名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

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第58話:ラブレター、来ちゃった

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12月に入ると、学校の空気がにわかに騒がしくなる。
期末テストが終わった安堵もつかの間、生徒たちは口々に言い始めるのだ。

「今年のクリスマス、誰と過ごす~?」
「付き合うなら今がラストチャンスだよ!」
「告白するならイブ前が吉って、占い師の動画で言ってた!」

そうして校内は、浮ついた“告白ブーム”に突入していた。

 

マコトがその雰囲気に苦笑いしていたちょうどその頃、
早紀はひとり、教室で異変に気づいていた。

登校後、自分の席についた早紀が、机の中から何かをそっと取り出す。
――薄いピンク色の封筒。ほんのりと甘い香りがする気がした。

彼女は一瞬だけ目を細めると、中身を確認し、静かに頷いた。

「……ふーん。ラブレター、ね」

そのまま封筒をノートの下に隠そうとしたとき、
真横からずいっと顔を覗き込んできたのが――美穂である。

 

「ちょちょちょ! 今の、何!? 隠したよね!? 早紀、それ隠したよね!? ピンクだったよね!?!?」

「はぁ……見てたならもう仕方ないけど、誰にも言わないでよ?」

「いやちょっと待って? ラブレター!? これ!? ガチ!? 誰から!? どんな内容!? 読んでいい!?」

「落ち着いて、美穂」

早紀は、ノートの下にしまった封筒をそのままに、小声で言った。

「他クラスの男子。……内容は、わりと誠実だった。けど、返事は断るつもり」

「えー!? もったいないー! 早紀ならどんな相手でも釣り合うのに~」

「そういう問題じゃないの」

「……でも、すごいなぁ。ついに来たか~、“副会長に告白される時代”が!」

 

その日の放課後。生徒会室では静かな作業の時間が流れていた。

マコトは窓際で書類を整理し、蓮は湯気を立てる紅茶を手に、虎太郎はプリンターと格闘中。
詩織はいつものようにノートPCとにらめっこしていたが、不意に顔を上げると、ぽつりとつぶやいた。

 

「そういえば、早紀先輩。ラブレター貰ったんですか~?」

 

その瞬間、空気が止まった。

「……は?」

誰よりも先に、早紀の声が低く響いた。

「……詩織、それ誰に聞いたの?」

「え? 美穂先輩ですけど」

「美穂!!」

「ギャアアアアア!! ごごごごめん! 口止めするの忘れてたああ!!」

生徒会室が一気に騒がしくなる中、マコトは硬直していた。

彼の頭の中で、「ラブレター」「早紀」「告白」「相手は誰だ」「いつのまに」「知らなかった」「なにそれ」……そんな言葉がグルグル回り、
冷静を装おうとした結果、口から出たのは――

 

「へ、へぇ~……」という中途半端な吐息だった。

 

周囲が彼を見た。詩織が言う。「会長、いいんですか?」

蓮もちらりと目を向けてくる。「……意外に落ち着いてるな」

虎太郎は両拳を握りしめて言った。「兄貴!今が男を見せるときッスよ!」

美穂まで口を押さえて、マコトの顔をうかがっている。

マコトはつい――つい、言ってしまった。

「も、物好きもいたんだな……」

 

空気が、凍る。

早紀は数秒沈黙したあと、無言で立ち上がった。
椅子の脚が床を引きずる音だけが、やけに大きく響く。

「……帰る」

「えっ、ちょっ、待って早紀!違うんだって、今のは――!」

バタンッ!

ドアが閉まり、その姿は見えなくなった。

 

「……やっべぇ」

マコトは頭を抱えた。
誰よりも冷静に見せようとしたのに、誰よりも感情的な言葉を吐いてしまった。

「俺、何言ってんだよ……」

その日の夜、布団の中。
マコトは枕をぎゅっと抱えながら叫ぶ。

「バカバカバカバカバカァァァァァァ!!」

翌日――早紀は学校を休んだ。

 

恋愛ブームのただ中で、ひとつだけ、
“最も重要な恋の謎”が、拗れてしまった。
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