第1章:開かずのアパート

第12話:「脱出」

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「窓から飛び降りるわよ!」

 千影の冷静な声が響いた。

「えぇぇぇぇ!?!?!?」

 柚葉の悲鳴が部屋にこだまする。

「ちょっ、千影!? ここ二階だよ!? 普通に考えて無理でしょ!?」

「大丈夫。すぐ下には草むらがある。落ちる衝撃は軽減されるわ」

「問題はそこじゃないんだけど!?」

 しかし、背後から迫る足音は、二人に議論の時間を与えなかった。

「くそっ……!」

 杉田が奥歯を噛みしめる。

「玄関を塞がれてる以上、ここから出るしかない……!」

「でも……!」

 美咲が不安そうに千影を見上げる。

「大丈夫よ、美咲ちゃん。私が先に飛ぶわ。そのあと、美咲ちゃんを受け止める」

 千影の声は落ち着いていた。それが、美咲の不安を少しだけ和らげる。

「……分かった」

「くっそー! もう知らない!! どうにでもなれ!!」

 柚葉が頭を抱えながらも覚悟を決める。

——バンッ!!

 扉の向こうで、黒いフードの男が勢いよくドアを蹴った音が響く。

「急いで!」

 千影は窓を開けると、すぐに身を乗り出した。

「ふっ……!」

 一瞬の躊躇もなく、身を翻して窓枠を蹴る。

 ——バサッ!

 そして、見事に地面へ着地した。

「すごっ……!!」

 柚葉が思わず目を見開く。

「さあ、次は美咲ちゃん!」

 千影が手を広げる。

 美咲は一瞬だけ怖がったが、千影の力強い眼差しを見て、勇気を振り絞った。

「い、いくよ……!」

 彼女は目を閉じ、勢いをつけて飛んだ。

「……!」

 千影がしっかりと腕を広げ、美咲の体を受け止める。

「よし、大丈夫!」

「う、うん……!」

「次、柚葉!」

「マジかー!!!」

 柚葉は悲鳴を上げながら、思い切って飛び降りる。

——ドサッ!!

「いてて……やっぱり無理があるよこれ!」

「文句はあと!」

「分かったよ! もう!」

 最後に杉田が窓から飛び降り、全員が無事に地上へ降り立った。

「成功……!」

 千影がほっと息を吐く。

——だが、その瞬間。

「……逃がすか」

 静かな声が、アパートの上から聞こえた。

 四人が顔を上げると、窓から黒いフードの男が彼らを見下ろしていた。

「……っ!」

「やばい! 走れ!!」

 千影が叫ぶと同時に、四人は一斉に駆け出した。


 夜の裏通りを、四人は全速力で駆け抜けた。

「……ど、どこに逃げるの!?」

 柚葉が息を切らしながら尋ねる。

「一旦、人の多い場所へ出るわよ! 商店街まで行けば、そう簡単には追ってこられないはず!」

「了解!!」

 だが——

「……無駄だ」

 背後から、低く冷たい声が響いた。

 次の瞬間。

——バシュッ!!

「……っ!?」

 千影のすぐ横の壁に、小さな金属の弾丸のようなものが突き刺さった。

「今の……何!?」

 柚葉が驚愕する。

 千影は一瞬で状況を理解した。

「……サプレッサー付きのエアガンね」

「えっ、銃!?」

「そう。おそらく狙撃用のものじゃなく、威嚇用。でも、当たれば痛みは避けられないわね」

「なんでそんな物騒なもん持ってるの!?」

「そんなの分からないわ。でも、この人たち、本気で"私たちを捕まえるつもり"みたいね」

「くそ……!」

 杉田が悔しそうに歯を食いしばる。

「俺のせいで、お前たちまで巻き込んじまったな……!」

「そんなこと言ってる場合じゃないわよ! まずは逃げる!」

「……いや、ここで分かれる」

 千影が急に立ち止まり、冷静な声で言った。

「えっ!?」

 柚葉が驚く。

「今のままじゃ、全員捕まる可能性が高いわ。でも、二手に分かれれば、その確率はぐっと下がる」

「それは分かるけど……!」

「私と柚葉はこのまま商店街へ向かう。杉田さんと美咲ちゃんは、反対方向に逃げて」

「……っ!」

 杉田が一瞬迷ったが、すぐに決断した。

「分かった……! でも、そっちも気をつけろよ!」

「ええ、あなたたちも」

 そう言うと、千影はすぐに柚葉の腕を引いた。

「行くわよ!」

「うわああ、もう、千影のこういうとこぉぉ!!!」

 柚葉の叫び声を背に、二人は夜の街へと駆け出した——。


 数分後。

 千影と柚葉は、どうにか商店街の入り口までたどり着いた。

「……ふぅ……ふぅ……!!」

 柚葉が息を切らしながら膝に手をつく。

「ま、まさか私がこんな全力疾走することになるなんて……!」

「でも、どうやら追ってこられていないみたいね」

 千影は商店街の通りを慎重に見回した。

 ——敵の姿はない。

「……なんとか撒いた?」

「そうね……今のところは」

 しかし、千影の表情はまだ険しかった。

「でも、きっとまた現れるわ。あの"黒いフードの男"は、絶対に私たちのことを諦めない」

「じゃあ……どうするの?」

 柚葉が不安げに尋ねる。

 千影はポケットの中の"取引記録"を強く握りしめた。

「まずは、この記録を分析する。そして、美咲ちゃんのお母さんがこの事件にどう関わっていたのかを突き止める」

「……!」

 柚葉は、千影の鋭い目を見て、思わず息を呑んだ。

 "開かずのアパート"の謎は、まだ終わらない。

 そして、二人はすでに、"真実の核心"へと足を踏み入れていた——。
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