怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

文字の大きさ
88 / 147

88)黄泉比良坂の影(島根県)

しおりを挟む
1. 黄泉の入口
 島根県には、**「決して踏み入れてはいけない場所」**があるという。

 それは、黄泉比良坂(よもつひらさか)。

 神話では、ここが**「黄泉の国」**への入口とされている。

 「この坂を夜に登ってはいけない」
 「戻るとき、決して振り向いてはいけない」

 これは、ある男が実際に体験した話である。

2. 黄泉比良坂へ
 Tさん(30代・男性)は、オカルト好きのYouTuberだった。

 「黄泉比良坂で心霊検証をしてみたら面白いんじゃないか?」

 Tさんはカメラを持ち、深夜1時に現地へ向かった。

 同行者は、カメラマンのS。

 二人は、薄暗い道を歩きながら撮影を始めた。

 しかし、進むにつれ、Sが不安げに言った。

 「なあ……なんか空気が変じゃないか?」

 Tさんは気にせず、どんどん奥へ進んでいった。

3. 坂の奥の声
 坂を登り始めると、周囲は異様な静けさに包まれていた。

 すると——

 「……こっちへおいで……」

 どこからか、低い女の声が聞こえた。

 Sが驚いた顔で言った。

 「今の、聞いたか?」

 Tさんは笑いながら答えた。

 「誰かのイタズラじゃないの?」

 だが、次の瞬間——

 「カサ……カサ……」

 坂の上から、何かがこちらへ降りてきた。

4. 闇の中の影
 二人は、懐中電灯を照らした。

 光の先に映ったのは——

 黒い影の女だった。

 髪は長く、ぼろぼろの着物をまとい——
 その顔には、目も口もなかった。

 「……!!」

 Sは叫び、逃げ出した。

 Tさんも、必死に後を追った。

 しかし、その時——

 「戻るとき、決して振り向いてはいけない」

 Tさんの脳裏に、事前に調べた言い伝えがよぎった。

5. 禁忌を破った男
 「ザッ……ザッ……」

 背後から、裸足で地面を踏みしめる音が聞こえる。

 Tさんは、耐えられず——

 振り向いてしまった。

 その瞬間——

 「!!!」

 目の前には、黒い影の女が立っていた。

 女の顔には、無数の口が開いていた。

 「オマエモ……コッチニ……」

 Tさんは、意識を失った。

6. 消えたYouTuber
 翌朝——

 地元の住民が、倒れているTさんを発見した。

 しかし、Sの姿はどこにもなかった。

 Tさんは、意識を取り戻すと震えながら言った。

 「あの女に、Sが連れていかれた……」

 警察が捜索したが、Sは見つからなかった。

 ただ、坂の途中に——

 Sのカメラだけが落ちていた。

7. カメラに残された映像
 警察は、Sのカメラを確認した。

 そこには、TさんとSが黄泉比良坂を登る映像が残っていた。

 しかし、最後の数秒——

 映像は異常なノイズに包まれた。

 そして、画面には——

 真っ黒な女の影が、Sの背後に立っていた。

 そして、Sが突然消え——

 画面いっぱいに、血のような文字が浮かんでいた。

 「ヨミノクニ」

8. 戻れない者
 Tさんは、それ以来精神的に不安定になった。

 そして、ある日——

 Tさんは、自宅で突然姿を消した。

 部屋には、彼のスマホだけが残されていた。

 スマホの画面には——

 **「こっちにおいで」**と書かれていた。

***********************************

 もし、あなたが島根県の黄泉比良坂を訪れることがあれば——

 決して、夜に登ってはいけない。

 そして、もし——

 背後から囁く声が聞こえたら。

 その瞬間、あなたはもう——

 戻れなくなっているのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

少し怖いホラー短編集(文字数500以下)

仙 岳美
ホラー
文字数500以下のショート集です、難しく無いので気楽にどうぞ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

処理中です...