名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

文字の大きさ
70 / 79

第69話:君とのスタンプ、未来まで

しおりを挟む
噴水広場に、再び人が集まっていた。
週末イベントの名残と、ひとつの「小さな事件の結末」を見届けるために。

スタンプラリー、ラスト地点。
そこに戻されたのは──無傷とは言えないが、確かに“帰ってきた”スタンプ台だった。

 

「……お、お騒がせしました……」

広場の真ん中で、野中涼太は小さな声で頭を下げた。
手には、ガムテープで補修されたスタンプ台。

「勝手に持っていって……ほんとに、ごめんなさいっ……!」

周囲の大人たちがざわめき立つ中、一人のおばあちゃんがゆっくりと前へ。

「……戻してくれたんだね。それだけで、十分えらいよ」

「あっ、え……」

「でもねぇ、坊や。好きって気持ちはねぇ、胸の中だけにしまっといても、誰にも届かんのよ」

その言葉に、涼太はぶわっと目を赤くした。

「そ、そうだよなぁぁああああ!!」
──って、なぜかそこで虎太郎(生徒会補佐/高1)が号泣突入してきた。

「兄貴ィィィ! なんすかこのエモ展開ぃぃぃ!」

「……お前、いつ来た?」

「兄貴の事件の匂いを嗅ぎつけてぇぇぇ……っ!!(←泣いてて聞き取れない)」

 

続いて美穂と日向、詩織、蓮までも商店街に登場。
なぜか紅茶片手の蓮が「最後はこの香りで締めると決まっている」とか言い出す。

詩織は涼太に冷静にスマホで謝罪文のテンプレを見せている。

日向はスタンプカードに謎のイラストを描いて渡している(※猫とまんじゅうの合体生物)。

美穂は、「あーもう、この空気いいなぁ~~!」と感動の自撮り中。

 

──その様子を、マコトと早紀は少し離れたところから見つめていた。

「……戻ってよかったな、スタンプ台」

「うん。涼太くん、頑張ったよ」

「なんか……昔のお前とちょっと重なるな」

「それはそっちでしょ」

 

マコトは照れ笑いしながら、そっと早紀の手を取った。

「最後のスタンプ……まだ押してねぇよな」

「……そうね」

彼は自分のスマホを取り出し、画面上に描いた“デジタルハートスタンプ”を見せる。

「これで俺たちのカードにも、ラストスタンプ。──完了だな」

「ふふ。電子で済ませるところがマコトらしい」

「えっ、俺のロマン全否定?」

「ううん、好きって意味よ」

マコトが顔を真っ赤にする。

 

そこへ、運営のおばちゃんが記念品を手に近づいてくる。

「ほい、お疲れさまー! 二人とも、見事完走!」

渡されたのは──

金ピカの“スーパーラブペア賞”缶バッジ(ハート型)

「……これ、付けるのか?」

「付けなさいよ。“彼女ポイント”上げるチャンスでしょ」

「くっ……! ランクアップ、避けられねぇのか!」

 

その日の夕暮れ、
商店街のアーチには、まだ小さくイルミネーションが残っていた。

マコトと早紀は並んで歩く。

「ねえマコト。今回の事件、どうだった?」

「んー……推理的には地味だったけど」

「けど?」

「……あったかかった、かな」

早紀は静かに笑う。

「じゃあ、またあったかい事件、一緒に解決していこうね」

「……ああ。“名探偵と助手”じゃなくて、今度は“彼氏と彼女”としてな」

 

 

──こうして、“恋と謎”のスタンプラリー事件は幕を閉じた。

けれど2人のラブコメライフは、まだまだ終わらない。

次の事件も、次のデートも、次のすれ違いも──全部セットで、ふたりの未来。

 

そして噴水広場の隅で、今もなお虎太郎は泣き続けていた。

「兄貴ィィィ~~!! 恋って、最高ッスねぇぇぇ~~~!!」

「……そろそろ家帰れ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話

そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん! 好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。 ほのぼのラブコメというか日常系小説 オチなどはなく、ただひたすらにまったりします 挿絵や文章にもAIを使用しております。 苦手な方はご注意ください。

不思議なショートストーリーたち

フジーニー
ミステリー
さくっと読める短編集 電車内の暇つぶしに、寝る前のお供に、毎日の楽しみに。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...