女子高生探偵:千影&柚葉

naomikoryo

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第1章:開かずのアパート

第34話:「地下通路の先に」

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——松風荘・隠し地下通路。

 千影たちは、暗く細長い地下通路を慎重に進んでいた。

 レンガ造りの壁は古く、天井にはむき出しの電線が這い、かすかに湿った空気が漂っている。足元の床はコンクリートで、一部にはひび割れが入っていた。

「……まさか、アパートの下にこんなものがあったなんて……」

 美咲が小さな声で呟く。

「この通路、どこに繋がってるんだろ……」

「まだ分からない。でも、この道が"先生"の言っていた"最後の鍵"であることは間違いないわ」

 千影はライトを前方に向けながら、慎重に歩を進める。

 柚葉はナイフを握りしめ、周囲を警戒していた。

「なんか……めっちゃ怖いんだけど……」

「ええ。でも、ここで引き返すわけにはいかないわよ」

「わかってるけどさぁ……」

 その時——

——カツン。

 美咲の足元で、小さな金属音が響いた。

「えっ?」

 彼女が驚いて足を止める。

「何か踏んだ?」

 千影がライトを向けると、床の一部に鉄製のハッチのようなものが埋め込まれていた。

「これは……」

「何かの扉?」

 柚葉がしゃがみ込み、ハッチの表面を触る。

「でも、鍵穴とか取っ手とかないよ?」

「なら、これは"開けてはいけない"ものかもしれないわね」

「えっ、じゃあどうするの?」

「このまま先に進むわ」

 千影はハッチを一瞥すると、再び通路の奥へと歩き出した。

 そして、数分ほど進んだところで——

「……っ!?」

 千影は思わず足を止めた。

 通路の先に、頑丈そうな金属製の扉が立ちはだかっていた。

「これが……"最後の扉"?」

 美咲が息を呑む。

 千影は慎重に扉に近づき、表面を確認した。

 すると——

「……鍵がかかってないわ」

「えっ? じゃあ、開くの?」

「ええ」

 千影はゆっくりとドアノブを回した。

——ギィ……。

 鈍い音を立てながら、扉が開く。

 そして、ライトの光が差し込んだ瞬間——

「……!!」

 三人は息を呑んだ。


 ——地下施設の広間。

 扉の向こうに広がっていたのは、松風荘の雰囲気とはまるで違う空間だった。

 無機質なコンクリートの広間。

 壁際には古びた机と書類が散乱し、部屋の奥には監視モニターがいくつも並んでいる。

「な、何ここ……!?」

「まるで……"秘密の研究施設"みたい……」

 柚葉が驚きながら辺りを見渡す。

「でも、誰もいない……?」

「……いえ、誰かがいた形跡はあるわ」

 千影は散乱した書類を手に取り、ページをめくる。

「……"取引記録"?」

 そこには、"松風荘"という名前とともに、何かのコードが記されたリストが並んでいた。

「もしかして、違法取引のデータ……?」

「可能性は高いわね。でも、今はそれより——」

「……っ!!」

 その時、美咲が息を呑んだ。

 彼女の視線の先には——

鉄格子で閉ざされた小さな部屋があった。

 そして、その奥に——

「お、お母さん……!!!」

 美咲が叫び、駆け出す。

 格子の向こうには、椅子に座らされ、手錠で拘束された女性——相原美沙の姿があった。

「お母さん!! ねえ、お母さん!!」

 美咲は鉄格子を掴み、必死に叫ぶ。

「……美咲……?」

 かすれた声が、静かな空間に響く。

 美沙のまぶたがゆっくりと開き、焦点の合わない目が美咲を捉えた。

「お母さん……!!」

「美咲……? あなた……なの……?」

「うん!! 私だよ!!」

 美咲は涙をこぼしながら、格子を叩いた。

「お母さん、今助けるから!!」

「千影! 何とかして開けられない!?」

「待って、鍵を探すわ!」

 千影はすぐに部屋の中を探し始める。

 だが——

——カツン。

 その瞬間、静寂を破る音が響く。

 千影が振り向くと、部屋の入り口に黒いフードを被った男が立っていた。

「……やはり来たか」

「……っ!!」

 柚葉がすぐにナイフを構える。

「またお前か!!」

「"先生"……!」

 千影が冷静に男を見据える。

「何が目的なの?」

「君たちが"真実"を知ること。それが、私の望みだ」

 "先生"は静かに微笑んだ。

「……君たちがここにたどり着いた時点で、もう計画は終わりなのさ」

「……どういうこと?」

「ここにあるデータを見れば、すべてが分かる」

 男はモニターの横に置かれたUSBメモリを指差した。

「君たちの好きにすればいい。ただし——」

 男はゆっくりと銃を構える。

「ここから生きて出られる保証は、ないがね」

「っ!!」

 千影は美咲の方をちらりと見る。

「……美咲ちゃん、お母さんを守って」

「千影……!」

 柚葉が息を呑む。

「……戦うつもり?」

「ええ。"先生"の正体を暴くために」

 千影は静かに前へ進み、"先生"と対峙する。

「ここで決着をつけるわ」

——松風荘の地下室、最終決戦が幕を開ける。
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