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第55話:ターゲットは“誰”だったのか?(3/5)
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~疑いの目が刺さるとき、言葉は刃になる~
翌朝。青葉高校の校門前。
まだ始業チャイムが鳴る前にもかかわらず、早紀と美穂は待ち構えていた。
その視線の先――
小柄でおとなしそうな一年生の女の子が、ゆっくりと正門をくぐってくる。
加賀見 るな。
スカートは規定通り、髪は肩で切り揃えられ、スマホを抱えるように持っている。
うつむきがちで、誰とも目を合わせようとしない。
美穂「……来た」
早紀「見た目からして、完全に“疑われて傷ついた人”の顔よね」
二人が近づくと、るなはぴくりと肩をすくめる。
「加賀見るなさんだよね? …ちょっとだけ話、いいかな?」
早紀の柔らかな声に、彼女は小さく頷いた。
■中庭の木陰:本音と沈黙
早紀と美穂は、るなを人目の少ない中庭に連れていき、ベンチに腰を下ろす。
「……わたし、やってません」
るながぽつりと口を開く。
二人は、返事を急がずに耳を傾けた。
「ただ、花がきれいで……スマホで写真を撮ってただけなんです。
でも、後ろに誰かいたみたいで……それが“盗撮”だって、言われて……」
美穂「それ、誰かが勝手に“そう見えた”って言っただけでしょ。
るなちゃん、ちゃんと否定した?」
「……こわかった。誰に言えばいいか分からなくて。
私、クラスでもあんまり話す子いないし、
先生に言ったら“また問題を起こした”って思われそうで……」
早紀が言う。
「そっか。言葉にできない間に、“噂”が先に走っちゃったんだね」
「……でも、本当に撮ってないんです。誓って」
早紀は穏やかに微笑む。
「うん、信じるよ。だって、今のるなちゃんの目、ウソつける子の目じゃないもん」
■放課後:生徒会、篠原を呼び出す
夕方、生徒会室。
“例の”生徒――篠原 友翔が呼び出された。
ヘラっとした笑顔。
髪は染めていないが、ピアス穴だけはある。
見た目は普通の男子生徒。いや、“少しチャラい普通”だ。
マコトは、椅子にどっかりと座って言った。
「おう、篠原くん。君が投稿した“夜の職員室”アカウントのことなんだけど――
まず“面白半分”で人を疑ったこと、反省してくれるかな?」
篠原は笑って答える。
「え、いや……俺、別に“盗撮された”とか断定してないっすよ?
“ウワサあるらしい”って、そう書いただけだし。冗談だって、みんなわかるし」
バンッ!!
マコトが机を叩いた。
「冗談で済むかよ!!!」
篠原「……は?」
「その“冗談”のせいで、学校来づらくなってる子がいるんだよ。
周りからヒソヒソされて、勝手に疑われて――
スマホ持ってるだけで“犯罪者”扱いされてる子がいるんだよ!」
「自分がされてみろよ。たとえば、廊下でちょっとズボン直してただけで
“盗撮目的だ”って言われたら、どうするよ?!」
「……そんなこと、俺はしてないし」
「そうだよな。るなちゃんもしてないんだよ!!!」
篠原はぐっと言葉を詰まらせる。
マコトは、静かに語気を落とす。
「俺ね、ずっと考えてたんだ。“名探偵って何すればいいの?”って。
事件の真相を暴く? 犯人を見つける? でも、それだけじゃ足りないって思った。
“誰かの人生が傷つけられる前に、それを止める”こと。
それも俺の仕事だと思うんだ」
「るなちゃんは、君の“冗談”で、ひとつの春を嫌いになりかけてたんだ。
それでもまだ、誰も責めずに黙ってたんだぞ。
……君が、ちゃんと謝らないなら――俺が怒るの、当たり前だよな」
長い沈黙のあと――
篠原は、ぽつりと呟いた。
「……わかった。明日、本人に謝る。ちゃんと、俺の口で」
マコト「……うん。それが、君の“正しさ”になるなら、それでいい」
◆つづく◆
翌朝。青葉高校の校門前。
まだ始業チャイムが鳴る前にもかかわらず、早紀と美穂は待ち構えていた。
その視線の先――
小柄でおとなしそうな一年生の女の子が、ゆっくりと正門をくぐってくる。
加賀見 るな。
スカートは規定通り、髪は肩で切り揃えられ、スマホを抱えるように持っている。
うつむきがちで、誰とも目を合わせようとしない。
美穂「……来た」
早紀「見た目からして、完全に“疑われて傷ついた人”の顔よね」
二人が近づくと、るなはぴくりと肩をすくめる。
「加賀見るなさんだよね? …ちょっとだけ話、いいかな?」
早紀の柔らかな声に、彼女は小さく頷いた。
■中庭の木陰:本音と沈黙
早紀と美穂は、るなを人目の少ない中庭に連れていき、ベンチに腰を下ろす。
「……わたし、やってません」
るながぽつりと口を開く。
二人は、返事を急がずに耳を傾けた。
「ただ、花がきれいで……スマホで写真を撮ってただけなんです。
でも、後ろに誰かいたみたいで……それが“盗撮”だって、言われて……」
美穂「それ、誰かが勝手に“そう見えた”って言っただけでしょ。
るなちゃん、ちゃんと否定した?」
「……こわかった。誰に言えばいいか分からなくて。
私、クラスでもあんまり話す子いないし、
先生に言ったら“また問題を起こした”って思われそうで……」
早紀が言う。
「そっか。言葉にできない間に、“噂”が先に走っちゃったんだね」
「……でも、本当に撮ってないんです。誓って」
早紀は穏やかに微笑む。
「うん、信じるよ。だって、今のるなちゃんの目、ウソつける子の目じゃないもん」
■放課後:生徒会、篠原を呼び出す
夕方、生徒会室。
“例の”生徒――篠原 友翔が呼び出された。
ヘラっとした笑顔。
髪は染めていないが、ピアス穴だけはある。
見た目は普通の男子生徒。いや、“少しチャラい普通”だ。
マコトは、椅子にどっかりと座って言った。
「おう、篠原くん。君が投稿した“夜の職員室”アカウントのことなんだけど――
まず“面白半分”で人を疑ったこと、反省してくれるかな?」
篠原は笑って答える。
「え、いや……俺、別に“盗撮された”とか断定してないっすよ?
“ウワサあるらしい”って、そう書いただけだし。冗談だって、みんなわかるし」
バンッ!!
マコトが机を叩いた。
「冗談で済むかよ!!!」
篠原「……は?」
「その“冗談”のせいで、学校来づらくなってる子がいるんだよ。
周りからヒソヒソされて、勝手に疑われて――
スマホ持ってるだけで“犯罪者”扱いされてる子がいるんだよ!」
「自分がされてみろよ。たとえば、廊下でちょっとズボン直してただけで
“盗撮目的だ”って言われたら、どうするよ?!」
「……そんなこと、俺はしてないし」
「そうだよな。るなちゃんもしてないんだよ!!!」
篠原はぐっと言葉を詰まらせる。
マコトは、静かに語気を落とす。
「俺ね、ずっと考えてたんだ。“名探偵って何すればいいの?”って。
事件の真相を暴く? 犯人を見つける? でも、それだけじゃ足りないって思った。
“誰かの人生が傷つけられる前に、それを止める”こと。
それも俺の仕事だと思うんだ」
「るなちゃんは、君の“冗談”で、ひとつの春を嫌いになりかけてたんだ。
それでもまだ、誰も責めずに黙ってたんだぞ。
……君が、ちゃんと謝らないなら――俺が怒るの、当たり前だよな」
長い沈黙のあと――
篠原は、ぽつりと呟いた。
「……わかった。明日、本人に謝る。ちゃんと、俺の口で」
マコト「……うん。それが、君の“正しさ”になるなら、それでいい」
◆つづく◆
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