怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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97)樹海の呼び声(山梨県)

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1. 青木ヶ原樹海の噂
 山梨県には、日本屈指の心霊スポットがある。

 青木ヶ原樹海(あおきがはらじゅかい)。

 この森には、古くから恐ろしい噂がある。

 「樹海の奥へ入ると、必ず道に迷う」
 「携帯の電波が消え、コンパスも狂う」
 「夜になると、“誰かの声”が聞こえてくる」

 これは、ある若者が実際に体験した話である。

2. 樹海の探検
 Kさん(20代・男性)は、オカルト好きな友人たちと共に、青木ヶ原樹海へ向かった。

 メンバーは、Kさん、S、T、そしてRの4人。

 彼らはネットで噂を聞き、「心霊スポット巡り」のノリで森に入ることにした。

 しかし、地元の老人に声をかけられた。

 「お前たち、やめとけ……」

 Kさんたちは笑って答えた。

 「迷わないように、ちゃんとロープを張って進みますから!」

 だが、老人は首を振った。

 「ロープなんか、意味がない……」

3. 奇妙な痕跡
 午後3時、4人は樹海へ入った。

 森の中は静かで、風の音すらほとんどしない。

 「なんだ、思ったより普通の森じゃん」

 Sが笑った。

 しかし、しばらく進むと、妙なものを見つけた。

 木の枝に、ボロボロのロープがぶら下がっていたのだ。

 Kさんは、不気味な気持ちになった。

 「……誰かが使ったやつか?」

 Tが冗談半分にロープを触ろうとした。

 その瞬間——

 「……やめろ……」

 どこからか、低い声が聞こえた。

4. 迷いの森
 「誰だ!?」

 Rが懐中電灯を向けたが、誰もいない。

 「おい、誰かのいたずらじゃないのか?」

 しかし、その後、彼らは異変に気づいた。

 張っていたはずのロープが、消えていたのだ。

 「え……? これ、戻れなくね?」

 Tが焦り始めた。

 コンパスを見ると、針がグルグル回っている。

 スマホのGPSも使えない。

 そして——

 遠くで、足音が聞こえた。

5. 樹海の中の影
 「誰かいるのか!?」

 Kさんたちは、足音の方を見た。

 木々の間に、黒い影が立っていた。

 ぼろぼろの服を着た男。

 髪は乱れ、顔は見えない。

 だが、じっとこちらを見ているようだった。

 「ヤバい、逃げるぞ!!」

 4人は、一斉に駆け出した。

6. 何度も現れる男
 走っても走っても、道が分からない。

 しかし、異常なのは——

 さっきの男が、前にもいるのだ。

 「おかしい……! こっちにはいなかったはずだろ!」

 Kさんたちは、絶望的な気持ちになった。

 そして、男が、ゆっくりとこちらへ手を伸ばした。

 「……帰れないぞ……」

7. 消えたR
 「こっちだ!!」

 Kさんは、咄嗟に方向を変えた。

 しかし、振り返ると——

 Rの姿がなかった。

 「おい、どこ行った!?」

 SとTも、必死にRを探した。

 だが、彼の姿はどこにもなかった。

 森の奥から、微かに声が聞こえた。

 「……たすけて……」

8. 夜の囁き
 Kさんたちは、Rを探し続けたが、日が暮れてしまった。

 「やばい、夜になるぞ……」

 その時——

 「たすけて……」

 Rの声が、すぐ近くで聞こえた。

 「おい! どこにいるんだ!」

 Kさんが叫んだ。

 しかし——

 SとTの顔が、青ざめた。

 「おい……おかしいぞ……」

 「……なんで、全方向から聞こえるんだ?」

 「たすけて……たすけて……たすけて……」

 Rの声が、四方八方から響いた。

9. 脱出
 3人は、気が狂いそうになりながら、無我夢中で走った。

 すると——

 急に視界が開け、道路に出た。

 「……戻れた!?」

 振り返ると、森は静まり返っていた。

 だが——

 Rはいなかった。

 警察に捜索を頼んだが、Rは行方不明のままだった。

10. スマホの録音
 後日、Kさんは、Rのスマホを発見した。

 中には、最後の録音データが残っていた。

 再生すると——

 Rの声が、息を荒げながら叫んでいた。

 「おい! どこだ!? どこにいるんだ!!」

 そして——

 「こっちに来い……」

 低い声が、録音されていた。

 Rが叫ぶ。

 「お前、誰だ!!」

 しかし、最後に録音されていたのは——

 「俺は……お前だ……」

 そして、データはそこで途切れていた。

***********************************

 もし、あなたが山梨県・青木ヶ原樹海に入ることがあれば——

 決して、道を外れてはいけない。

 そして、もし——

 森の中で「助けて」という声を聞いたら。

 その瞬間、あなたの背後には——

 自分とそっくりな何かが立っているのだから。
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