自称25歳の女子高生

naomikoryo

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番外編 第7話『もう歌は歌いません!(たぶん)』 〜一度だけ、アイドルだった私たちへ〜

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映画『Re:Twins ~未来のとなりで~』の撮影は、すべて終了した。

ステージでの生パフォーマンスが「ラストシーン」となった本作。
あの歓声も拍手も、もう台本にはない“本物の奇跡”だった。

◆◇◆

その翌日、都内某所のビルの一室でささやかな打ち上げパーティーが開かれた。

参加者は、主演の紬と柚季をはじめ、監督、共演の若手女優たち、演出家、水嶋振付師、撮影スタッフ、そして――

「乾杯の音頭は、もちろんこの人。
香坂結の元マネージャーにして、地獄のボイストレーナー!」

司会者に呼ばれて、槙島圭一が照れくさそうに立ち上がる。

「……まぁ、今日は怒鳴らないから安心しろ。
正直、こんなに完成度の高いクランクアップになるとは思ってなかった。
……って言うと、偉そうだな」

笑いが起こる。

「でも本当に、あのラストシーン。
“結”が見てたら、泣くどころか拍手してると思う。
いや、泣きながら拍手か?」

客席をちらりと見て、紬と目が合った。

槙島はわずかに微笑んだ。

「小森。……よくやった。
お前は“演じた”んじゃない。“生きた”。
その違いが、あのステージにはあった」

「……ありがとうございます」

そう応えた紬の目に、にじむものがあった。

でももう、泣かない。
「香坂結」じゃない。“私”として褒められたんだから。

◆◇◆

打ち上げの最中、柚季がテラスに出ていた。

夜風に吹かれて、静かに空を見上げる。
と、不意に背後から足音がして――

「いたいた。逃げてたでしょ、あれ」

紬が缶ジュースを2本持って現れた。

「……“MCの人に歌手デビューおめでとう”って言われたあたりから、ちょっと消えたくなった」

「わかる。『もう歌は歌いません!』ってあんな大声で言ったのに、
みんな“じゃあ次は2ndシングル?”みたいなノリだったし……」

缶を開けて、トンとぶつけ合う。

「……でも、楽しかったよね。歌も、踊りも」

「うん。怖かったけど。泣きそうだったけど」

柚季がふっと笑う。

「でも、またやりたいとは思わない」

「わたしも。女優で生きるって決めたから。
でも、あの日のあのステージだけは、
“演じること”とは違う、何かがあった気がする」

「……演じてたのに、“自分の声”だったよね。不思議だけど」

「ね」

しばし沈黙。

ふたりは並んで夜景を見下ろしていた。

どこか遠くのビルに、微かに光るLEDの「LIVE」の文字が見える。

紬が口を開く。

「ねえ、柚季。これからさ、いろんな役を演じていくよね。
恋する役とか、怒る役とか、泣く役とか……」

「うん、きっとたくさん。
……どれも自分のままじゃできない役ばかり」

「それでも……今だけは思うの。
“自分の声”って、ちゃんとあるんだって」

「あるね。……怖かったけど、気づけてよかった」

ふたりは同時に缶を空にした。

◆◇◆

翌朝。
SNSでは映画のステージ映像が拡散され、
「Re:Twins」がトレンド入りしていた。

> 「リアルなのに映画、映画なのにリアル」
> 「あのステージ、また観たい!」
> 「柚季ちゃんの涙にやられた」
> 「二人の歌、絶対CD出して」

ファンからの反響に、紬と柚季のスマホが鳴りっぱなしになる。

そんな中、沙月が投稿したbotが静かに更新された。

【Re:Twinsラストbot】

観客「歌手デビューおめでとう!」
紬「もう歌は歌いません!!(即答)」
柚季「私たちは女優です」

→たぶんみんな忘れない。最高の拒否宣言。

この声は、きっともう歌われないかもしれない。
でも、一度でも“本物”になれたのなら、それでいい。

紬と柚季は、それぞれの舞台へとまた歩き出す。

もうアイドルじゃない。
でも、かつて一度だけ、
“アイドルだったふたり”の記憶は、心のどこかにずっと残っている。
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