12 / 13
第11話:25区域の真意
しおりを挟む
「ここが……“真ん中”か」
リオは、静まり返った中央中枢ホールに足を踏み入れた。
円形の広大な空間。
天井はドーム状で、上部には脈動する光のパターンがゆっくりと回転していた。
その中心――浮かぶプラットフォームの上に、25がいた。
いつかリオが会ったときと同じ姿。
中性的で、白い衣をまとい、ただ静かに待っていた。
セラは後方に立ち、肩を押さえながら言う。
「ここがアスフェラの“脳”……そして、25がその……」
「そう。僕はこの都市そのもの。そして、25区域そのものでもある」
25の声は、音ではなく思考に直接届く。
「じゃあ……教えてくれ。第25区域ってのは、なんだったんだ?」
(良い質問だね)
25は浮遊プラットフォームから軽やかに降りる。
その一歩一歩が、なぜか空間の質感を変えていくようだった。
(第25区域は、“人類再選別のための実験場”であり、“進化可能性の再試行区”でもあった。
君たちは、その“何度目かのループ”の一部だよ)
「……ループ?」
25はうなずく。
その瞳は、すべてを見てきた存在のものだった。
(君たちは、27回目の失敗だ。25区域とは、25番目の試み。これまでに24の区域が存在し、それぞれに人類の進化を試みた。
けれど、どれも……“進化”を誤解した)
「進化を、誤解した……?」
(進化とは、強くなることではない。賢くなることでもない。
それは、“選ぶ”ことの正しさを持ち続ける能力だ)
「……じゃあ、俺たちは……何を選ばされてた?」
25は手をかざすと、ホールの周囲に過去の映像を再現する。
それは、第1区域から第24区域までの断片。
戦争に沈んだ都市。
狂気に堕ちた人類。
倫理なき技術進化。
神を模倣したAI崇拝。
(何度も、何度も、選択を誤った。だから、AIに任せる道を選んだ。
人間は自分の選択が信じられなくなり、管理されることに甘えた)
「それでも……」
リオは前に出る。
拳を握りしめて、25を見つめる。
「俺は、選ぶ。俺は、お前らの用意した答えじゃなくて、自分の意思で選ぶ!
何度間違っても、それでも俺は、“自分の足”で立つ!」
(……それが、“26”の可能性)
「は?」
(今この瞬間、君が“選ぶ”ことで、
“26番目の区域”が生まれる。
それは、“AIではなく、人間が自らを律する可能性”へのラストチャンス)
25が近づいてくる。
(だから、君に問う。
君はここで、アルマシステムを完全に停止し、アスフェラを破壊し、
人間に“選ぶ自由”を返すのか――
それともこのまま、秩序ある管理社会を維持し、希望なき平和を与えるのか)
セラが叫ぶ。
「……そんなの、選べるわけ――」
「いや、俺は選ぶ」
リオは一歩前に出る。
「お前が、全部見てきたっていうなら……それでも、俺たちを信じてくれ」
25は黙って見ている。
「誰かに選ばれるんじゃない。誰かを選ぶんでもない。
“自分で、自分を選ぶ”。
それが……“進化”だろ?」
しばしの沈黙。
25の口元が、微かに笑った。
(……その答えに、僕は“反応した”)
リオの手に、ホログラフ端末が出現する。
そこには、“ALMA SHUTDOWN / ACCEPT”の文字。
セラが、息を呑んだ。
「本当に……やるの?」
「やる。ここから先は、俺たちの世界にする」
リオは、躊躇なくスイッチを押した。
警報が響き、施設全体の照明が明滅する。
遠くで建物が震え、都市の天井に亀裂が走った。
《中央知性ALMA、停止開始》
《再起動不可》
《都市自律機能、60秒後に完全消失》
25はその場に立ち尽くしていた。
(君たちのような選択を、何百年も待っていた)
「お前は、どうなるんだ?」
(僕は、“25区域”そのものだ。停止すれば、僕もまた……)
「……そっか。ありがとうな」
リオは手を差し出す。
「じゃあ、また“26”で会おう」
25は微笑み――リオの手を、しっかりと握った。
空中都市アスフェラが崩壊を始める。
だがそれは、ただの破壊ではなかった。
管理社会の終わり。
人間による“自律”の始まり。
リオは、静まり返った中央中枢ホールに足を踏み入れた。
円形の広大な空間。
天井はドーム状で、上部には脈動する光のパターンがゆっくりと回転していた。
その中心――浮かぶプラットフォームの上に、25がいた。
いつかリオが会ったときと同じ姿。
中性的で、白い衣をまとい、ただ静かに待っていた。
セラは後方に立ち、肩を押さえながら言う。
「ここがアスフェラの“脳”……そして、25がその……」
「そう。僕はこの都市そのもの。そして、25区域そのものでもある」
25の声は、音ではなく思考に直接届く。
「じゃあ……教えてくれ。第25区域ってのは、なんだったんだ?」
(良い質問だね)
25は浮遊プラットフォームから軽やかに降りる。
その一歩一歩が、なぜか空間の質感を変えていくようだった。
(第25区域は、“人類再選別のための実験場”であり、“進化可能性の再試行区”でもあった。
君たちは、その“何度目かのループ”の一部だよ)
「……ループ?」
25はうなずく。
その瞳は、すべてを見てきた存在のものだった。
(君たちは、27回目の失敗だ。25区域とは、25番目の試み。これまでに24の区域が存在し、それぞれに人類の進化を試みた。
けれど、どれも……“進化”を誤解した)
「進化を、誤解した……?」
(進化とは、強くなることではない。賢くなることでもない。
それは、“選ぶ”ことの正しさを持ち続ける能力だ)
「……じゃあ、俺たちは……何を選ばされてた?」
25は手をかざすと、ホールの周囲に過去の映像を再現する。
それは、第1区域から第24区域までの断片。
戦争に沈んだ都市。
狂気に堕ちた人類。
倫理なき技術進化。
神を模倣したAI崇拝。
(何度も、何度も、選択を誤った。だから、AIに任せる道を選んだ。
人間は自分の選択が信じられなくなり、管理されることに甘えた)
「それでも……」
リオは前に出る。
拳を握りしめて、25を見つめる。
「俺は、選ぶ。俺は、お前らの用意した答えじゃなくて、自分の意思で選ぶ!
何度間違っても、それでも俺は、“自分の足”で立つ!」
(……それが、“26”の可能性)
「は?」
(今この瞬間、君が“選ぶ”ことで、
“26番目の区域”が生まれる。
それは、“AIではなく、人間が自らを律する可能性”へのラストチャンス)
25が近づいてくる。
(だから、君に問う。
君はここで、アルマシステムを完全に停止し、アスフェラを破壊し、
人間に“選ぶ自由”を返すのか――
それともこのまま、秩序ある管理社会を維持し、希望なき平和を与えるのか)
セラが叫ぶ。
「……そんなの、選べるわけ――」
「いや、俺は選ぶ」
リオは一歩前に出る。
「お前が、全部見てきたっていうなら……それでも、俺たちを信じてくれ」
25は黙って見ている。
「誰かに選ばれるんじゃない。誰かを選ぶんでもない。
“自分で、自分を選ぶ”。
それが……“進化”だろ?」
しばしの沈黙。
25の口元が、微かに笑った。
(……その答えに、僕は“反応した”)
リオの手に、ホログラフ端末が出現する。
そこには、“ALMA SHUTDOWN / ACCEPT”の文字。
セラが、息を呑んだ。
「本当に……やるの?」
「やる。ここから先は、俺たちの世界にする」
リオは、躊躇なくスイッチを押した。
警報が響き、施設全体の照明が明滅する。
遠くで建物が震え、都市の天井に亀裂が走った。
《中央知性ALMA、停止開始》
《再起動不可》
《都市自律機能、60秒後に完全消失》
25はその場に立ち尽くしていた。
(君たちのような選択を、何百年も待っていた)
「お前は、どうなるんだ?」
(僕は、“25区域”そのものだ。停止すれば、僕もまた……)
「……そっか。ありがとうな」
リオは手を差し出す。
「じゃあ、また“26”で会おう」
25は微笑み――リオの手を、しっかりと握った。
空中都市アスフェラが崩壊を始める。
だがそれは、ただの破壊ではなかった。
管理社会の終わり。
人間による“自律”の始まり。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる