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番外編 第11話 『オフって何だっけ?』 〜日常に戻るその前に〜
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夢野ファミリーランドからの脱出劇のあと。
柚季と紬は、スタッフカーの後部座席に押し込まれていた。
運転席には、二人のマネージャーになった・加納。
目の奥が笑っていない笑顔を浮かべている。
「なぁ……お前ら……」
「“オフの日くらい普通に過ごしたい”って言って、結果あれか?」
後部座席。
柚季:「……すみません」
紬:「想像より全然“普通”じゃなかったです……」
◆◇◆
回想:遊園地ダッシュの余韻
ふたりとも、マスクの中で荒い呼吸をしていた。
サングラスはずれて、帽子はどこかで飛んでいた。
観覧車前で声をかけられたときのことを思い出すたび、心臓が変な拍動を打つ。
「でも……あの子たち、すごく嬉しそうだったよね」
「うん。サインもらえなかったのに、
“本物に会えた!”って、はしゃいでた」
(……あれが、“推される”ってことか)
(“見られる”じゃなく、“想われる”ってこと)
◆◇◆
車内:マネージャー・加納の小言(愛)
「いいか? お前らが“普通の女子高生”でいられる時間は、
残念ながら、もうとっくに終わってんだよ」
「……わかってます」
柚季がうつむきながら、でもしっかりとした声で言った。
「でも、まだ“なりきれてない”んです。女優にも。プロにも」
「だから今日みたいに、どっちにもなれないまま……迷ってる感じで」
加納はミラー越しにふたりを見た。
「……お前らはそれでいい。まだ18だ」
「だけど、ファンはお前らの“一瞬”を全部見てる」
「今日みたいに逃げながら手振るだけでも、
そいつの一生の記憶になるんだよ」
紬がぽつりと呟いた。
「……そんな責任、重すぎる」
「だから俺がマネージャーしてんだろ」
柚季と紬、思わず顔を見合わせる。
(なんだかんだで……)
(ちょっとだけ、安心するんだよね)
◆◇◆
学校:翌朝の教室
沙月が教室に入ってくると、すでに紬と柚季が席についていた。
ふたりはそれぞれ、普通の制服姿。
紬は机に突っ伏し、柚季は無言でストレッチをしている。
「お疲れ。アイドル活動の翌日は筋肉痛だよね~♪」
沙月はニヤニヤしながら、スマホ片手に近づく。
「昨日の逃走劇bot、過去最高のRT数だったよ」
紬:「……なぜ知ってる」
柚季:「っていうか、あのbot、沙月でしょ?」
「え!?な、なんでそんなこと言うの!?証拠は!?証拠は!?」
「タイミングが完璧すぎて逆にバレてるんだよね……」
「くっ……!」
(沙月、痛恨の“実況者バレ”)
◆◇◆
その日の放課後:再び三人で
屋上。陽が傾いて、風が少し涼しい。
紬が空を見ながら、ぽつりと呟く。
「もう“オフ”ってなんだかわかんないや」
「うん。でも、“逃げる日”があってもいいと思う」
柚季も横で同じ空を見上げている。
沙月がふたりの背中を見ながら、
こっそりbotを更新した。
【今日のまとめ】
柚季「逃げながらも、ちゃんと笑ってた」
紬「25歳だったはずが、今日だけは18だった」
→大人でも子供でもない時間。
→そんな一瞬が、たぶんいちばん“今”なんだと思う。
◆◇◆
そして、botのラスト投稿
【本日のオフ劇:完】
対象:柚季&紬
状況:登校済。筋肉痛あり。心は元気。
次のロケ地:未定(でも未来は埋まってる)
#今日も彼女たちは
#“普通”じゃない“日常”を生きている
柚季と紬は、スタッフカーの後部座席に押し込まれていた。
運転席には、二人のマネージャーになった・加納。
目の奥が笑っていない笑顔を浮かべている。
「なぁ……お前ら……」
「“オフの日くらい普通に過ごしたい”って言って、結果あれか?」
後部座席。
柚季:「……すみません」
紬:「想像より全然“普通”じゃなかったです……」
◆◇◆
回想:遊園地ダッシュの余韻
ふたりとも、マスクの中で荒い呼吸をしていた。
サングラスはずれて、帽子はどこかで飛んでいた。
観覧車前で声をかけられたときのことを思い出すたび、心臓が変な拍動を打つ。
「でも……あの子たち、すごく嬉しそうだったよね」
「うん。サインもらえなかったのに、
“本物に会えた!”って、はしゃいでた」
(……あれが、“推される”ってことか)
(“見られる”じゃなく、“想われる”ってこと)
◆◇◆
車内:マネージャー・加納の小言(愛)
「いいか? お前らが“普通の女子高生”でいられる時間は、
残念ながら、もうとっくに終わってんだよ」
「……わかってます」
柚季がうつむきながら、でもしっかりとした声で言った。
「でも、まだ“なりきれてない”んです。女優にも。プロにも」
「だから今日みたいに、どっちにもなれないまま……迷ってる感じで」
加納はミラー越しにふたりを見た。
「……お前らはそれでいい。まだ18だ」
「だけど、ファンはお前らの“一瞬”を全部見てる」
「今日みたいに逃げながら手振るだけでも、
そいつの一生の記憶になるんだよ」
紬がぽつりと呟いた。
「……そんな責任、重すぎる」
「だから俺がマネージャーしてんだろ」
柚季と紬、思わず顔を見合わせる。
(なんだかんだで……)
(ちょっとだけ、安心するんだよね)
◆◇◆
学校:翌朝の教室
沙月が教室に入ってくると、すでに紬と柚季が席についていた。
ふたりはそれぞれ、普通の制服姿。
紬は机に突っ伏し、柚季は無言でストレッチをしている。
「お疲れ。アイドル活動の翌日は筋肉痛だよね~♪」
沙月はニヤニヤしながら、スマホ片手に近づく。
「昨日の逃走劇bot、過去最高のRT数だったよ」
紬:「……なぜ知ってる」
柚季:「っていうか、あのbot、沙月でしょ?」
「え!?な、なんでそんなこと言うの!?証拠は!?証拠は!?」
「タイミングが完璧すぎて逆にバレてるんだよね……」
「くっ……!」
(沙月、痛恨の“実況者バレ”)
◆◇◆
その日の放課後:再び三人で
屋上。陽が傾いて、風が少し涼しい。
紬が空を見ながら、ぽつりと呟く。
「もう“オフ”ってなんだかわかんないや」
「うん。でも、“逃げる日”があってもいいと思う」
柚季も横で同じ空を見上げている。
沙月がふたりの背中を見ながら、
こっそりbotを更新した。
【今日のまとめ】
柚季「逃げながらも、ちゃんと笑ってた」
紬「25歳だったはずが、今日だけは18だった」
→大人でも子供でもない時間。
→そんな一瞬が、たぶんいちばん“今”なんだと思う。
◆◇◆
そして、botのラスト投稿
【本日のオフ劇:完】
対象:柚季&紬
状況:登校済。筋肉痛あり。心は元気。
次のロケ地:未定(でも未来は埋まってる)
#今日も彼女たちは
#“普通”じゃない“日常”を生きている
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